[31]望郷
竹に貫かれたこの身体は
竹の驚くべき成長と
その力によって
地より足が離れ天へと吊られてゆく
風にゆらりとゆれたりして
案外風流かもしれん
俺が考えておったより
この身体七夕飾りに合うかもしれん
[32]望郷
千切れた葉枝に
夜半の激しさを知り
驚きながら
しみ一つない空を見上げる
熱ははつはつと降り
夕べの酒が背中を流れる
まぶしいまぶしいまぶしい
[33]望郷
BLUEにこんがらかった僕の足は
どこへも出掛けられそうに無いので
お留守番部隊として生きていきます
気狂いの観覧車はぐるぐるぐるぐる
あきもせず回っているので
僕もそれを眺めしばらくは大丈夫
泡ぶく吐きながらページをめくります
お土産の薄皮だけは忘れずに
[34]望郷
駱駝に乗せられ荷物のように
月の砂漠をまいります
静かな静かな道行きです
粛々と黙して何も語らず
長い長いキャラバンです
異人さんは月明かり
深い彫りに闇を塗り
遠くへ私を運びます
[35]望郷
ありがたき古里
今私は立つ
風のにほひ
雲の速さ
小動物が横切っている
さて私は
何を望めばいいのだ?
[36]望郷
私は今、山口の入り口に
ぼんやりと腰掛けております
古里の重さと
先祖の鮮度
あるいみ途方に暮れておるのです
私は今、山口の入り口に
ぼんやりと腰掛けております
[01]夢女
う たをおしえたひと
ま るでははおやのように
れ いれいしくあたえた
し かしことばはおしえてくれなかった
言 葉はふちからはいだし
ば くばくたるかなしみをみせる
こ こをよごし
え いごうことばをうみさまよう
[02]夢女
俺があの時死ななかったのは
お前がいたからか?
それともお前がいたから
俺は死ねなかったのか?
[03]夢女
異国の風の中
あなたは亜麻色のゆらめき
細く物悲しいうたを
口にしてる
土鳩の笛
乾いた町に行き過ぎる
[04]夢女
目を覚ませばあたりは暗く
横に誰もいないことに気付く
冷蔵庫からビールを出して
痛む喉を冷やす
明日はなさそうだ
そして雨がふっている