●氷河期のおわり:1万3000年前ころより、気候が温暖になりはじめ、氷河期が終わりました。豊かな言語をもち世界各地にひろがっていった人類は、水没する海岸線にかこまれ、世界各地に孤立し、変化していく環境に適応しなければなりませんでした。
●後氷期の世界:後氷期になると降水量も増え、低地には沖積世平野ができました。昆虫が飛び交い、花をつける草花は実を結ぶようになりなりました。このような新しい環境のなかで、人類は各地の自然を活用した新しい文化をつくりだしていくことになりました。
●農耕・牧畜のはじまり:沖積世の時代に入って、世界の各地で農耕・牧畜がはじまったことが、遺跡の発掘によってわかっています。各地の野生種のなかから、栽培しやすく、食用に適した植物を選び、長い時間をかけて品種改良がすすめられました。その結果、世界の各地でつぎのような農耕文化が生まれました。
西アジア | :肥沃な三日月地帯 | 麦・豆・羊・牛 |
東アジア | :森林地帯 | こめ・鶏 |
西アフリカ | :サハラ砂漠周辺 | キャサバ・雑穀 |
中央アメリカ | :メキシコのジャングル | トウモロコシ |
<南アメリカ | :アンデス山脈 | ジャガイモ |
●DIYの暮らし:海難事故などで無人島に漂着した場合、人はこの時代の生活の仕方にもどるしかありません。自然界から自分で材料をさがし、道具を自分でつくり、日々の食糧の調達におわれないないためには、食糧の生産も考えなければなりません。食器、住居などの生活に必要なものは自分でつくるしかありません。この時代の人びとはまさにこのような立場にたち、生活のさまざまな課題にとりくんでいきました。
●農耕以外の新石器文化:また、日本列島の縄文文化のように、自然環境に恵まれた地域では、狩猟・採集にもとずく新石器文化がそだちました。また、狩猟・採集や農耕の文化から自立した遊牧文化も生まれました。
●文明以前の人類は、自然環境から直接得られる食糧の量の範囲内で集団の規模を維持するしかありませんでした。自然の回復力以上に収穫すれば、死を意味します。
●また、自然環境の恵みの限界を超えて人口が増えることはできませんでした。低い技術水準にあった初期農村文化がささえることのできた集団もさほどの大きさを考えることはできません。
●氷河期がおわり、大陸と切り離された日本列島は、縄文文化の時代に入ります。
- 草創期:1万3000年〜9000年前
- 土器は底が丸いのが特徴。短期間に寒・暖があり、環境の変化が激しい時期でした。竪穴住居址、貝塚、骨製の釣り針、磨製石斧、女性像を刻んだ石などが出土しています。槍と弓矢などから狩猟、漁労の生活が想像できます。
- 早 期:9000年前〜6000年前
- 底が尖った土器が特徴。竪穴住居の集落。釣り針、ヤス、銛、貝塚。土偶、犬の埋葬、屈葬などの精神文化を示すものも出土しています。
- 前 期:6000年前〜5000年前
- 底が平たい土器が特徴。土器が増え、多様化しました。広場を囲む集落も見つかっています。縄文海進で、海水面が4〜5メートル上昇し、現在の内陸部に貝塚がつくられています。漆、環状列石や耳飾り・勾玉・管玉などの装身具が出土しています。
●この8000年の間に、人々の生活が急速に変化していったのが手に取るようにわかります。
●新石器文化を生みだした人びとは、自然を観察する能力、簡単な道具で完成度の高い作品を作りあげる技巧において、人類史上もっともすぐれていたと考えられます。
●そして、私たちの文明が崩壊したとき、私たちはこの新石器時代の人びととおなじ立場に立つことになります。
●その意味で、新石器文化は人類にとって<古典>の意味をもっていると考えられます。
●自然と人間の生活のバランスがかろうじてなりたっていた時代でした。文明が成立する直前の人類の姿です。