各地域、同時代並行の世界史
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【 A3 : 1万3000年 〜 前3500年 】
3.最強のサバイバーたち

 人類が世界中に散らばっていったころ、長く続いた氷河期がおわり、自然環境が急速に変化していきました。人類は世界の各地で環境に適応しながら、それぞれに独自の文化を形成していきました。

 現在でも、世界には狩猟・採集、遊牧、漁労、農耕、牧畜などの生活文化がありますが、これらの違いはどのようにしてできたのでしょう。

  1. 氷河期のおわり
  2. 新石器文化<
  3. 生活革命
  4. 初期社会の課題
  5. この頃の日本列島
  6. 人間学の視点
  7. チェックポイント

1.氷河期のおわり

●氷河期のおわり:1万3000年前ころより、気候が温暖になりはじめ、氷河期が終わりました。豊かな言語をもち世界各地にひろがっていった人類は、水没する海岸線にかこまれ、世界各地に孤立し、変化していく環境に適応しなければなりませんでした。

●後氷期の世界:後氷期になると降水量も増え、低地には沖積世平野ができました。昆虫が飛び交い、花をつける草花は実を結ぶようになりなりました。このような新しい環境のなかで、人類は各地の自然を活用した新しい文化をつくりだしていくことになりました。

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2.新石器文化

●農耕・牧畜のはじまり:沖積世の時代に入って、世界の各地で農耕・牧畜がはじまったことが、遺跡の発掘によってわかっています。各地の野生種のなかから、栽培しやすく、食用に適した植物を選び、長い時間をかけて品種改良がすすめられました。その結果、世界の各地でつぎのような農耕文化が生まれました。

西アジア:肥沃な三日月地帯 麦・豆・羊・牛
東アジア:森林地帯こめ・鶏
西アフリカ:サハラ砂漠周辺キャサバ・雑穀
中央アメリカ:メキシコのジャングル トウモロコシ
<南アメリカ:アンデス山脈 ジャガイモ

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3.生活革命

●DIYの暮らし:海難事故などで無人島に漂着した場合、人はこの時代の生活の仕方にもどるしかありません。自然界から自分で材料をさがし、道具を自分でつくり、日々の食糧の調達におわれないないためには、食糧の生産も考えなければなりません。食器、住居などの生活に必要なものは自分でつくるしかありません。この時代の人びとはまさにこのような立場にたち、生活のさまざまな課題にとりくんでいきました。

●農耕以外の新石器文化:また、日本列島の縄文文化のように、自然環境に恵まれた地域では、狩猟・採集にもとずく新石器文化がそだちました。また、狩猟・採集や農耕の文化から自立した遊牧文化も生まれました。

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4.初期社会の課題

文明以前の人類は、自然環境から直接得られる食糧の量の範囲内で集団の規模を維持するしかありませんでした。自然の回復力以上に収穫すれば、死を意味します。

●また、自然環境の恵みの限界を超えて人口が増えることはできませんでした。低い技術水準にあった初期農村文化がささえることのできた集団もさほどの大きさを考えることはできません。

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5.この頃の日本列島

氷河期がおわり、大陸と切り離された日本列島は、縄文文化の時代に入ります。

草創期:1万3000年〜9000年前
土器は底が丸いのが特徴。短期間に寒・暖があり、環境の変化が激しい時期でした。竪穴住居址、貝塚、骨製の釣り針、磨製石斧、女性像を刻んだ石などが出土しています。槍と弓矢などから狩猟、漁労の生活が想像できます。
早 期:9000年前〜6000年前
底が尖った土器が特徴。竪穴住居の集落。釣り針、ヤス、銛、貝塚。土偶、犬の埋葬、屈葬などの精神文化を示すものも出土しています。
前 期:6000年前〜5000年前
底が平たい土器が特徴。土器が増え、多様化しました。広場を囲む集落も見つかっています。縄文海進で、海水面が4〜5メートル上昇し、現在の内陸部に貝塚がつくられています。漆、環状列石や耳飾り・勾玉・管玉などの装身具が出土しています。

●この8000年の間に、人々の生活が急速に変化していったのが手に取るようにわかります。

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6.文明論の視点

●新石器文化を生みだした人びとは、自然を観察する能力、簡単な道具で完成度の高い作品を作りあげる技巧において、人類史上もっともすぐれていたと考えられます。

●そして、私たちの文明が崩壊したとき、私たちはこの新石器時代の人びととおなじ立場に立つことになります。

●その意味で、新石器文化は人類にとって<古典>の意味をもっていると考えられます。

●自然と人間の生活のバランスがかろうじてなりたっていた時代でした。文明が成立する直前の人類の姿です。

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7.チェックポイント

step1:約1万3000年頃より、人類は各地域に適応した地域文化をつくるようになったのはなぜですか。
hint1:気候が温暖になったことと、各地域に定住するようになったこととは関係がありますか。
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step2:栽培されるようになった作物に穀物が多いのはなぜですか。
hint2:穀物に共通する特色をあげてみてください。
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step3:この時代の人びとはなぜdo it yourselfの暮らし(なんでも自分でする生活)をしてたのでしょう。
hint3:do it yourselfの暮らし(なんでも自分でする生活)以外の生活とはどんな生活ですか。そのような生活はどのようにして可能になりますか。
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step4:初期社会はなぜ経済発展しなかったのでしょう。
hint4::経済発展する社会には何が必要ですか。
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point:縄文文化が示唆すること
かつて、歴史の授業では農耕と定住と土器の製作はセットで考えられていました。しかし、農耕を行っていなかった頃の縄文時代にも、立派な土器が作られていました。つまり、農耕をともなわなくても土器製作は行われるのです。
農耕は狩猟・採集・漁労や遊牧より発展した高度な文化だという思いこみが、縄文文化の正当な評価を妨げていました。日本列島のような豊かな資源環境に恵まれた土地では、狩猟・採集・漁労だけで十分生活していかれたのです。その豊かさが縄文文化という豊かな文化を生みました。
この時代に農耕を始めた地域では、狩猟・採集・漁労による従来の方法では生きていかれない何らかな事情があったに違いありません。理由がなければ、人は新しいことをしません。文化は保守的です。