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【 A2 : 5万年前〜1万年前 】
(2)世界の果てまで

5万年前、人類の文化が飛躍的に変化します。また、アフリカ脱出に成功した人類は世界中にひろがっていきました。このころの人類には何があったのでしょう。

  1. ネアンデルタール人の謎
  2. 「第二の遺伝子」としての「言語」
  3. 拡充する文化の質と量
  4. この頃の日本列島
  5. 人間学の視点
  6. チェックポイント

1.ネアンデルタール人の謎

●消えたネアンデルタール:同じ時代に旧人と新人がすぐ近くで生活していたことが遺跡からわかっています。ヨーロッパのネアンデルタール人(旧人)とクロマニヨン人(新人)の例です。ところが、このうちネアンデルタール人は絶滅し、クロマニヨン人は生きのびて子孫を残しました。旧人と新人とはほとんど区別できない身体をしていたのですが、旧人がつくる石器などの道具は単調であったのに対し、新人のそれは多様な内容をもっていました。

●この二つのタイプの人類の運命を決めたのは<言語>であったと人類学者は考えています。

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2.「第二の遺伝子」としての<言語>」

●もちはこわい:もちを喉につまらせて、窒息する高齢者のニュースを毎年正月に耳にします。これは、人類の喉の仕組みに原因があります。人の場合は、鼻から気道をとおって肺へいたる空気の通り道と、口から食道をとおって胃にいたる食べ物の道が、喉の奥で一度合流し、喉頭といわれる場所で再びわかれています。そのため、喉頭の位置は低く、鼻でも口でも呼吸ができます。喉の奥に広い空間ができて、複雑な音をだすこともできるようになっているのです。

●第二の遺伝子:この喉の仕組みと言語活動を支える脳の遺伝子により、新人の言語能力は飛躍的に高まったと考える人類学者がいます。複雑な音を使いわけて出すようになった人類は、自己の体験を知識として蓄積し、文化としてそれを後世に伝えるようになりました。この「第二の遺伝子」とよばれる<言語>によって、人類は生活のなかでかかえるさまざまな課題を解決していくようになりました。

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3.拡充する文化の質と量

●石器の形で人類の文化を分類すると、おおよそつぎのようになります。

旧石器
(前期)
〜20万年前れき石器・石核石器・火の使用
旧石器
(中期)
20万年前〜剥片石器・埋葬の風習
旧石器
(後期)
5万年前〜 石刃・骨角器(銛・釣り針・弓矢)洞穴壁画
中石器1万年前〜 細石器(鏃・銛・釣り針)・そり・船・車・犬の家畜化
新石器9000年前〜磨製石器(石斧・石鎌・石包丁)農耕・牧畜・土器・織物

●最古のフルート:上の表からは、5万年以後、文化の内容が多様になり、質的にも急速に変化してきていることがわかります。発掘によると、角でつくったフルート、鳥の卵の殻でつくったビーズなど装飾や芸術などの表現活動が一気に活発化しています。おそらく、このころに、人類は物事の因果関係や世界の仕組みについての説明を求めるようになったと考えられます。原初的な宗教もこのころに芽生えたと考えられます。

●「謎だ。」:さらに、1万年前から9000年前の1000年の間に、文化の質が急激に変化しています。何があったのでしょう。

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4.この頃の日本列島

●日本列島でも、このころから人の住んだ形跡が現れます。各地から石器が発掘され、人類が移り住んだことが確認されています。氷河期であるため、海水面も低く、北海道や九州が凍結した海で大陸とつながっており、古モンゴロイド系の人々が日本列島に移住してきていました。

●現在より乾燥し寒冷であったため、針葉樹林が主体で、ナウマン象やマンモスなどの大型動物も生息していました。これらによる狩猟・採集の生活が行われており、打製の石斧やナイフ尖頭器などが使われていました。

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5.人間学の視点

●言葉はどのような力をもっているのでしょう。

●「奇跡の人」で知られるヘレンケラーは、1歳の時の病気がもとで、聴覚・視覚に障害をもち、6歳まで育ってきました。通常の対人的な関係がつくられず、わがままし放題の粗暴なふるまいで家族を悩ましてきましたが、サリヴァン先生の指導で言葉を回復します。

●言葉を回復した直後、それまでのヘレンの粗暴なふるまいは消え、周りの人々との人間関係が成り立つようになります。人は言葉によってこの世界に住んでいることを他の人びとと確認しあっていることを、このヘレン=ケラーの逸話は私たちに教えてくれています。

●この頃の人類も、世界の姿を言葉によって共有する<知>の営みをはじめたのでした。

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6.チェックポイント

step1:ネアンデルタール人の存在はなぜ謎なのでしょう。
hint1:ネアンデルタール人とクロマニヨン人の文化の違いを説明できる有力な証拠はありますか。
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step2:言語はなぜ第二の遺伝子と考えられるのでしょう。
hint2:環境により適応した遺伝子をもつ生物の子孫はより繁栄します。環境により適応した文化をもつ人類の子孫もより繁栄します。文化は何によって伝えられますか。
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step3:5万年ころより、人類は全世界へとひろがって行きました。なぜ、それが可能になったのでしょう。
hint3:水中の生物を獲るようになったのはいつ頃からですか。
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point:出アフリカの成功
6・7万年前、人類はアフリカから出て、全世界に広がり、それぞれの土地で子孫を残して生き延びました。わかっているだけで3度目のアフリカ脱出でした。どうして成功できたのでしょうか。これがこの時代を理解する鍵です。
この頃(後期旧石器時代)の遺物を見ると、銛・釣り針・弓矢などの骨角器が新しく出現していることに気がつきます。さらに、遺伝子の分析により、人類はアフリカからアラビア半島、インドへと海岸づたいに移動したことがわかっています。
この二つの事実をつきあわせると、人類は魚介類を糧にアフリカから出て行ったことが推測されます。生活方法の一大革新がこの時代にあったはずです。
何がそれを可能にしたのか。言語の発達、氷河の動向など考える余地はまだまだありそうです。この時代の人類を考えることはその後の人類の歩みを考えるうえで参考になることがたくさんありそうです。

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