韓国反日の実相

平成13年8月17日 産経新聞
韓国反日の実相(下)
画一化されたマスコミ報道
30代以下の認識とズレ

歴史教科書問題を発端に韓国で今春以降、節目ごとに、政府以上の反日の情熱〜を
燃やしてきたのがマスコミだ。北朝鮮報道では、強硬か融和的かで論調の分かれる
保守系紙も進歩系紙も、「日本による歴史の歪曲(わいきょく)」では、見解に
際立った違いは見るられない。だが、こうした画一化された報道に対して、食傷気味と
自ら言う市民も多い。ソウル市内の総合病院の職員、柳鎮姫さんもそのひとり。
「歪曲、歪曲と繰り返しニュースに出てくる。正直なところ『うんざり』って気持ち」
と話す。豊かさの中で育った柳さんの世代は、一九八○年代後半の海外渡航自由化など
もあって、日本のナマの情報に接する機会も多い。とくに、柳さんは父親の転勤で
高校時代を日本で過ごしている。日本が朝鮮半島を支配した過去はあくまで過去であり、
それを現在に投影することがないようだ。韓国の人口構成を見ると、二十代、三十代が
大人(有権者)の六割を占める。主流の世代といってもいいだろう。柳さんはむしろ、
「日本の一般国民に『韓国人全員が政府やマスコミのように怒っているのでは』と
誤解されることが不安」と言う。若い世代のこうした受け止め方を承知で、それでも
マスコミが「歴史の歪曲」と繰り返すのは、それだけ過去が重いということなのかも
しれない。教科書問題に関連して、韓国政府は先月、日本の大衆文化開放の中断のほか、
教員や生徒たちの対日交流停止を決定、この夏、自治体や民間レベルの日韓交流が
立て続けに中止となった。政府決定後わずが一週間で、百二十五件の対日交流が中止され、
このうち姉妹校関係などによる学校間交流の中止は九十七件にものぼった。マスコミに
取り上げられることは少ないが、息子には初めての海外。行かせてやりたかった」と残念が
る父母も多い。「昨年、日本でのホームステイで知り合った友達を今度は僕の家に招待
する」と張り切っていた子供もいる。それでも、地理的にも文化的にも近い日韓間では、
草の根レベルの交流が数多く催されている。韓国南東部の蔚山市が運営するボランティア
センターでは七月末から二週間、ホームステイで日本の小学生二十一人を受け入れた。
同市では初めての試みで、「ホームシックで泣く子もいましたが、皆、韓国の言葉や風俗を
楽しく学んで帰りました」と同センター国際交流チームの金勇二氏(63)は言う。
日本人小学生らの様子は地元テレビで放送された。金勇二氏は政府による交流停止決定で
危機感を抱いていたと言い、それだけに愛け入れの成功がうれしかったようだ。
政府内部やマスコミの一部でも、交流停止などの報復措置についてはいさめる
声が出始めている。日本の劇団昴が八月下句、ソウル市内で韓国の劇団と共同公演を行うが、
韓国政府が助成金を出す。新間紙上で日韓交流断絶は韓国のためによくない」と言い切る
コラムもある。八月四日、日韓が共同開催するサッカーの2002年ワールドカップ(W杯)
まで、あと三百日の記念行目事がソウルで行われた。出席した金漢古文化観光相が、即興で
あいさつし、「世界が見ています。W杯を日本より立派にやろう」と述べた。
日本への対抗心は、韓国人を元気づける。ただ会場のこのあいさつに向けられたさめた反応
からは、「日本より立派に」という掛け声にも食傷気味という気分が感じられた。
(ソウル 名村隆寛)

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