「暗号解読戦争」(吉田一彦著、ビジネス社)より

2001/5/16

戦争時における暗号戦争、戦後の暗号

アメリカ潜水艦に敗れた日本:アメリカは日本の輸送船を沈めて日本の戦力を失わせた。(約9割の船を沈めた)

アメリカは、ドイツが英国への輸送船を無差別攻撃したことを非難しながら、日本に対してはドイツと同じことを行った。

アメリカ航空機は、日本各地を攻撃する際に、特に造船所の新造ドックを攻撃目標からはずして、船を造らせて人員と物資を積んで海上輸送中に撃沈した方がよほど効果が大きいという考え方。

これに対して、日本軍のある人が米軍の後方補給路を遮断することを提言したが連合艦隊司令部はこの意見を顧みなかったということである。

ヨーロッパ戦線では、潜水艦や航空機が大きな役割を果たしているのに、日本は大艦巨砲主義から抜けられなかった。

日本が戦端を開いた時点でドイツ軍不利という情報があったにもかかわらず、都合の悪い情報は握りつぶされていた可能性が高い。

→ 日本軍の中枢部の人は世の中の動きを正しく把握できず、戦略を誤った。

人間の大きな否定能力:「まさかそんなことはないだろう」「そんな馬鹿な」

人間というのは自己に不利な状況はなかなか信じられないのである。実際は信じたくないというのが本当のところである。

暗号を解読されている疑いが少しでもあれば新しい暗号を導入して疑念を払拭するような方策を採ればよい。しかし、それには相当な資金と労力が必要になる。要するに「面倒くさい」のである。そのために、原因究明の調査といっても、裏切り者やスパイがいるのではないか、敵潜水艦によって動きを通報されているのではないかといった些末的なことが中心となる。「安上がりで済む」原因を捜し求める傾向が見られるのである。

イギリスの艦艇があまり出没しそうにない海域で、絶妙のタイミングで現れたのである。偶然の一致にしてはできすぎているのである。

可能性として、暗号解読、スパイ、方向探知機が想定された。

暗号解読については、調査を命じられた専門化がエニグマは難攻不落であると保証したことから、スパイの探索が徹底的に行われた。成果は皆無であった。

その結果、ドイツ海軍の対応としては暗号を扱うのは将校に限るとして、一般の兵士の前では操作を行うのを禁止するという命令が出された。結局、「ピントはずれ」対策に終始することになり、これがイギリス側を大いに利することになった。

エニグマ暗号機の基本的なコンセプトは、それが仮に敵に捕獲されたとしても、解読は不可能だということであった。ローターのセッティング、即ちエニグマの鍵(キー)は定期的に変更するので、暗号機とローターを入手してみても、それを使用できないと考えられていたのである。しかし、「不敗」や「無敵」などといった言葉ほど人を裏切るものは無い。

日本がまだ第二次大戦に参加していない時点であるが、東京とワシントンの日本大使館の間に交わされる通信に使用されている高度の外交暗号が、アメリカ側によって解読されている可能瀬があるという同盟国から連絡を受けたことがある。この時にも実際に日本の暗号は解読されていたのであるが、ワシントンの日本大使館が採った対策は、通信要員を一人に限定することだけであった。アメリカはこの「赤チンとバンドエイド」だけの応急処置を大いなる奇貨としたのである。

日本における情報の軽視は第二次大戦における日本軍ばかりでなく、現代の日本の外交、通商などにおいても常に指摘される宿痾(しゅくあ)のごときものである。日本軍は危機管理の考えが甘かった。

アメリカがベトナム戦争で負けたのには、スパイがいて解読された暗号情報がソビエト側に渡っていたことが影響していると述べられている。

エシュロンという組織が1970年後半にアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国により作られた。昨年、ヨーロッパで大問題になった。エシュロンというのは、テロ、麻薬並びに武器の取引き、それに経済活動の情報収集ということで、国家をスポンサーとする産業スパイ活動が行われているという疑いがでてきたからである。日本ではあまり問題にされていないが、エシュロンの出先機関は日本の三沢にもあるとのことである。対日の経済活動に影響しなかったという保証は無い。

アメリカは最近まで暗号の輸出を規制していたが、輸出を禁止されると外国が興味を持つだろうという計算があったということである。

コンピュータ犯罪

ハッカーへの対抗策

(1)視野を広くして考えること。

(2)古い方法に執着しないこと。

(3)先入観を持たないこと。

(4)とにかく実行すること。旨くいかなかったら、別の方法を試してみること。

(5)我々の直面している唯一不変の事柄は、変化ということである。

ハッカーは社会工学(Socil Engineering)も活用する。

IT社会になり、サイバー戦争が現実のものとなりつつある。

サイバー攻撃を受ける可能性のある国家的重要事項として

(1)通信システム

(2)電力

(3)石油とガス

(4)交通と輸送

(5)金融システム

(6)水の供給

(7)緊急救護体制

(8)政権の継続

が挙げられている。

これらの機能が麻痺したらどうなるか、大変心配である。早急に対策を立ててもらいたい。

ある本の中で、日本は世界でも有数の豊かな国であるが、米ソなどに比べて情報能力が劣っているのは「他の軍事的強国に比して危機感がないのが原因だ」と述べられているとのこと。

5月14日から産経新聞に「エシュロン大研究 情報戦争と国際戦略」という記事が連載されているが、こちらも是非見ておいてもらいたい。諸外国が情報をいかに重要視しているか理解できると思う。

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