南インド旅行記

(補遺・注釈)

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【補遺】

トイレ
金融機関・クレジットカード
テレビ事情
ゴミ箱
占星術
シーク教


トイレ

●インドの公衆トイレは総じて暗くて汚い。ホテルでは問題ないが、外でするときはちょっと躊躇することが多い。インド人は大のとき紙を使わず、手桶に水を汲んで左手で洗う(だから食事のときに左手を使わない)。小は我慢して使うしかないが、大は外ではやりにくい(^^;。今回の旅でも、「いつトイレに行くか」ということは常に頭を悩ました。

●ついでに言うと、インドではなぜか立ちションしている奴が多い。バスで移動しているだけでも1日5回以上は目撃するので、かなりポピュラーな(?)光景なのだろう。一度、マイソールでガイドのシンさんに「このへんにトイレはないですか」と尋ねたところ、「男性の場合、そのへんでしても大丈夫。ノープロブレム」と言われた。その会話をしている最中に、まさにそのすぐそばで男が立ちションを始めた(笑)。「ほら」と言われてしまった(^^;。さすがに女性が座りションしているのは見なかったが、それが唯一の救いか。

●最初のホテルである「タージ・コネマラ」に着いたとき、ロビーに大量の蚊がいたので驚いた。ホテルマンがテニスラケットのような電撃殺虫機を持っていたが、焼け石に水で全然役に立たない。貸し切りバスの中にも蚊がいて、バスの中で蚊取り大会になった。なぜかインドの蚊は動作がのろく、容易にパチンと殺すことができる。バスの中で1人5〜10匹ほど退治した。蚊取り線香を持ってきている人がいて重宝がられた。蚊はマラリアを媒介することがあるので、刺されないようにしなければならない。蚊対策は非常に重要だ。高級ホテルには大抵ベープが備え付けられているが、あまり効かない。インドに行く時には電池式のベープや蚊取り線香を持って行くと重宝する。ちなみに私は蚊に刺されてしまったが、幸いマラリアにはかからなかった。

●インドでは野良犬をよく見かけたが、犬種は1種類しかいないようだった。もちろん飼い犬はさまざまな犬種がいるようだが。野良犬はみな耳がとんがっており顔が長くやせこけている。そしてそのやせた体に比して結構立派な(以下略)。インドにはもちろん猫もいるが、今回の旅では1〜2回しか見かけなかった。

犬
エレファンタ島で見かけた犬。この犬種の犬はどこにでもいる。

金融機関・クレジットカード

●バスの中から様々な銀行を見かけた。州立銀行やインド銀行などが大きなビルを構えていることが多いが、外資系の銀行もあった。ムンバイではCITIBANKHSBC(香港上海銀行)の店舗があるのを目撃した。これらはインドでも割とメジャーなようだ。ところで、ムンバイで見かけた金融機関には、入口を入ってすぐのところにライフルを持ったガードマン(警官?)が立っていた(^^;。どうする? ライフル〜(やめれ)。そのくらいしないとすぐ強盗に襲われるのかも知れぬ。

●クレジットカードの所有はインドではかなりのステイタスになるようで、びんでぃのコックも日本でやたら(年会費無料の)クレジットカードを作りまくっているそうだ。ホテルやみやげ物屋では、VISA・Master以外ではダイナースアメリカン・エクスプレスのマークをよく見かけた。数的にはダイナースの加盟店の方が多いようだった。あるレストランでは、店の看板にでかでかとダイナースのマークを描いていて、マークが店の名前より明らかに大きかった。そこまでダイナース対応をアピールする必要があるのかと思った。JCBなど日本の信販会社のマークはあまり見かけなかった(^^;。大きな買い物をするつもりならシティバンク(VISA提携)とダイナースのカードを持っていけばまず問題ないと思う。

テレビ事情

●方式はPAL。現在は衛星放送の受信も許され、ケーブルテレビも法律ができて合法化されている。国営放送のドゥールダルシャンは現在3チャンネル(そのうち1チャンネルはスポーツ専門局)。ケーブルでは60チャンネル以上が普通。今回泊まったホテルではどれもチャンネル数が多いので驚いた。STAR TV系、ZeeTV系、ソニー・エンタテインメント等の他、CNN、BBC、ESPN、MTVなどワールドワイドなチャンネルも多い。音楽専門チャンネルも増えている。10年前と比べると隔世の感がある。もう「インドの衛星放送」の話題で授業をするのはやめよう(^^;。なお、テレビの受像機はフィリップスやAKAI(赤井電機)など、日本では(受像機メーカーとしては)あまり見かけないメーカーが多かった。

●ところでスポーツ専門チャンネルでは圧倒的にクリケットの試合が多かった。私はクリケット大好き少年なので興味深く見たが、そもそもクリケットに興味がない人が見ても何が何だかわからないだろうと思った。なおインドはホッケーやカバディも強いが、テレビではやっていないようだった。シンさんに尋ねると「カバディはテレビではほとんど中継しない」とのことだった。

ゴミ箱

●インドの公共施設に設置されているゴミ箱はとってもプリティで面白かったので撮ってみた。

ゴミ箱1
"USE ME" とか言われても(笑)。

ゴミ箱2
うわっ、汚っ!

ゴミ箱3
いや、"PLEASE" とか言われても(笑)。

ゴミ箱4
このとぼけた味がたまらない。

占星術

●日本人は星占いが大好きな国民であるが、インドでも星占いをたびたび見ることになった。まず国内便の飛行機の機内誌に星占いが掲載されていて、へえと思った。しかしそれだけではなく、新聞・雑誌の類には必ずと言って良いほど星占いの欄があるし、本屋に行くと占いの棚がある。ゴアのホテルでは占星術コーナー(占い師が常駐している)まで設置されていた。インド人はよほど星占いが好きなのだなと思っていたが、日本に帰って本を読んでいたら謎が解けた。ヒンドゥー教で結婚の決め手となるのは、占星術から割り出された相性だという。占星術はヒンドゥーの教えを厳格に守っている家/地域ほど重視され、いくらお似合いのカップルでも占いの結果が「凶」だと縁談が成立しないという。結婚式の日どりも、司祭が二人の誕生日をもとに吉日の日時まで指定するという。つまり日本以上に占星術が生活の中で重きを置かれているのである。

参考文献:森本達雄『ヒンドゥー教 インドの聖と俗』、中公新書、2003年。

シーク教

●インド人というと「ターバンを巻いている」というイメージが強いが、常時ターバンを着用しているのはシーク教徒だけである。それもターバンを巻くよう義務づけられているわけではなく、彼らは髪の毛やヒゲを切らないので、髪をまとめるためにターバンが必要なのである。インドでシーク教徒はマイノリティで、人口の2%程度しかいない。ではなぜ「インド人=ターバン」というイメージができあがっているかというと、海外に出て商売をするインド人は大抵シーク教徒だったからだ。つまり、以前は日本で見かけるインド人のほとんどがシーク教徒だったのである。最近はインド人のIT技術者が来日するケースが増えているので、シーク教徒ばかりではないが。

●彼らが海外に進出できたのはカーストがないからである。元々シーク教はカースト制による差別を批判してヒンドゥー教から分派してできた宗教である。だから親の職業を世襲する義務はなく、好きな商売を選択することができた。そして彼らのうちの一部が海外に活路を求めたのである。

●我々が通常「カースト制」と呼んでいるのは「4つの階級+不可触民」という身分制度を指すことが多いが、これは正確に言うと「ヴァルナ制度」である。ヒンドゥー教徒はそれぞれのヴァルナに所属するが、それと同時に「ジャーティ」という「職業の世襲、婚姻、食卓をともにしうる社会集団」に属している。カースト制度はヴァルナとジャーティが不可分に結びついて成立しており、日本の士農工商のような単純な身分制度とは異なる。現代のインド社会ではどのヴァルナに属するかということよりもむしろどのジャーティに属しているかの方が重要である場合が多いという。カースト制は現在制度的には廃止されているが、まだ社会のすみずみに根強く残っている。原則として職業は世襲であり、そのことがカースト制を完全に廃止できない原因のひとつともなっている。ただ、前述のIT技術者のようにかつては存在しなかった職業に就く者も増えているところから見て、ジャーティの細分化ないしカースト制それ自体の弱体化が進んでいるのではないかと考えられる。

参考文献:森本、前掲書。


【注釈】

(注1)チャーターしたバス

この旅では各地を転々とするため、バス(および運転手)と現地ガイドはそのつど現地調達していた。全体のガイドとしては旅行会社から仕事を委託されたプロのガイドであるシンさん(シーク教徒の好青年)が随行した。このシンさんは店主がインドに行く時は毎回随行し、ほとんど専属のようになっている。現地ガイドが英語を話す場合はシンさんが日本語に通訳(要約)してくれた。 (戻る

(注2)バイク

店主が今回インドに来て一番「前と変わった」と思ったことは「バイクが増えた」ということだったという。中国でも昔自転車が多かったのが、最近では自動車に代わったのと同じ現象と言えよう。それからついでに言うと、「道路に中央線が引かれている」というのも驚異的だったらしい(昔は中央線もなかったのか・・・(;_;))。海岸寺院に行く途中に高速道路があり、料金所を通過したが、そもそもインドの道路で「料金所」というのも以前では考えられなかったらしい。凄いぞ、インド。バイクに話を戻すと、メーカーはホンダ製(中国製のフェイク物か?)が多かった。他のメーカーは確認できず。車ではなぜか日本のスズキが多い。あとはインド国産のアンバサダー、韓国のヒュンダイ(現代)、フランスのFIATがよく走っている。 (戻る

(注3)手荷物検査

インドの国内線は、テロ警戒のため手荷物検査が異常に厳しい。ボディチェックの時にペットボトルの水を持っていったところ、ボトルの形状が珍しかった(エビアンのムーバーボトル)ので、開けて飲むよう指示されたほどだ。特に電池の持ち込みにうるさい(電池は起爆装置に使えるから)ので、あらかじめ電池はすべて外してトランクなどの預ける荷物に入れる必要がある。ただ、今回ノートパソコンを持っていったが、パソコンについては特に何も言われなかった。たぶんよく分からない(というか、怪しくなければ良い)ということだろう。パソコンと一緒に入っていたモデムセイバーを見つけた係官に「これは何だ?」と訊かれたときには返答に窮した(^^;。 (戻る

(注4)裸行派

「裸行派」はガイドのシンさんの表現。正確に言うと「空衣派(くうえは:ディガンバラ)」。もうひとつの派は「白衣派(びゃくえは)」。実際にここで空衣派の僧侶を1人目撃した(当然何も身につけていなかった)。僧侶は孔雀の羽でできたハケを持っており、礼拝するため石像等に近づく時、そのハケで地面を掃く。それは誤ってアリなどの小動物を踏みつぶさないようにするためだという。実際に女性の修行僧たちがこのハケを使っているところを見たが、なかなか優美であった。 (戻る

参考URL:神谷武夫「ジャイナ教の建築」

(注5)選挙運動

国会議員の選挙だが、選出は州ごとに行われる。時期も州によって違い、先月はあの州、今月はこの州といった具合だという。主要政党としては与党のインド人民党(Bharatiya Janata Party:バジパイ首相はこの政党)と、野党の国民会議派(Indian National Congress)がある(※この政党のことをガイドのシンさんは「コングレス」と略して呼んでいた)。選挙運動をしていたのは国民会議派の方。国民会議派はインド最古の政党であり、建国以来約半世紀にわたって政権を担当してきたが、今は野党に転落している。政治的には保守中道。インド人民党(BJP)はヒンドゥー・ナショナリズムを煽ることで勢力を伸張させてきた右翼政党である。アヨーディア事件(ヒンドゥー教徒によるイスラム教寺院襲撃事件)や核実験などは、BJPの台頭とともにインドが右傾化してきたことの結果と言える。本文にあるようなお祭り騒ぎは日本人から見ると奇異に思えるが、インドネシアや台湾の選挙運動と比べるとまだ穏健な方なのかも知れない。 (戻る

参考文献:重松伸司・三田昌彦(編著)『インドを知るための50章』、明石書店、2003年。

(注6)バスの運転手

現地でチャーターしたバスは、必ず運転手1人、助手1人の構成になっていた。助手はバックする時や渋滞の時に外に出て運転手に指示したり、交通整理?をしたりする。この時の渋滞でも、若い助手が外に出て邪魔な放置バイクをどかしたり、前の方の状態を見て運転手に知らせたり、大変な活躍を見せた。ガイドのシンさんも外に出て交通整理を手伝っていた。みんなお疲れ様でした。このハイパー大渋滞は翌日のニュースになるほどの凄さだったのだが、道路脇の一般人は別に何とも思っていないようだった(笑)。それでいて、車がエンストしたりパンクしたりすると、どこからともなく人が集まってきて動かすのを手伝ってくれたりするのだった。また日本ならこんな状態になったらあちこちで殴り合いのケンカが多発しそうだが、そんなこともなかった(みんな好き勝手なことを怒鳴っていたが、不思議とケンカにはならなかった)。そのへんがインドのいいところだとも思った。 (戻る

(注7)石像の3つの顔

この3つの顔がそれぞれ何を表しているかについては2つの説がある。ひとつは、3つの顔が左からシヴァ(破壊)、ブラフマー(創造)、ヴィシュヌ(維持)の三神を表しているとする説である。もうひとつは、三面はすべてシヴァ神であり、シヴァの3つのはたらきを三面をもって表現したものであるとする。私が参考にした "ELEPHANTA" という文献では後者の説に立っているが、現地ガイドは前者の説で説明したように記憶している。どちらが正しいかは門外漢である私には知りようがないが、どちらの説でもその意味するところは同じであろう。なお、前者の拠り所となっている「三神一体説」は、ヒンドゥー教ではかなりポピュラーな説であるようだ。 (戻る

参考文献:Michell, George, ELEPHANTA, India Book House Pvt Ltd, 2002.,
     森本、前掲書。


【最後のおまけ】

●ムンバイのスラム街(のうちの1つ)。バスの中から撮ったにしてはよく撮れた。この人たちにもいつかいいことがありますように。

スラム街


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