「・・・いさん、中居さん!」
「・・・?・・・・」
「大丈夫ですか?中居さん」
「あ・・・俺・・・」
スタジオの中だった。煌々と照らされたライトが眩しい。
多くのスタッフやメンバーが心配そうに覗き込む顔が見える。
「一時間休憩入りましたんで、ゆっくり休んで下さい。」
「・・ああ、どうも・・・」
中居は、両脇を支えられて立ち上がった。
・・・さっきまでのことは、夢だったのだろうか。
最後の胸の痛みだけが生々しい。
中居は重たい体を引き摺って、控え室へと歩き出した。
「お疲れ様でした。体、大丈夫ですか?」
無事1日の仕事を終え、中居はマネージャーの運転する車で自宅へと向かっていた。
「うん、大丈夫。疲れてんのかなぁー・・・」
「忙しい時期ですけど、体だけは気を付けてくださいよ。」
「うん、わかった。」
適当に返事を返し、座席に横たわろうとしたが
「あ、そうだ、これ・・・」
運転席に座っているマネージャーが思い立ったように一冊の冊子を取り出し、中居に手渡した。
「何?」
「連ドラの話が来てるんですよ。TBSで、放送は来年の1月から・・・だったかな?
これ、サンプルの台本です。見てみます?」
「ふーん・・・」
台本の後ろの方をパラパラとめくって目を通していた中居だが、暫くして驚くべきことに気が付いた。
「!!・・・・」
同じだった。今日、夢の中で自分と同じ姿をした男に、手を通して伝えられた言葉と全く同じ台詞が、台本の中に書かれている。
「こ、これ・・・・」
唖然とする中居の前で、マネージャーが淡々と口を開く。
「なんか、前にやったやつの続編みたいですよ。好評だったから、第2弾もやろうということになったらしくて。中居さんが主役で、
相手役は竹内結子さんだそうです。えーと、タイトルは・・・」
中居は急いで台本の表紙を見た。
『白い影 〜again〜』
・・・中居の中ですべての糸が繋がった。
あの男に、自分はすでに会っていたのだ。もう、1年以上も前に・・・。
「どうします?続編といっても、中居さん来年も忙しいですからねぇ。年末年始もぎっしり予定入って・・・」
「やるよ。」
マネージャーの言葉を遮るように、中居ははっきりと言った。
「やるよ、白い影。もっかい、やる。」
中居は帽子を目深に被ると、台本を丁寧に自分のバッグに入れ、1つ大きな伸びをして車の後部座席に横たわった。
〜The End〜