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■彼がすがりたかったもの
直江は自分に迫ってくる死が怖くて酒と女性に逃れた。
お酒は。。。ブランデー、バーボンをロックで煽る。部屋には空いた酒瓶が何本も置いてある。
私は「何かを忘れるために」お酒を飲むことなどないから本当に忘れられるものなのか分からないが。。。
ちなみにタバコもかなりの本数を吸っている。
原作では痛みをやわらげるためにタバコや酒に手を出したと告白していたが、やはりそのためなのだろうか。

それから、女性。直江には付き合いのある女性が複数いた。
一人は三樹子。直江が行田病院にきたのは約2年前と思われるが、二人の付き合いが始まったのは、その直後ではないだろうか。
直江はその容姿の「美しさ」ゆえに、まず三樹子が注目したはずだ。その美しさに加えて、行動や表情にまとわりつく「影」。どことなくミステリアスで人を寄せ付けない冷たさ。今まで会ったどんな男性とも違う強烈な個性。
おそらく、最初に声をかけ、誘ったのは三樹子のほうだと思う。三樹子が直江を誘うシーンが度々ある。
「これから先生のところに行ってもいい?」「今夜、行ってもいい?」
当直だと断られれば、「じゃあ明日は?」とたずねる。
直江は「くるもの拒まず」といった態度で応じるようだ。三樹子を受け入れるかどうかは直江の気分次第だ。
三樹子も直江は何を考えている人がよく分からないと思いながらつきあっている。
三樹子もまあ、いいかとそう思いながら、時々言わずにはいられない。
「先生の奥さんになる人は大変ね」
「長野にいたときに恋人はいたの」
「私を見てるふりしてどこか遠くを見てるのね」
こんなことをいくら質問したとしても、直江が答えるはずはない。面倒くさいことは抜きにした関係で終わりたいからだ。

もう一人は小夜子。フロンティア製薬のMR。
直江と小夜子の関係は、最初から何やら怪しげだったが、どうやら治験薬「フロノス」を手に入れるための裏取引があったようだ。
直江はフロノスを自分の体で試したい。しかし、病院の人間には知られたくない。
自分の病気のことは秘密だし、自分自身に投与するからだ。
そのためには、内々にフロノスを手に入れなくてはならない。
三樹子とは違い、最初は直江から小夜子に持ち掛けたのではないだろうか。
「フロノスを使わせてくれないか。でも病院には知られたくない。」
「フロノスは治験薬ですよ」
「外来の患者で使ってみたい患者がいるんだ。彼はMMだ。」
「でも、どうして内緒なんですか」
「僕は長野でもMMの症例をたくさん見てきた。これは僕の個人的な研究だ」
「でも。。。」
「フロノスを持ってきてくれたら、承認に必要なデータを提供しよう。」
「。。。二人だけの秘密なんですよね。それなら私も先生と。。。」
というような感じだろうか。実は小夜子は行田病院長とも関係を持っていた。
出世のためには取引先の院長とも関係を持つ、したたかな女性のようだ。しかし、小夜子は直江との関係を行田には話していない。行田との関係はビジネスライクで、直江との関係はどちらかというと多少なりとも愛情が入っていたのかもしれない。

どちらの女性とも直江は自分の部屋で会っていた。突然襲ってくる痛みのためだろうか。
ただし、どちらも「孤独を紛らわせるための道具」に過ぎなかった。一時でも迫ってくる死を忘れられればそれでいい。そこに感情などない。もう誰も愛さない。
直江は女性に逃げたいとは思ったが、すがったことはないだろう。
ただ一度、倫子を拒絶し、倫子を忘れるために小夜子に「帰らないでくれ」とすがったときを除いて。

倫子への愛情を認識することによって、直江はこの二人を部屋に入れなくなる。
愛する女性を追い出し、愛してもいない女性を部屋に入れることの虚しさに気づいたのだろう。
特に小夜子の場合、彼女との関係を絶つことは、フロノスの受け渡しを自分の部屋ではなく病院でやるということ。最悪、フロノスを手に入れられなくなるかもしれない危険もある。
そういう危険を予想できても、直江は小夜子との関係を絶つ。
この時点で直江の倫子に対する愛情がいかに深いかが分かる。
『たとえ、彼女に伝えられなくても、自分は彼女を愛している。愛する人は裏切れない。もう誰も愛さないと決めていたのに、いつからこんなふうに考えるようになったんだろう』
直江が本当にすがりたかったのは、倫子なのだから。

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