18年耐震調査結果

2006年6月 文部科学省 調査結果公表

公立小中学校
2階建て以上
200以上は

130,976棟

 2006年6月文部科学省は、2006年4月に行った5回目の全国の公立小中学校施設の「耐震改修状況調査」の集計結果を公表しました。
 調査の対象は、2階以上または延べ床面積が200を超える非木造建物130,976棟でした。調査の結果、54.7%にあたる71,681棟が耐震性があることが明らかになりましたが、増加は前年より2.9%の微増にとどまりました。しかしながら、耐震診断の実施率は、昨年の11.1%と同じ水準の増加率となる11.6%と大きく伸びました。
 都道府県別の実施率・耐震化率は、大きな格差が問題となっていましたが、一部地域で大きく改善したものの依然立ち遅れる現象は解消されていません。
 調査は、都道府県教育委員会を通して全国の全ての公立小学校、中学校の学校にある建物の内で地震に対して危険性が大きい建物を指定し、学校施設を管理する市町村教育委員会に調査用紙を配付して行われました。
 文部科学省は、今回の発表資料に都道府県別に各自治体の調査結果も付け加えました。(大阪府の各市町村別調査結果へ)

 
校舎耐震診断率推移
 
文部科学省「平成18年4月・耐震改修状況調査」より
 
 実施計画求めた成果現れる  
耐震診断は大きく前進  

 1995年1月の阪神・淡路大震災を受けて同年6月、政府は公共建物の耐震診断を急ぐ必要性を認め、「地震防災事業五箇年計画」を策定してそれまで特定地域に対して行っていた耐震工事事業への補助を全国対象に広げ、かつ耐震診断と耐力度調査の費用に対しても国庫補助を行うこととしました。
  しかしながら、2002年5月実施された初めての全国調査では、震災から8年が経過したにもかかわらず、耐震診断すら大きく立ち後れていることが明らかになりました。
  文部科学省は、この調査結果を受け2002年7月31日付けで「公立学校施設の耐震診断実施計画の策定について」において、都道府県教育委員会に公立学校の耐震性能の把握と耐震診断実施計画の策定を依頼し、全国的な取り組みの強化を図りました。17年度までに全ての公立学校施設の耐震診断を終えようとする3カ年計画を求めたものでした。

 上の耐震診断実施の経過を示すグラフを見れば、文部科学省の3カ年計画のその後も全国的な取り組みが行われたことが分かります。 府県別で見ると実施率10%台は沖縄県のみになり、20%台は佐賀・長崎の2県、30%台にとどまる県が青森・新潟など6県ありました。

 学校施設が集中する都市部の拠点として、政令指定都市別で見れば財政力の事情もあり全体調査よりも10%程度高くなっていますが、ここでも14の政令指定都市のバラツキは大きく、北九州市の20%台、さいたま市の30%台は深刻です。
 今回の調査結果でも、財政の厳しい中にありながらも、多くの自治体で公立学校施設の重要性に対応した取り組みが進んでいることを示しています。


 

 
校舎耐震化の推移

 学校施設の耐震化の遅れは、自治体での抜本的な取り組み強化と国のさらなる財政支援が欠かせません。  しかし、「三位一体の改革」が国と地方自治体の間で取り組まれる中で、学校施設耐震化の遅れる自治体を現状の水準で放置したまま地方への不十分な財源移転が行われれば、安全な学校施設整備は深刻な打撃となる可能性があります。

  政令指定都市でも

 耐震化は66.5%

 財政基盤の強いはずの14の政令指定都市ですら、耐震化の平均値は66.5%です。17314棟の内、耐震化工事を終えたものや耐震性が確認されたのは、5555棟となりました。都道府県同様に、先進都市と遅れる都市の差はやはり大きくなっています。
  最も耐震化が進んでいるのは、名古屋市で91.3%に達しました。職員厚遇問題で全国的に問題にされた大阪市の耐震化は78.3%と大阪府全体の平均値を大きく上回っています。耐震化のために抜本的な財政支援策が求められます。


注 全国の公立小・中学校の調査対象棟数は、統廃合のために減少傾向にあります。

推進する都府県明らかに

 新聞報道などでは、全国的データーによる記事が主になっていたために、自治体別の実態は明らかではありません。
 このグラフでは、絶対的な保有棟数の違いと自治体の努力の成果である緑色に色分けした耐震補強工事済みと耐震診断で耐震性ありと確認された棟数の大きさを確認できます。
 関東大震災と東海地震に対する対策を強めていた東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県などでの取り組みが積極的に行われ、成果となっていますが、大阪府、京都府、兵庫県を除く西日本での対策の遅れが明らかです。

非耐震建物は自治体財政の負の資産

 全国一の棟数がある大阪府は、この3年間に急速な対策が進み財政が厳しい中では大きな成果をあげたと言えますが、残る非耐震化の建物の数は、あまりにも大きく見えます。学校施設は、建物面積でみれば公共建物の内で半数近い比重を占め、非耐震の建物は、自治体財政の決算書には載らないマイナスの財産でもあります。
 市町村の決算書が黒字であっても、公共施設の耐震化が放置されているならば、帳票上の収支はともかく真の財政状態を正しく反映したものではありません。財政の厳しさを訴えながら、新しい箱ものづくりは続け耐震化は国の求める水準を遙かに下回る吹田市政は、早急な見直しが必要です。
  大阪府の中でも、市町村によって大きな格差があり、各市町村の姿勢と責任が問われるでしょう。

 

 平成18年4月現在では

 吹田市は「29.8%」
  府の水準を大きく下回る

 吹田市の学校の耐震化は、平成15年3月の市議会での答弁によると「約21%」、その後耐震補強工事が進んで、第5回調査での大阪府の平均値54.1%に対して大きく立ち後れた水準に留まっています。吹田市は、府下でも財政状態は良いとされて来ましたが、こと耐震化に限れば市民の期待を裏切る結果となっています。

文部科学省「平成18年4月・耐震改修状況調査」より
耐震診断実施率は都府県で大きな差
 
 
 
 

耐震診断未実施棟数

 突出する福岡県、大阪府、     北海道

 耐震診断の実施率では、全国11位の大阪府は全体の棟数が東京都を上回る1位であり、56年以前に建てられた建物の比率も東京都、香川県に次ぐ高い(71.2%)ために、未実施数では、2位となっています。
 福岡県は、大阪府の半分ほどの棟数ながら耐震診断実施率が全国平均を大きく下回る21.0%にとどまるため、大阪府に次ぐ未実施数となって、突出した形になっています。
 鹿児島県も福岡県と同じ傾向にあります。
 太平洋側以外での地震発生の少ない北海道では、札幌市を含む石狩管区以外の自治体の対応が遅れ未実施棟数が大きくなっています。
 調査対象のこの1年間に新潟中越地震と福岡県沖地震がありましたが、どちらの県でも耐震診断のレベルは大きく遅れる状態で、自治体の油断と取り組みの遅れは自然災害は待ってくれないことを知らされた感があります。

 
 
 
 
文部科学省「平成16年・耐震改修状況調査」より

都道府県と市町村

バラバラな対応

 耐震診断の実施率は、全国平均で60%超えましたが、静岡県の94.1%を先頭に、神奈川県93.0%、東京都、岐阜県、愛知県、三重県の80%台、岐阜県、千葉県、香川県、京都府が70%台となり、60%は7府県と平均値以上の都府県は16ありました。
  2002年の第1回調査では、50%を超えた都県は、8都県に止まりまったことからは、大きな変化といえます。グラフは、実施率10%台の県があるなど、自治体の危機管理には大きなバラつきがあることを改めて証明した形になっています。
  私たちの吹田市がある大阪府は、69.8%となっていますが、もちろん府下市町村の実施率でも大きなバラつきがあると推定されます。市町村の中には、初回調査において、文部科学省の「2階以上、200以上の棟」という対象基準を誤って集計報告したと言うおそまつな対応をした事例もありました。
 文部科学省は、平成14年7月に市町村教育委員会が独時の計画として「耐震診断実施3カ年計画」の立案を行うことを求めましたが、自治体によっては財政状況の厳しさを理由に計画すら立案していないところもあります。
 吹田市では、体育館の耐震補強と統廃合してから校舎の耐震補強を計画した千里たけみ小学校の耐震補強工事だけが実施され、大震災から数年経って行われた17校の耐震診断以外はストップしたままで文部科学省の呼びかけた3カ年計画の立案は財政部局の判断でつぶされてしまいました。

 
最新2009年4月第8回全国調査のページへ
大切な施設 | 特色と問題 | 進む老朽化 | 財政と予算 | 働く人から| Home |