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UltraVapo 常用化
- P4 2.5GHz SL6GT L230A630 -

LastModified 03/05/25

 「月日は巡る風車。どこに行くのか八剣士」
(石山 透脚本 坂本 九語 「新八犬伝」より)

という訳で、前回の更新からはや半年。いやあ月日が流れるのは早いもんですなぁ・・・(遠い目) GA-8IRXの改造を終了から実はP4-1.8Aを2個程UltraVapoで冷やしてみるも3GHz常用には至らず、失意のうちに現実逃避の日々を送る四万十川でございました。

しかし、P4のSteppingがC1に変更されて大幅値下げをされたのを機に、今度こそUltraVapoの常用化を図るべく再度の挑戦に及びました。今度こそは・・・・

 


1. SL6GT L230A630

ご存知の通りP4-2.8GHzと同時にリリースされ、SteppingがC1に変更されたPentiumWです。C1stepの大きな特徴としては、動作電圧が1.5Vから1.525Vへと渇入れ仕様に変更されています。Intelのデータシートによれば1.5→1.525V へと昇圧する事で、消費電力は59.3→61Wへと上昇しています。

ちなみに、1.8Aと2.5のリテールシンクを比較したのが下の写真です。

左はP4-1.8AGHz、右はP4-2.5GHzのリテールシンク。

1.8Aの消費電力が50W程度だったのに対して、2.5GHzでは約10W程消費電力が上がっている事になり、その結果は如実にヒートシンクに出ていると言えるでしょう。ちなみにファンは、1.8Aが12V0.16A=1.92W、2.5Gが12V0.18A=2.16Aとやはり強化されています。しかし、定格で60Wの発熱・・・30W程度だったP3の頃が懐かしい・・・


2. 空冷限界チェック

まずは、空冷でCPUの限界を一応チェックします。以下の条件で検証しました。

CPU PentiumW 2.5GHz SL6GT L239A630
Memory Crucial PC2100-DDR 256MB CT3264Z265.16T (Micron MT 46V16M8-75) 
(MemoryClockは、x2.0設定)
VGA Canopus Spectra X20 (Nvidia Geforce3)
CPU Cooler Retail  or KENDON CPU Radiator(KR-1) 
HDD IBM IC35L080AVVA07 80HB
グリス 田川アルミ TSC-1
OS WindowsMe
室温 25.9℃

Retail と KENDON CPU Radiator(KR-1) の2つのCPUクーラを使用して空冷動作限界をSuperπ104万桁の動作によって把握してゆきます。各clockにおけるコア内部温度は、秋月温度計による較正済ハード読みですのでほぼ正確な絶対温度を表示していると考えて差し支えないと思います。

こちらでおのさんもおっしゃっていますが、通常温度モニタに使用されるW83627HFが前提としているthermal diode温度はPentiumU/Vthermal diodeの特性です。PentiumWのthermal diode特性は若干違っているので(同じPentiumWでも WikkametteとNorthwoodでは明らかに特性が違っています)、通常のモニターソフトで確認できるCPU内部温度は絶対温度とはかなり違った値となっている可能性があります。(なんらかの補正をBIOSでかけている可能性はありますが・・・)

まずはRetalクーラでclockを上げてゆき、エラーが発生した時点でVcoreを上げていきます。VcoreをMAXにしても動作しなかった時点でKENDON CPU Radiator(KR-1) に交換しました。結果が以下の表です。尚、記載しているVcore(V)は設定値ではなく、Windows起動後のハードウェアモニタで読み取った値です。(Windows起動後は設定より0.05V程低くなります。)

CPU FSB PCI div PCI retail(℃) KR-1(℃) Vcore(V)
2500 100.00 1/3 33.33 44.5   1.52
2600 104.00 34.67 44.8  
2700 108.00 36.00 45.3  
2800 112.00 37.33 47.3  
2900 116.00 38.67 47.4  
3000 120.00 40.00 48.2 43.7
3100 124.00 1/4 31.00 58.3 52.4 1.70
3101 124.04 31.01   フリーズ 1.70
3101 124.04 31.01   フリーズ 1.86

という訳で、Vcodeをどんなに高く設定しても3100MHz止まりという結果となりました。

 相変わらず籤運が悪い四万十川でございましたとさ。(自爆)


3. GA-8IRXのUltraVapoへの装着

ま、空冷でイマイチだからこそのUltraVapoです。気を取り直して続けましょう。UltraVapoのマザーボードベースは元々Epox系に合わせて作成されているので、丁度Socketの向きが90度回転している感じとなります。そのままでは、マザー背面の取り付けベースがマザーベースに干渉するので、下の写真の様に切り欠き加工を行いました。

また、前回の結果よりマザーベースのコードヒータは不要と判断して抜いています。


3. システム組み上げ

さて、準備は整った所でシステムの組み上げです。最終的なシステムの構成を以下に示します。

機器

機種

備考

CPU PentiumW 2.5GHz SL6GT L239A630
マザーボード GIGABYTE GA-8IRX改 TurboPLL装着済
メモリ MicronCrucial PC2100 DDR 256MB CT3264Z265.16T (Micron MT 46V16M8-75) 
ケース テクノバード TB-505 取手、キャスター付(笑)
冷却 UltraVapochill  
電源 ABELCOM SP-401RA 400W  
VGA Canopus SpectraX20 ゲームやらずに世代遅れ(自爆)
HDD IBM IC35L080AVVA07 80GB  
FDD N/B  
SCSI Adaptec AHA-2940UW PD使う為だけ(笑)
CD-ROM Matsusita PD1 LF-1000 ふ、古っるー・・・
LAN Planex FNW-9308-T  
その他 5inchベイスピーカ SP-400  
TurboPLLコントローラ  
PCガイガー RD2  
5inchベイ用HDDクーラ  
光るエンブレム  
2連装圧力計 凝縮圧、蒸発圧

OverClockの為になるべくシンプルな構成にするつもりでしたが、結果としては上記の様にゴテゴテになってしまいました。 

尚、前面パネルの内側はORIX製12cm 100VACファンが内蔵されています。

コンプレッサ室及びシステムの空調の為、ケース背面には8cm及び12cmファンを設置しています。騒音的には・・・前面の12cmACファンの轟音のせいで、あんまり気にならないですね(笑)

4. UltraVapo始動

それでは、全ての準備は整いました。早速UltraVapoによるテストを開始しましょう。前章における構成で、2500MHzから10MHzずつClockを上げてSuperπ104万桁を実行して各部の温度をチェックしつつ動作を確認してゆき、動作不能となった時点でVcoreを昇圧します。

温度チェックには、CPUコアに使用する秋月温度計の他にサーミスタ(マザー表、裏のソケット周辺部)及び、熱伝対(エバポレータ温度、コンプレッサ温度)をし使用して、Suoerπ100万桁計算終了直前の温度をモニターします。

左:EVA温度、右:Comp温度

結果が、以下の表です。ちょっと見難いとは思いますが自分の為の記録も兼ねて生データを記載します。ちなみに、実験時には、GA-8IRXのBIOSに最新(2002.9.30現在)のF9を使用したのですが、3200MHz付近でHDDの書き込みエラーが頻発してしまう現象が発生しました。CPUの限界かと一瞬落胆したのですが、PCガイガーで確認した所、PCIを1/4に設定したにも関わらず1/3のままである事が判りました。どうやら、F9 BIOSでは、PCI div設定が機能しないみたいです。その時点で、BIOSをF6に戻して実験を継続しています。もし同様の現象に悩まされている方がおられたらご注意下さい。

Vore
(V)
CPU
(Hz)
FSB
(Hz)
PCI div PCI
(Hz)
EVA
(℃)
Comp
(℃)
Core
(℃)
凝縮
(Mpa)
蒸発
(Mpa)
M/B表
(℃)
M/B裏
(℃)
1.52 2500 100.0 1/3 33.33 -39 42 -25.8 1.10 0.00 21.6 16.6
2600 104.0 34.67 -37 43 -22.8 1.10 0.00 23.1 19.0
2700 108.0 36.00 -37 44 -22.1 1.12 0.01 24.0 20.2
2800 112.0 37.33 -36 46 -22.5 1.12 0.01 24.8 21.5
2900 116.0 38.67 -36 47 -22 1.15 0.01 25.0 21.7
3000 120.0 40.00 -36 47 -21.8 1.15 0.01 25.3 22.0
3100 124.0 41.33 -36 47 -20.8 1.15 0.01 25.5 22.5
3110 124.4 41.47 -37 48 -21.7 1.18 0.01 25.8 22.6
3120 124.8 41.60 -36 49 -20.9 1.18 0.01 25.9 22.9
3130 125.2 41.73 -36 49 -20.9 1.20 0.01 26.0 23.1
3140 125.6 41.87 -35 50 -21.7 1.20 0.01 26.0 23.1
3150 126.0 42.00 -35 50 -21.7 1.20 0.01 26.0 23.2
3160 126.4 42.13 -36 50 -21.5 1.20 0.01 26.2 23.0
3170 126.8 42.27 -36 50 -21.1 1.20 0.01 26.4 23.4
3180 127.2 42.40 -37 51 -21.6 1.20 0.01 26.4 23.2
1.6 3190 127.6 1/4 31.90 -36 55 -20.3 1.20 0.01 26.0 22.3
3200 128.0 32.00 -38 55 -19.5 1.20 0.01 24.7 20.9
3210 128.4 32.10 -36 55 -19.9 1.19 0.01 25.3 22.3
3220 128.8 32.20 -36 56 -19.5 1.20 0.01 25.5 22.6
3230 129.2 32.30 -35 56 -19.4 1.19 0.01 25.6 22.9
3240 129.6 32.40 -37 56 -20.3 1.19 0.01 25.4 22.0
3250 130.0 32.50 -36 56 -20 1.20 0.01 25.4 22.1
3260 130.4 32.60 -35 56 -19.9 1.20 0.01 25.6 22.8
3270 130.8 32.70 -36 56 -19.7 1.20 0.01 25.6 22.6
3280 131.2 32.80 -35 57 -19.6 1.20 0.01 25.9 23.3
3290 131.6 32.90 -36 57 -20.2 1.20 0.01 25.8 22.9
3300 132.0 33.00 -38 57 -20.3 1.18 0.01 26.8 22.4
3310 132.4 33.10 -36 57 -20.9 1.18 0.01 26.3 22.0
3320 132.8 33.20 -36 57 -19.8 1.18 0.01 25.7 23.1
3330 133.2 33.30 error
1.7 3330 133.2 33.30 -35 57 -15.4 1.18 0.01 26.1 20.4
3340 133.6 33.40 -34 58 -15.3 1.18 0.01 25.7 23.5
3350 134.0 33.50 -35 58 -15.2 1.18 0.01 26.9 23.5
3360 134.4 33.60 -34 58 -15 1.18 0.01 27.0 23.6
3370 134.8 33.70 -35 58 -14.7 1.18 0.01 27.0 23.6
3380 135.2 33.80 -34 58 -14.6 1.18 0.01 27.3 23.8
3390 135.6 33.90 -35 59 -14.5 1.18 0.01 27.3 23.8
3400 136.0 34.00 error
1.8 3400 136.0 34.00 -34 58 -9.5 1.18 0.01 27.1 23.9
3410 136.4 34.10 -34 59 -8.6 1.18 0.01 27.4 24.4
3420 136.8 34.20 -33 59 -8.4 1.18 0.01 26.3 24.7
3430 137.2 34.30 -33 59 -8.3 1.18 0.01 26.5 25.0
3440 137.6 34.40 -33 60 -8.1 1.20 0.01 26.6 25.3
3450 138.0 34.50 -33 60 -7.6 1.20 0.01 27.8 25.3
3460 138.4 34.60 ハング
1.85 3460 138.4 34.60 -32 60 -3.5 1.20 0.01 26.5 25.7
3470 138.8 34.70 -32 60 -3.1 1.20 0.01 26.8 26.0
3480 139.2 34.80 -33 60 -3.4 1.20 0.01 27.6 23.7
3490 139.6 34.90 ハング
3500 140.0 35.00 N/A

結果として

 3480MHzでSuperπ104万桁が実行可能

となりました。空冷から比べると実に380MHzの限界Upです。この結果をどう見るかは人それぞれと思います。3500MHzの大台を越えられなかったのは残念ですが、四万十川としては「当たり外れを吸収」できるだけの結果が得られたのではないかと、個人的には満足しています。

しかし、コア内部温度を見るとそうも喜んではいられません。Clockとコア内部温度の相関をVcore系統別に以下のグラフに示します。

Vcore=1.52Vでは確実に-20℃を下回っていたコア温度は、Vcore=1.85Vでは-3℃程度と氷点下維持もやっとという状態です。

冷静に考えれば、定格(2500MHz@Vcore=1.52V)での発熱が61Wなのですから、発熱がClockに比例し電圧の二乗に比例すると考えると、3480MHz@Vcore=1.85Vにおける発熱は、 

 実に118.3Wと約2倍に達する

計算になります。エバポレータとコアの温度差は実に30℃近く・・・・・この温度差をもう少しなんとかしないとどうにもならないですね・・・これについては次回の課題という事で・・・


5. そして常用化へ

さて、Suoerπ104万桁は3480MHz迄通りましたが。あくまでπ104万桁の話です。実際に常用すべく各種ベンチマークが安定して稼動する限界はかなりClockを下げる必要があります。

結果としては、150MHz下げた3330MHzを常用限界としました。

せめてもう少し高い所で動かしたい所ですが、まあこんなものかもしれません。Superπ1677万桁実行中の温度データを以下に示します。

Vore(V) CPU
(Hz)
FSB
(Hz)
PCI div PCI EVA
(℃)
Comp
(℃)
Core
(℃)
凝縮
(Mpa)
蒸発
(Mpa)
M/B
(℃)
M/B裏
(℃)
1.8 3330 133.2 1/4 33.30 -27 84 -2.6 1.5 0.04 35.9 36

ガス冷マシンとしては、2500→3300MHzと3割増しなので少し厳しい所もありますが、個人的にやれる事は全てやったという気もしているので、ある意味満足しています。

まだまだ課題も多いですが、これをもって常用第1弾の完成報告とさせて頂きたいと思います。


6. 独り言

という訳で、なんとか完成迄こぎつけました。思えば、最初にmasamotoさんにご相談をしたのが2001年7月、UltraVapo受領が2001年11月末。ほぼ1年もかかってしまいました。上記の通りまだまだ課題も多い状況ですが、

 世界で1台、自分だけのSuperMachineだっ!

っという満足感は何物にもかえがたい物があります。この感覚、このHPを見て頂ける方には判って貰えます、よね?

masamotoさんには感謝の言葉もございません。
有難うございました。この場を借りて御礼申し上げます。

しかし、やっぱエバとコアの温度差が気になるなあ・・・

 「ええい、そんなことはどうでもいい!
OKは、OKだ!!」

(島本和彦著 「吼えろペン」より)

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