あのヴェルナー・ヘルツォーグが監督の新プロダクションだというので、はるばるボルティモアまで足を運びました。とは言えワシントンから50分位で着くのですが。
歌手はあまり知られていない人ばかりでしたが、なかなかの上出来でした。ワシントンの音楽評論家の1人が「バイロイトやメトロポリタンに劣らない歌唱力」とまで言う位の出来でした。序曲でストリングスが乱れたのと、途中でブラスが調子外れて思わず「どうにかしてよ」と思った以外はオケもまあまあの出来。
ヘルツォーグは数年前にワシントン・オペラでドミンゴが主演の「イル・ガルラニー」(作曲はヴェルディの同世代人だったブラジル人ゴメス)というブラジル・インディアンに関するオペラの新プロダクションの監督をしたのですが、これが期待外れ。しかし今回のプロダクションはとてもシンプルだけど、インパクトがあり、なかなかでした。限られた予算の中でも効果的な演出ができるというよい例でした。
まず、ヴェーヌスブルグでは真紅のシフォンが床も壁も覆い、風にあやしげに揺れ動きヴェーヌスも同じ真紅のシフォンの衣装。タンホイザーは白い衣装。真紅のシフォンがするすると退場するとワルトブルグ城は床は白黒、インテリアは全て黒、登場人物は全員、白とモノトーンの世界というはっきりしたコントラスト。これはビデオで観たハンブルグ・オペラの東京公演の豪華なプロダクション(タンホイザーはルネ・コロ。序曲中、舞台ではヌードダンサーも含めたオージー場面)と対照的でした。サイト運営者岡本氏はこの公演をご覧になり、皇太子も観劇していたことを目撃されているとのこと。
因みにヘルツォーグはオペラを監督するのは嫌いなのだけれど、「パルシファル」ならドイツ文化の象徴とも言える深みがあるので、監督したいとインタビューで言っていました。ワシントン・オペラの来シーズンのオープニングがドミンゴ主演のパルシファルなのだけれど、ヘルツォーグの監督でなくて残念です。
ところでバイロイト劇場が出来たばかりの時、ドイツ国外の人にはそれが何処かよく知られていなかった為、旅行会社がよく間違ってバイロイト行きの客をベイルートに送ってしまったという話をどこかで読みましたが、これは本当なのでしょうか。
最近、モトローラのスカイテルのCMで「指輪」上演中に、客席で携帯電話が鳴り、何とその観客が携帯で話し出したのにブルンヒルデが怒って、やりを投げて携帯に命中させた後、無事に歌い終えて全員が拍手する中、モトローラを持っている客は携帯の文字メッセージを見ているという広告が評判になっています。実際、メトロポリタンなどでオペラ上演中に携帯が鳴って歌手の気が散るという事件が何度か起きているとのこと。
携帯、咳、アメの包み紙、バングルなどの音には皆、もっと注意して欲しいものです。