千林マンション管理士 事務所

裁判例


暴力団事務所としての使用は禁止できるか



シェアハウス禁止規約は共同の利益に反するか
● 平成25年10月24日 東京地裁

概要

本件は、マンションの管理者である債権者が、区分所有者である債務者に対し、本件建物をシェアハウスとして不動産管理会社を通じて建物の入居者を募集し、入居させていることは、管理規約に違反し、他の区分所有者の共同の利益に反しているとして、管理規約または区法57条に基づき、本件建物につき不特定または多数の者が共同して利用するシェアハウスとしての使用を差し止める旨の仮処分命令を求めた事案である

裁判所の判断

争点1.管理組合が承認した改修工事には、間取り変更工事は含まれていないことは明らかで、管理規約第16条に違反している。従って債権者は、間取り工事の実施が管理規約に違反することを理由として、工事の差し止めを求めることはあり得る。しかし、既に間取り工事は完成しており、間取工事完成による建物の状態または用法が管理規約に反し、または他の区分所有者の共同の利益に反するものであれば格別、管理規約または同条違反を直接の根拠として区法57条1項に基づいて建物の用途シェアハウスの制限を求めることはできないというほかない。よって、この点に係る債権者の主張は理由がない。
争点2.使用方法は規約変更後で禁止されるものと解しうる所、債務者は、規約変更を承諾していないことは明らかで、規約変更が債務者の権利に特別の影響を及ぼすべきときの区法31条1項に該当すれば、規約変更は無効となる。そして、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較考量し、当該区分所有関係に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうと解すべきであると判断された。

特別決議が必要な事案
平成16年3月25日 那覇地方裁判所 
21名の区分所有者で構成するマンションにおいて、12台分の駐車場を先着順で特定の区分所有者が優先使用しており、その優先使用を容認し、駐車場使用細則にて今後もその優先使用を維持・存続する内容を設けて普通決議により制定された事に対し、その様な優先使用は共用部分である駐車場の性質に反するため、管理規約で定めるのが相当であるとして、特別決議によらず普通決議で制定した総会決議は無効とされた。

役員選任決議無効確認請求事件
平成13年2月20日 東京地方裁判所 
総会の招集時に議決権行使の代理人は1名に限定していたにもかかわらず、多数の代理人を出席させて総会議事を著しく妨害してなされた理事の選任決議は無効とされた。
また、この無効な理事の選任決議により選任された理事が議案の要領も通知せずに招集し、特別決議の要件も欠いて行われた規約変更決議は不遜罪であるとして、不遜罪決議である規約変更決議を前提とし、管理組合以外の者を理事に選任した総会の決議は無効であるとされた。

総会では予め通知した事項のみしか決議できないか
平成29年1月27日 東京地方裁判所 
原告が、管理組合である被告に対し決議の無効の確認と決議の不存在、又は無効の確認を求めるとともに、違法な決議をされたこと、総会において被告が原告を誹謗中傷する発言を行つたこと、役員の一部が次期役員らに対して配布した文書により社会的評価が低下したこと、総会において理事への立候補が拒絶されたことが不法行為、又は共同不法行為に該当し、民法709条、又は719条1項前段に基づく損害賠償として、10万円及びこれに対する被告の総会が開催された日から支払済みまで、年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案。