実数体の定義−条件
Eにある、
命題E-1:空集合以外の、Xのいかなる部分集合にも、
その部分集合が(集合Xのなかで)上に有界ならば、その部分集合の(集合Xでの)上限が存在する
(∀A⊂X)
( A≠φ かつ (∃ b∈X)(∀ a∈A) (a≦b)
⇒ (∃b*∈X) ( (∀ a∈A) (a≦b* ) かつ (∀b∈X )( (∀ a∈A) (a≦b) ⇒ (b*≦b))))
命題E-2:空集合以外の、Xのいかなる部分集合にも、
その部分集合が(集合Xのなかで)下に有界ならば、その部分集合の(集合Xでの)下限が存在する
(∀A⊂X)
(A≠φ かつ(∃b∈X)(∀a∈A) (b≦a )
⇒ (∃b*∈X) ( (∀ a∈A) (b*≦a) かつ (∀b∈X )( (∀ a∈A) (b≦a ) ⇒b≦b*)))
は同値となることの証明。
命題E-1⇒命題E-2の証明
[神谷浦井『経済学のための数学入門』p.64;吹田・新保『理工系の微分積分学』4;杉浦『解析入門I』8.]
Rの下に有界な任意の空でない部分集合は、必ず最大下界(下限)をもつ。
[神谷浦井『経済学のための数学入門』p.64;吹田・新保『理工系の微分積分学』4;杉浦『解析入門I』8.]
(証明)
Rの下に有界な任意の空でない部分集合Eを考える。
この想定では、すなわち、
K≦x , for ∀x∈E …………(1)
となるKが存在することになり、(「下に有界」の定義より)
KはEの「下界の1つ」ということになる。
ここから、集合
−E={−x | x∈E} …………(2)
を考えてみる。
Eが下に有界なので、−Eは上に有界となる。
なぜなら、(1)より、
−x≦−K, for ∀x∈E
さらに、(2)より、これは以下のように書き換えられる。
−x≦−K, for ∀−x∈−E
これは、−Eが「上に有界」であり、
−Kが「上界のひとつ」である、 …………(3)
ということに他ならない。(「上に有界」「上界」の定義より)
−Eが「上に有界」だとわかったので、
実数の連続性公理が適用され、
部分集合−Eは、上限sup(−E)を持つことになる。
すなわち、任意の−Eの「上界のひとつ」−Kに対して、
[(3)より−Kが−Eの「上界のひとつ」]
sup (−E)≦−K (supの定義より)
上式は以下のように書き換えても同じこと。
K≦−sup (−E)
KはEの任意の「下界の1つ」であった。したがって、上式は、
Eが−sup (−E)という最大下界(下限)をもつことを示している。
(最大下界(下限)の定義より)
∴ inf(E)=―sup(−E) は存在する。
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(
reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目156A.実数の公理系 (pp. 417-418), 168.順序 (pp.440-441). 項目183数:E.実数 (p. 475).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§5定義2.5.13 (p.58)
解析学テキストのなかで。
小平邦彦『解析入門I』(軽装版)岩波書店、2003年、§1.5-a上限下限(pp.36-7.)。
高木貞二『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、§3.数の集合・上限・下限(pp.1-5.)
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、§1実数(pp.1-9).
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、1.1実数(pp.1-7).。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.3-5.
赤攝也『実数論講義』SEG出版、1996年。
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1章。
数理経済学テキストのなかで。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64
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