目覚めよ、女王戦士の翼!

スコーリア戦史

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キャサリン・アサロ 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 山下しゅんや
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011379-3 \820(税別)
ISBN4-15-011380-7 \820(税別)

 "人買い族"こと、ユーブ帝国の一部隊と戦闘の末、機体に損傷を受けてとある惑星に不時着したスコーリアのジャグ戦士、ケルリック。彼が不時着した惑星、コバはスコーリア王圏によって立ち入り禁止惑星に指定されていた星だった。はるかに進んだスコーリア王圏の手が伸びることで自らの社会が大きく変動してしまうことをおそれ、自らの星を封印したコバの社会、そこは女性があらゆる権力を持ち、男性は女性の持ち物として存在を許される世界。スコーリアの優れた遺伝子操作とローン系サイオンという血統により、コバの男性たちとは明らかに異なる容貌を持ったケルリックは、コバの機密の保持、という目的を超えて、コバの権力者たちの興味を引きつけることになる………。

 おなじみ"スコーリア戦史"、第四弾。第一作第三作の主人公、ソズの弟、ケルリックを主人公に女尊男卑の異世界を舞台に繰り広げられる権謀術数のドラマ、しかもその権謀術数の根本にあるのは、クイスと呼ばれるゲーム、ってわけでこれ、一言でいうならパーンのゲーム・プレイヤー、てなお話な訳だ。

 ゲームが実はリアルな世界の完全なシミュレーション、ってネタは何だか最近よく目にするけど、このお話の根っこの部分もそれ。惑星のすべての人が同じゲームについてそれなりに素養があるがゆえ、ゲーム上での結果はゲームのネットワークを通じて現実社会にも影響を与えていく、ということで、「ゲーム・プレイヤー」の世界観をさらに一歩進めたような世界観といえるのかな。ここではゲームの勝敗と言うよりはゲームに向かうプレイヤー側の心の揺らぎとか、そういう部分の方がより強調されてるせいか、前ほど「ルールをはっきりさせろー」ってな気にはなることなく、お話を楽しめた。なかなかこの、読んでる側をやきもきさせるあたりの焦らしのテクニックは、うまいもんだなあと思ってしまう。

 そうはいっても、男性かつオッサンの読者であるオレとしては、ううむと思ってしまうところもあるわけで、しかもその「ううむ」をよくよく考えてみるに、自分が「ううむ」と考えてしまうこと自体、著者の術中にまんまと嵌められてしまっているんじゃないかと思えてしまうあたり、なかなか手強い部分もあるなあと思ってしまった。

 つまりさ、オレらにとって、SF(でもファンタジーでもいいんだけど)に登場する女の子ってのは、身につけてる布地の量が少ないほどイイ!って思ってしまいがちだけど、それはオレらが男だからだよな。ついでに、オレらにとってはフェミニズム、つーものの流れにしたって、その流れを流れとして認識することはできるけれども、んじゃあ女性作家がなぜフェミニズムSF(一応限定しますが)、つーものを提唱するのか、その根っこの部分は、これはもう生理の問題として、理解不能なわけだよな。このお話、その辺を、やや揶揄も込めた筆致ながら鋭く突いてくるんである。単純に「まあ男は女をひん剥きたい以上、女だって男をひん剥きたいと思うよなー」ですまされないものを感じてしまうわけなんであった。勘ぐり過ぎか?いやしかし………。

01/12/05

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