制覇せよ、光輝の海を!

スコーリア戦史

表紙

キャサリン・アサロ 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 山下しゅんや
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011322-X \800(税別)
ISBN4-15-011323-8 \800(税別)

 スコーリアとユーブ。宇宙の二大勢力のそれぞれ王位継承権を持つ二人。スコーリアの王女にして美貌のサイボーグ戦士、ソズとユーブ皇帝の息子にして冷酷無比なユーブ貴族にはあり得ないほどに穏やかで、優しいジェイブリオル。ふたりは偶然出会い、互いに惹かれるものを感じ、そして国よりも生涯の伴侶を選び、巧妙にその痕跡を隠して未踏の惑星のアダムとイブになった。それから15年、知られざる惑星で伸びやかに暮らすソズ、ジェイブリオル、そして彼らの子供たちとは裏腹に、スコーリアとユーブの反目はさらに激化。ついにスコーリア攻略の重要な情報を入手することに成功したユーブは、さらにその作戦のなかで、ジェイブリオルが生きていることまでも察知することに成功する。窮地に陥るスコーリア、再び引き裂かれるソズとジェイブリオル。宇宙の覇権をめぐる大戦争が幕をあけようとしていた………

 てんで「スコーリア戦史」、第一弾「飛翔せよ、閃光の虚空へ!」から直接繋がるラブロマンス・スペースオペラシリーズ第三弾。決め手を次々と封じられ、勇猛で卓越した軍人である王も失い戦意喪失するスコーリアの首脳たち。おりしも彼らが見つめるモニタには敵国ユーブの新皇帝即位の式典が華々しく報じられている。と、王の死によって作動を停止していたはずの司令部の各装置が突然次々と作動を開始する。次々と光と音を取り戻していくスコーリア中枢。あっけにとられるスコーリア高官たちの視線の先には、光が戻った通路をさっそうと歩いてくる完璧なプロポーションの美女。朗々とユーブの栄光をがなりたてるモニターに一瞥をくれた彼女(もちろんソズ)は、その映像に向かって言い放つ。「笑わせるんじゃないわよ、くずども。」ううん、かっこええ(^o^)

 まことにこの、日本のアニメを参考にしてますねあなた(^^;)っていいたくなっちゃうようなこんな見せ場、万単位の宇宙船同士の艦隊戦、広大な宇宙空間を瞬時に繋ぐ超感ウェブ、宇宙船の航行、さらには戦闘に重要な役割をはたすクラインの壷の概念と、SF的な小道具満載で、やってるのはごく古典的なロミオとジュリエットなのがすげーです(^o^)。が、そこは(どこ)女流作家のスペースオペラ、男の読者が安易に予想している結末とは一味違うオチの付け方をしているあたりも見逃せません。こういうオチの付け方、男性作家はやらないかもしれないな。

 いやこいつぁ良い。かなり広い層のSFファンに気に入ってもらえる作品じゃないでしょうかね。前作を読んで予備知識を仕入れてから読む(ほうがいいと思いますですよ)もよし、いきなりこれから読みはじめるもよし。カバーイラストは好みが別れるところ(^^;)でしょうが、中身はなかなか、いけてます(^o^)。

00/8/30

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)