育児介護休業法が改正され、段階的施行を経て2022年10月から完全施行へ
育児介護休業法は、2022年4月と10月の段階的施行を得て改正されました。改正の目玉は「産後パパ育休(出生時育児休業)の創設」と「育児休業の分割取得」です。
1 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の事業主の義務化
(1) 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業と産後パパ育休の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
(2) 妊娠・出産の申出をした労働者(本人または配偶者)に対する個別の周知・意向確認の措置
本人または配偶者の妊娠・出産等を申出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を、①面談 ②書面交付
③FAX ④電子メール等のいずれかの方法により個別に行わなければなりません。
① 育児休業・産後パパ育休に関する制度
② 育児休業・産後パパ育休の申出先
③ 育児休業給付に関すること
④ 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取扱い
(参考)個別周知・意向確認書記載例/意向確認ガイドブック
2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者が育児休業を取得する場合の、①引き続き雇用された期間が1年以上、②1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないという条件が、①の要件を撤廃し②のみに緩和されました。ただし、①については、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可能です。
3 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
(Q&A参照)産後パパ育休(出生時育児休業)とは何か
4 育児休業の分割取得
(1) 取得の際にそれぞれ申出ることにより分割して2回取得可能となりました。
(2) 1歳以降の延長について、育休開始日は1歳または1歳半の時点に限定されたいたものが、育休開始日が柔軟化されました。
(3) 1歳以降の再取得はできないとされていたものが、1歳以降の育児休業が、他の子についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業または新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したときは、再度育児休業を取得できるとされました。
5 育児休業等を理由とする不利益取り扱いの禁止・ハラスメント防止
育児休業等の申出・取得を理由に、事業主が解雇や退職強要、正社員からパートへの契約変更等の不利益な取り扱いを行うことは禁止されていますが、妊娠・出産の申出をしたこと、産後パパ育休の申し出・取得、産後パパ育休期間中の就業を申出・同意しなかったこと等を理由とする不利益な取扱いも禁止されました。
□ 令和5年4月1日改正
・ 育児休業取得状況の公表の義務化
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。
● 厚労省のサイト
● 育児休業・介護休業の規定例・社内様式例
● 改正育児・介護休業法に関するQ&A
育児休業制度の種類
□ 育児休業
前項参照
□ 子の看護休暇
子の看護休暇制度とは何か
□ 所定労働時間の制限
1 内容
3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合に「所定労働時間を超えて労働させてはならない」とする制度
2 対象労働者
3歳に満たない子を養育する労働者(日雇労働者を除く。男女の区別はない。)
3 適用除外者
労使協定で適用除外とされた者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。なお、時間労働の制限とは重複できない。
□ 時間外労働の制限
1 内容
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合に「1か月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない」とする制度
2 対象労働者
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日雇労働者を除く。男女の区別はない。)
3 適用除外者
(1) 雇用期間が1年未満の者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。なお、所定外労働の制限とは重複できない。
□ 深夜業の制限
1 内容
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合に「午後10時から午前1時までの深夜労働をさせてはならない」とする制度
2 対象労働者
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日雇労働者を除く。男女の区別はない。)
3 適用除外者
(1) 雇用期間が1年未満の者
(2) 深夜に保育できる次のいずれにも該当する16歳以上の同居の家族がいる者
・深夜に就業していない(深夜における就業日数が1月について1日以下の場合を含む)
・傷病、心身の障害により子の保育が困難な状態でない
・6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定であるか、産後8週間を経過しない者でない
(3) 週の所定労働日数が2日以下の者
(4) 所定労働時間の全てが深夜にある者
4 申出
1回につき、1月以上6か月以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。
□ 育児短時間勤務
1 内容
3歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしていない者が申出することにより「1日の所定労働時間を原則として6時間」とする制度
2 対象労働者
3歳に満たない子を養育する労働者(日雇労働者を除く。男女の区別はない。)
3 適用除外者
(1) 労使協定で適用除外とされた者
(2) 1日の所定労働時間が6時間以下である者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として短縮開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。
育児休業が適用されない労働者もいる
育児休業制度については、(1)法の規定により適用除外とされる労働者、(2)労使協定を締結することにより育児休業等の申出を拒むことができる労働者があります。ただし、いずれの場合も日雇労働者は対象となりません。
□ 育児休業
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 子が1歳6か月(2歳までの育児休業の申出にあっては2歳)を経過するまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかな有期契約労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 雇用期間が1年未満の労働者
(2) 申出の日から1年(1歳を超える休業の申出にあっては6か月)以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
(3) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 子の看護休暇
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
なし。
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 雇用期間が6か月未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 所定外労働の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
なし
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 時間外労働の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
なし
□ 深夜業の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 請求に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する労働者
イ 深夜において就業していない(1か月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)
ロ 心身の状況が請求に係る子の保育又は家族の介護をすることができる
ハ 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14 週間)以内に出産予定でなく、かつ産後8週間以内でない
(3) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
(4) 所定労働時間の全てが深夜にある労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
なし
□ 育児短時間勤務
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 1日の所定労働時間が6時間以下である労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
(3) 業務の性質または業務の実施体制に照らして所定労働時間の短縮措置を講じることが困難と認められる業務として別に定める業務に従事する労働者
ただし、(3)について労使協定により適用除外とする場合は、その「代替措置」が必要となります。
(参考Q&A)育児短時間勤務の代替措置とは何か
育児休業を1歳6か月まで延長が認められる場合がある
□ 子が1歳6か月に達するまで育児休業が認められる要件
(1) 本人または配偶者が、子の1歳到達日に育児休業をしていること
(2) 次のいずれかの事情があること
ア 育児休業の申出に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込を行っているが、その子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
イ 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者であって、その子が1歳に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった者が以下のいずれかに該当した場合
a 死亡したとき
b 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
c 婚約の解消その他の事情により配偶者が育児休業に係る子と同居しないこととなったとき
d 6週間(多胎妊娠の場合にあたっては14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき
□ 育児休業給付金の延長申請(会社がハローワークへ)
(1) 最後の育児休業給付金支給申請の際に、育児休業給付金支給申請書の「17 支給対象となる期間の延長事由-期間」欄に延長事由および延長する期間を記入し提出します。
(2) 添付書類
前項(2)アの場合…市町村が発行した保育所の入所不承諾の通知書など当面保育所において保育が行われない事実を証明することができる書類
同(2)イa,cの場合…世帯全員について記載された住民票の写しおよび母子健康手帳
同(2)イbの場合…保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等
同(2)イdの場合…母子健康手帳
□ 社会保険料の免除申請(会社が事務センターへ)
延長前の育児休業期間中に、事務センター宛に「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書(延長)」により、社会保険料の免除延長申請をします。
(申請書ダウンロード)年金機構のサイト
育児休業を1歳6か月まで延長後に更に2歳まで延長できる場合もある
□ ポイント
(1) 延長できる理由(次のいずれかの事情があること)
① 育児休業の申出に係る子について、保育所等(無認可施設は除く)における保育の利用を希望し、申込みを行っ
ているが、その子が1歳6か月に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
② 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者(内縁関係を含む)であって、その子が1歳6か月に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった人が死亡、負傷、疾病等に該当した場合
(2) 子が1歳に達する日の翌日において該当した延長理由に関わらず、改めて確認書類の提出が必要になります。
□ 確認書類
(1) 市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書など当面保育所等において保育が行われない事実を証明することができる書類
(2) 世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳、保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書など
(詳細)厚労省のリーフレット
1歳以降の延長について開始日の柔軟化
○ 2022年10月1日施行
(改正前)1歳以降に延長した場合の育児休業の開始日について、1歳から1歳6か月または1歳6か月から2歳までの各期間の初日に限定。
(改正後)一定の条件のもと、期間の途中でも夫婦交替での育児休業の取得が可能。
詳しくは、厚労省のリーフレット(支給申請書の記載例あり)をご覧ください。
パパ・ママ育休プラスとは何か
育児休業の期間は、子が出生した日から1歳に達する日までですが、パパ・ママ育休プラスとは、父親と母親が共に育児休業を取得する場合は、1歳2か月まで延長されるという制度です。
□ 制度の概要
(1) 両親ともに育児休業する場合で、次のいずれにも該当する場合には、育児休業の対象となる子の年齢が、原則1歳に満たない子から原則1歳2か月に満たない子に延長されます。
ア 育児休業を取得しようとする母が、子の1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業をしていること
イ 母の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
ウ 母の育児休業開始予定日が、父がしている育児休業の初日以降であること
(2) 育児休業が取得できる期間(女性の場合は、出生日以後の産前・産後休業期間含む。)は1年間が限度です。
□ ポイント
(1) パパ・ママ育休プラスにより育児休業を延長したとしても、本人が育児休業を1年2か月取得できるということではなく、本人の育児休業の期間は1年が限度です。要約すれば、パパ・ママの育児休業開始日をずらすことにより、子が1歳2か月になるまで育児休業期間を延ばせるという制度です。、具体的には、厚労省の「パパ・ママ育休プラスの場合の具体例」を見ると分かりやすいと思います。
(2) 両親の育児休業期間が重複することも可能です。
(3) 両親の育児休業期間が連続していることを要件としていません。
(4) 婚姻の届出をしていない事実婚の場合でも、パパ・ママ育休プラスを利用できます。
(5) パパ・ママ育休プラス期間においても、育児休業給付金を受給できます。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは何か
パパ休暇に代わるべきものとして2022年10月に創設された制度で、母の産後休業期間中等に、父が育児休業とは別に取得できる制度です。
(1) 対象期間、取得可能日数:子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
(2) 申出期限:原則休業の2週間前まで
(3) 分割取得:分割して2回取得可能 (初めにまとめて申し出ることが必要)
(4) 休業中の就業:労使協定を締結している場合は労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。
(就業可能日等の上限あり)
・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満
(5) 産後パパ育休も育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象です。休業中に就業日がある場合は、就業日数 が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下である場合に、給付の対象となります。
(詳細)厚労省のサイト
子の看護休暇制度とは何か
小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、病気・ケガをした子の看護のため、または子に予防接種や健康診断を受けさせるために「子の看護休暇」を取得できます。
□ 子の看護休暇制度のポイント
(1) 労働者からの申出は口頭でもかまいません。
(2) 事業主は子が病気・ケガをしたこと等についての証明を労働者に求めることができますが、労働者が証明書の提出を拒んだからといって、看護休暇を与えないことはできません。また、業務の繁忙等を理由としての看護休暇の申出も拒否できないとされます。
(3) 子の看護休暇を有給とするか無給とするかは事業主の任意です。
(4) 時間単位の取得も可能です。
【注】子の看護休暇制度については、入社6か月未満の労働者および週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。
■ 時間単位の取得について
(詳細)厚労省のリーフレット
【解説】子の看護休暇は、負傷や疾病にかかった子の世話や疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇であり、年次有給休暇とは別に与える必要があります。「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種や健康診断を受けさせることをいい、予防接種には予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。
なお、子の看護休暇を有給とするか無給とするかは事業主の任意です。また時間単位の取得も可能です。具体的な取扱いは、厚労省の「 Q&A」をご覧ください。
育児短時間勤務の代替措置とは何か
育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する労働者の申出により、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなりません(1時間の所定労働時間が6時間以下の従業員を除く)。が、短時間勤務制度を講ずることが困難な業務に従事する労働者については、労使協定により次のいずれかの措置を講じなければならないとしています。
(1) 育児休業に関する制度に準ずる措置
(2) フレックスタイム制度
(3) 始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ(時差出勤の制度)
(4) 労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
□ 業務の性質又は実施体制に照らして短時間勤務制度を講ずることが困難な業務とは(例示)
(1) 業務の性質に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
→国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務
(2) 業務の実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
→労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務
(3) 業務の性質及び実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務
・流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務
・交替制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務
・個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務
育児休業の申出から復帰までの事務手続
1 健康保険・厚生年金保険育児休業取得者申出書(新規・延長)…事業主が事務センターへ
(1) 従業員から育児休業の申出を受けた事業主が日本年金機構に申出を行います。
(2) 申出により、健康保険・厚生年金保険料が被保険者・事業主とも、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)まで免除されます。なお、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合も免除となります。
また、賞与・期末手当等にかかる保険料についても免除されますが、当該賞与月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除の対象となります。
(詳細)年金機構のサイト
(参考)令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されます
2 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書&育児休業給付受給資格確認票/(初回)育児休業給付金支給申請書…本人がハローワークへ(本人の同意書を添付し、事業主が届け出ることも可)
(1) 通常は、育児休業を開始し2か月を経過後(休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで)に申請します。
(2) 従業員のマイナンバーが必要です。
(詳細)厚労省のリーフレット(様式)ハローワークのサイト
(参考)令和4年10月から、雇用継続給付、育児休業給付の手続を事業主等が行う場合、同意書によって被保険者記名を省略できます(同意書の記載例)
(参考)1歳以降の延長について、柔軟に育児休業を開始できるようになります
(参考)令和3年9月1日から、育児休業給付に関する被保険者期間の要件を一部変更します
(参考)令和3年8月1日から、育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金の手続の際、通帳等の写しを原則不要にします
[参考Q&A]
・育児休業を1歳6か月まで延長が認められる場合がある
・育児休業を1歳6か月まで延長後に更に2歳まで延長できる場合もある
(出生時育児休業の場合)
(1) 申請書類:雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書/育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書…事業主がハローワークへ
(2) 提出期限:子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は当該出産予定日)から8週間を経過する日の翌日から、当該日から2か月を経過する日の属する月の末日まで
(参考Q&A)産後パパ育休(出生時育児休業)とは何か
3 育児休業給付金支給申請書…本人がハローワークへ(本人の同意書を添付し、事業主が届け出ることも可)
(1) 2回目以降は初回と異なり申請書のみの提出となります。
(2) 前回受理した通知書の記載された提出期限までに、2か月ごとに申請します。
4 健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者終了届…事業主が事務センターへ
(1) 育児休業取得者申出書により届出た期間とおりに育児休業を終了する場合は、この届出は必要ありませんが、予定より早く休業が終了した場合はこの届出を行います。
(2) 保険料免除は、休業が終了する日の属する月の前月分までとなります。
(詳細)年金機構のサイト
5 健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届…事業主が事務センターへ
(1) 育児休業終了日の翌日の属する月から3か月間に受けた報酬が、1等級以上の差が生じた場合に届出ます。
(2) 育児休業終了日の翌日の属する月から起算して4か月目から、標準報酬月額が改定されます。
(3) 被保険者本人以外の事業主等が電子申請を行う場合は「事業主を代理とする旨の委任状」の添付が必要です。
(詳細)年金機構のサイト
6 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届…事業主が事務センターへ
(1) 3歳未満の子を養育する被保険者が、賃金の減少により標準報酬月額が下がった場合に被保険者の申出により提出します。
(2) 子が3歳に達した場合または退職して厚生年金保険の被保険者でなくなった場合は終了届の必要はありませんが、3歳未満の子を養育しなくなったとき又は3歳未満の子が死亡したときは終了届が必要となります。
(詳細)年金機構のサイト
(参考Q&A)働いている女性(健康保険の被保険者)が出産したときの手続
育児休業期間中の就労について
育児休業制度においては、育児休業期間中の就労は想定していないとしていますが、労使の話合いにより一時的に・臨時的に就労することは可能としています。
□ ポイント
(1) 使用者と労働者がの合意が前提で、事業主の一方的な指示により就労させることはできない。
(2) 就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給される。
(3) 恒常的・定期的に就労させる場合は、育児休業をしていることにはならない。
(詳細)厚労省のリーフレット
傷病手当金と育児休業給付金は併給できるか
健康保険の傷病手当金と雇用保険の育児休業給付金については、併給調整の規定はありませんので併給可能です。
育児短時間勤務と労働基準法の育児時間との併用もできる
育児介護休業法の育児短時間勤務と労働基準法の育児時間は異なる制度のため、併用は可能です。
介護休業とは何か
介護休業とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するためにする休業をいいます。
□ 介護休業できる労働者
(1) 介護休業できるのは、要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。
(2) 有期契約労働者については、申出時点において、取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでない場合は、介護休業をすることができます。
(3) 介護休業が適用されない労働者もいる
□ 対象家族の範囲
配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫および配偶者の父母です。
□ 常時介護を必要とする状態に関する判断基準
(詳細)厚労省のサイト
□ 介護休業できる期間
申出ることのできる休業は連続したひとまとまりの期間の休業で、対象家族1人につき3回まで、かつ通算して93日までです。
□ 介護休業の申出
介護休業を行う場合には、介護休業を開始しようとする日の2週間前までに「介護休業申出書」を事業主に提出しなければなりません。
介護休業制度の種類
□ 介護休業
前項参照
□ 介護休暇
介護休暇とは何か
□ 所定外労働の制限
1 内容
要介護状態にある家族を介護する労働者が当該家族を介護するために請求した場合に「所定労働時間を超えて労働させてはならない」とする制度
2 対象労働者
要介護状態にある家族を介護する労働者(日雇労働者を除く。)
3 適用除外者
労使協定で適用除外とされた者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。なお、時間労働の制限とは重複できない。
□ 時間外労働の制限
1 内容
要介護状態にある家族を介護する労働者が当該家族を介護するために請求した場合に「1か月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない」とする制度
2 対象労働者
要介護状態にある家族を介護する労働者(日雇労働者を除く。)
3 適用除外者
(1) 雇用期間が1年未満の者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。なお、所定外労働の制限とは重複できない。
□ 深夜業の制限
1 内容
要介護状態にある家族を介護する労働者が当該家族を介護するために請求した場合に「午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはならない」とする制度
2 対象労働者
要介護状態にある家族を介護する労働者(日雇労働者を除く。)
3 適用除外者
(1) 入社1年未満の従業員
(2) 請求に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する従業員
イ 深夜において就業していない(1か月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)
ロ 心身の状況が請求に係る家族の介護をすることができる
ハ 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産予定でなく、かつ産後8週間以内でない
(3) 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
(4) 所定労働時間の全部が深夜にある従業員
4 申出
1回につき、1月以上6か月以内の期間について、原則として制限開始予定日の1か月前までに、書面により事業主に申出なければならない。
□ 介護短時間勤務
1 内容
事業主は、(1)短時間勤務の制度、(2)フレックスタイム制、(3)始業・終業時刻の繰上げ・ 繰下げ、(4)労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度のうちのいずれかを講じなければならないという制度。
介護休業とは別に対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上利用((4)を除く。)できる措置としなければなりません。
2 対象労働者
要介護状態にある家族を介護する労働者(日雇労働者を除く。)
3 適用除外者
労使協定で適用除外とされた者
4 申出
1回につき、1月以上1年以内の期間について、原則として短縮開始予定日の2週間前までに、書面により事業主に申出なければならない。
介護休業が適用されない労働者もいる
育児休業制度については、(1)法の規定により適用除外とされる労働者、(2)労使協定を締結することにより育児休業等の申出を拒むことができる労働者、があります。
【注】いずれの場合も、日雇労働者は対象となりません。
□ 介護休業
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、 更新されないことが明らかな有期契約労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 雇用期間が1年未満の労働者
(2) 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
(3) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 介護休暇
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
なし。
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 雇用期間が6か月未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 所定外労働の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
なし
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
□ 時間外労働の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
なし
□ 深夜業の制限
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 請求に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する労働者
イ 深夜において就業していない(1か月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)
ロ 心身の状況が請求に係る子の保育又は家族の介護をすることができる
ハ 6 週間(多胎妊娠の場合にあっては、14 週間)以内に出産予定でなく、かつ産後 8 週間以内でない
(3) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
(4) 所定労働時間の全てが深夜にある労働者
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
なし
□ 介護短時間勤務
■ 法の規定により適用除外とされる労働者
なし
■ 労使協定を締結することにより申出を拒むことができる労働者
(1) 入社1年未満の労働者
(2) 週の所定労働日数が2日以下の労働者
介護休暇とは何か
要介護状態にある家族の介護その他の世話を行う労働者が申し出た場合は、対象家族が1人の場合は1年度に5日まで、2人以上の場合は1年度に10日まで、当該世話を行うための休暇を取得させる制度です。
□ 介護休暇制度のポイント
(1) 労働者からの申出は口頭でもかまいません。
(2) 業務の繁忙等を理由としての介護休暇の申出を拒否できません。
(3) 突発的な事態に対応できるよう、休暇取得当日の申出も認められます。
(4) 1年度とは、毎年4月1日から翌年3月31日までとなりますが、事業所の実情にあわせて、1月1日~12月31日のような定めをしても差し支えありません。
(5) 介護休暇の付与日数は、申出時点の要介護状態にある家族の人数で判断されますので、対象となる家族が2人以上いる場合には、家族一人につき5日間までしか取得できないものでは
なく、同一の家族について10日間取得することも可能とする必要があります。
(6) 介護休暇は、1日単位又は時間単位で取得することができます。ただし、時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者として労使協定の締結により除外された者については、時間単位での取得はできません。
(7) 始業の時刻から連続せず、かつ終業の時刻まで連続しない時間単位での休暇の取得(中抜け)も認められます。
(8) 介護休暇を有給とするか無給とするか事業主の任意です。
(9) 要介護状態および対象家族の考え方は介護休業と同じです。
【注】介護休暇制度については、入社6か月未満の労働者および週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。
介護休業給付金
介護休業期間中は、会社は賃金を支給しないケースが一般的ですが、介護休業期間中に一定の要件を満たすと、雇用保険から介護休業給付金の支給を受けることができます。
介護休業給付金の支給申請は、本人がハローワークへ申請します(本人の同意書を添付し、事業主が届け出ることも可)。
(詳細)ハローワークのサイト
(参考)令和3年8月1日から、育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金の手続の際、通帳等の写しを原則不要にします
■ 支給額
原則として休業開始時賃金日額×支給日数×67%
要介護状態とはどんな状態をいうのか
介護休業とは「労働者がその要介護状態(負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するためにする休業」をいいますが、常時介護を必要とする状態の如何については、通達により判断基準を示しています。
■ 常時介護を必要とする状態に関する判断基準
「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合であること。
(1) 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること
(2) 基準で示す①~⑫の状態のうち、2が2以上または3が1つ以上該当し、かつその状態が継続すると認められること
□ 介護休業を認めるにあたり、会社の判断はどうするのか
育児・介護休業法では、労働者が介護休業の申出を行った場合には、事業主は原則としてそれを拒むことはできないとしますが、介護休業を認めるにあたり会社の判断はどうするかの問題があります。
・判断基準(1)のケース
会社が要介護状態であるか否かを判断するに際し、医師・保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士が発行する診断書等の証明書の提出を求めることは可能とされますので、判断は容易と思われます。
・判断基準(2)のケース
医師等による証明書の提出が困難なことも予想されますので、必要に応じ第三者の証明でも可能とするような柔軟な対応も必要と思われます。
育児・介護休業労働者への不利益扱いは禁止される
育児休業や介護休業および子の看護休業の申出をしたこと又は取得したことを理由として、労働者に対して以下のような取り扱いを行うことは禁止されます。
(1) 解雇すること
(2) 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
(3) あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、その回数を引き下げること
(4) 退職または正社員をパートタイム労働者等の非正社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
(5) 自宅待機を命ずること
(6) 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限または所定外労働の短縮措置等を適用すること
(7) 降格させること
(8) 減給し、または賞与等において不利益な評価を行うこと
(9) 不利益な配置の変更を行うこと
(10) 就業環境を害すること
育児・介護休業期間は年次有給休暇の出勤率の算定対象期間から除外できない
年次有給休暇の取得条件として、過去1年間(採用時は6か月間)に「全労働日」の8割以上を出勤することが必要ですが、年次有給休暇の出勤率の算定に当たって、次の休業した期間は出勤したとみなされ、全労働日から除外できないことになっています。
(1) 業務上のケガや病気で療養のために休業した期間
(2) 育児・介護休業法に基づく育児・介護休業をした期間
(3) 産前・産後の休業期間
(4) 年次有給休暇を取得した期間
子の看護休暇・介護休暇を年次有給休暇の出勤率算定対象とするか否かは自由
子の看護休暇・介護休暇を年次有給休暇の出勤率の算定対象期間とするか否かについては、育児・介護休業期間と異なり特に規定されたものはありませんので、子の看護休暇、介護休暇の期間について、年次有給休暇の出勤率の算定に当たっては、欠勤と見なしても差し支えないとされています。
育児・介護休業法による休業等で賃金を支給するか否かは会社の自由
育児介護休業法では、賃金の支給についての規定はありません。
したがって、育児・介護休業や子の看護休暇・介護休暇を取得した日を無給とすること、所定労働時間の短縮措置により短縮された時間分を減給すること、退職金や賞与の算定に当たり休業をした期間を日割りで算定対象期間から控除するなども問題ありません。これらの支給の有無等については、各企業で決定することになります。
なお、育児休業・介護休業の場合はハローワークから給付金が支給されますが、賃金が支給されると給付金が支給調整されますので、無給としておく会社が多いようです。
管理監督者と育児・介護休業法との関係はどうなっている
厚生労働省の通達をみると、(1)育児休業に係る所定外労働の制限、(2)育児休業に係る時間外労働の制限、(3)3歳に満たない子を養育する労働者に関する所定労働時間の短縮措置は、何れも管理監督者は対象外であるとしています。以下に、該当の通達文を抜粋しました。
なお、深夜労働の制限ついては通達に記載がなく、また労働基準法41条においても、深夜労働は労働時間等に関する規定の適用除外としていないことから、管理監督者であっても対象となると思われます。
■ 所定外労働の制限
「労働者」のうち、労働基準法第41 条に規定する者(①労働基準法別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者、②監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者、③監視又は断続的労働に従事する者)については、労働時間等に関する規定が適用除外されていることから、所定外労働の制限の対象外であること。
このうち、労働基準法第41条第2号に定める管理監督者については、同法の解釈として、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであることとされていること。したがって、職場で「管理職」として取り扱われている者であっても、同号の管理監督者に当たらない場合には、所定外労働の制限の対象となること。
■ 時間外労働の制限
「労働者」のうち、労働基準法第41条に規定する者(①労働基準法別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者、②監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者、③監視又は断続的労働に従事する者)については、そもそも労働基準法上の労働時間に関する規定の適用がないため、対象にはなり得ないものであること。
このうち、労働基準法第41条第2号に定める管理監督者については、同法の解釈として、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであることとされていること。したがって、職場で「管理職」として取り扱われている者であっても、同号の管理監督者に当たらない場合には、時間外労働の制限の対象となること。
■ 3歳に満たない子を養育する労働者に関する所定労働時間の短縮措置
「労働者」のうち、労働基準法第41条に規定する者については、労働時間等に関する規定が適用除外されていることから、育児のための所定労働時間の短縮措置の義務の対象外であること。このうち、労働基準法第41条第2号に定める管理監督者については、同法の解釈として、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあ
る者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであることとされていること。したがって、職場で「管理職」として取り扱われている者であっても、同号の管理監督者に当たらない場合には、育児のための所定労働時間の短縮措置の義務の対象となること。
また、同号の管理監督者であっても、法第23条第1項の措置とは別に、同項の育児のための所定労働時間の短縮措置に準じた制度を導入することは可能であり、こうした者の仕事と子育ての両立を図る観点からはむしろ望ましいものであること。
(参考Q&A)労働時間等の適用除外とされる管理監督者の範囲は広くない
パワハラを規制する法律
いままで、パワハラを規制する法律は存在しませんでしたが、改正労働施策総合推進法にパワハラ防止措置に関する条文が追加されたことにより、パワハラを規制する法律が令和2年6月1日に施行されました。なお、中小企業は令和4年3月31日までは努力義務となっておましたが、令和4年4月1日以降は全面施行となりました。
【解説】労働施策総合推進法30条の2では、パワハラにより労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主は労働者からの相談に応じ、雇用管理上必要な措置を講じなければならないとするとともに、相談を行ったこと等により不利益な取扱いをしてはならないとしています。改正法の重要条文は、この30条の2第1項および第2項で、具体的な取扱いは第3項に規定する指針によります。指針の具体的内容は、次項のQ&Aをご覧ください。
30条の3では、パワハラに関し事業主および労働者の責務として努力義務を課しています。
36条では事業主に必要な報告を求めることができるとし、罰則規定はありませんが、33条による勧告に従わなかった場合は企業名を公表することができるとしています。
●改正労働施策総合推進法(主に、事業主に係る部分を抜粋)
(雇用管理上の措置等)
第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。(第4項~第6項略)
(国、事業主及び労働者の責務)
第30条の3(第1項略)
2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(そのものが法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うよう努めなければならない。
4 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第1項の措置に協力するよう努めなければならない。
(助言、指導及び勧告並びに公表)
第33条 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告することができる。
2 厚生労働大臣は、第30条の2第1項及び第2項の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、しその勧告を受けたものがこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。
(報告の請求)
第36条 厚生労働大臣は、事業主から第30条の2第1項及び第2項の規定の施行に関し必要な事項について報告を求めることができる。
2022年4月からのパワハラ防止法の中小企業への拡大により会社が行うべきこと
大企業のみを対処としていた、パワハラを規制するパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)の施行が、222年4月1日から中小企業にも拡大されました。
企業が行うべきパワハラ防止対策は、法により「職場におけるハラスメント関係指針 」に委任されており、会社が行わなければならない具体的な事項を指針で記載しています。なお、この法律には罰則規定はありませんが、厚生労働大臣の勧告に従わない場合は企業名公表ができるとされています。
以下、指針を参照しながらご確認ください。
□ 会社が行うべきこと
1 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
(1) 職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2) 職場におけるパワハラに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
【注】具体的な周知・啓発例は、指針の7ページを参照
2 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。
(1) 相談への対応のための相談窓口を定め、労働者に周知すること。
(2) 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
【注】具体的な体制の整備例は、指針の8ページを参照
3 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(1) 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(2) (1)により、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
(3) (1)により、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
(4) 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
【注】具体的な事後の迅速かつ適切な対応例は、指針の9ページを参照
4 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
(1) 職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、
その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。
(2) 労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
【注】具体的な講ずべき措置例は、指針の10ページを参照
なお、講ずべき措置に加え、指針の11ページ以降に望ましい例も記載していますので、ご参照ください。
パワハラとは何か
パワハラ指針(R2.1.15厚生労働省告示第5号)では、優越的な関係を背景として行われたものであることを前提として、職場におけるパワハラに該当すると考えられる例を列挙しています。以下に一部を掲載しました。
□ 職場におけるパワーハラスメントの内容
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
□ 具体例
職場におけるパワハラの具体例として、(1)身体的な攻撃、(2)精神的な攻撃、(3)人間関係からの切り離し、(4)過大な要求、(5)過小な要求、(6)個の侵害とし、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言(2012.3.15)」の内容を踏襲しています。
(1) 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ) 該当すると考えられる例
① 殴打、足蹴りを行うこと ② 相手に物を投げつけること
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 誤ってぶつかること
(2) 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ) 該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
(3) 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(イ) 該当すると考えられる例
① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること
② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること
② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること
(4) 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(イ) 該当すると考えられる例
① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること
② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること
③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること
(5) 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(イ) 該当すると考えられる例
① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること
(6) 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(イ) 該当すると考えられる例
① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと
なお、厚生労働省ではハラスメント対策の総合サイト「明るい職場応援団」を開設し、企業におけるハラスメント対策をバックアップしています。
マタハラとは何か
「マタハラ」とはマタニティー・ハラスメントの略で、働く女性が妊娠・出産をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、妊娠・出産を理由とした解雇や雇い止めで不利益を被ったりするなどの不当な扱いを意味する言葉です。
男女雇用機会均等法では、婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いを禁止しています。さらに「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成29年1月1日)」を制定し、解釈例規等を変更するなど、マタハラの防止を図っています。
●事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針
●妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達について
●(参考条文)男女雇用機会均等法9条
1 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
旅館業法が改正され、カスハラは宿泊拒否も可能に
○ 2023年12月13日改正(詳細)厚労省のサイト
(改正の概要)
1 宿泊拒否事由の追加
2 感染防止対策の充実
3 差別防止の更なる徹底等
4 事業譲渡に係る手続の整備
【解説】特筆すべきは上記1の追加です。営業者が宿泊しようとする者から無制限に対応を強いられた場合(いわゆるカスハラ)には、宿泊者の衛生に必要な措置をはじめ、旅館業の施設において本来提供すべきサー
ビスが提供できず、旅館業法上求められる業務の遂行に支障を来すおそれがあることから、法改正で新たに宿泊を拒むことができる事由として特定要求行為が行われたときが追加されました。