スプーナリズム:スプーナーさんに乾杯

作成日:2000-03-19
最終更新日:

はじめに

スプーナリズムに関するネタを集めた「スプーナーさんに乾杯」なるページを開設しました。 このページは、 巷にある音韻交替(スプーナリズム)の例を拾って集めて展示することだけを目的としています。 ここにない面白い例、あるいは面白いWebサイトがありましたら、 まりんきょまでお知らせ下さい。 お待ちしています。メールアドレスは次の通りです。

更新情報

スプーナリズムとは

スプーナリズム(spoonerism)とは、二つ以上の音節が連続するとき、 その前後で音が交代する現象のことをいいます。 なぜ「スプーナリズム」の名前がついたかというと、 スプーナー ( William Archibal Spooner )が この手の言い間違いを絶えずしていたからなのだそうです。スプーナーさんは オックスフォード大学、ニューカレッジの学長という要職を勤めていましたが、 ある式典で、"Conquering Kings their titles take."と いうべきところを、"Kinkering Congs ..."といったのだそうです。 これがスプーナリズムの始まりとされています。 しかし、後の研究によれば、スプーナーさんが発したとされるスプーナリズムは、 彼の生徒たちが後日面白おかしく創作したものだということです。

なお、名前の由来については、郡司利男「ことば遊び 12 講」を参考にしました。 郡司さんの本では英語の例がいくつかあります。

日本語ではスプーナリズムには「頭音(頭韻)転換」という名前がついているようだ、と以前記しました。 これについて、笛吹き氏から「頭韻転換という言葉は初耳である、音韻交替のことではないか」 という投書がありました。 国語学では古い形「あらたし」が現在の「あたらし」に変化したことを音韻交替ということ、 また以下の例でお分かりの通り、日本語では交替(転換)するのは必ずしも頭音ばかりではないこと、 これらのことから、スプーナリズムには「音韻交替」の言葉をあてるのが適切という結論に達しました。 笛吹き氏に感謝します(この項 2001-02-27 記す)。

スプーナリズムには、「スプーナー誤法」とか「メタセシス(metathesis・音位転換)」という別名もあるようです。 (2005-05-10)

Wikipedia には「語音転換(ja.wikipedia.org)」という表題で解説されています。

スプーナーさんについて詳しくは、 愛知大学語研ニュース No.12(aichiu.repo.nii.ac.jp) にある安藤 聡先生の「スプーナーとスプーナリズム」を参照してください。 初稿 2005-05-10、リンク先修正 2016-03-26)

スプーナリズムにエスペラントで名前がついているかどうか、調べてみました。 予想に反して、英語-エスペラント辞典には 出ていました。sonalterno (ソン・アルテルノ)といいます。 なるほど、son が音を表す語幹(英語でもsonosheet, sonorityなどのことばがあります)、 alterno が交替を表す名詞だから、その通りです。 別の言い方として、kontraŭknalo(コントラウクナーロ)ということばもあります。 kontraŭ は「反対の」、knalo は「爆発」 の意味です。

フランス語では「コントルペトリ」( contrepèterie ) といいます。直訳は「語音転換」です。 フランス語の例も挙げています。

ドイツ語では「シュッテルライム」( Schüttelreim ) といいます。 私が持っているドイツ語辞書(郁文堂独和辞典)には「交換韻」という訳語がありました。 例は次の通りです。... lachend wiegt と ... wachend liegt

日本語によるスプーナリズムの例

私がすぐに思い付くのが「テッコンキンクリート」です。お笑いグループの名前にもなるぐらい、 簡にして要を得た傑作だと思います。私が小学生の頃から、すでにありました。 つれあいは「自分が発見したと思っていたのに」とこぼしていました。

私が同じく小学生の頃に間違えていたのが「オードソックス」でした。これを聞いた恩師は 「そりゃー、古い靴下だよなー」と笑っていました。

その次は高校生のころ、スネークマン・ショーの寸劇の一つでした。「こなさん、みんばんは」で始まる スプーナリズムを目くらましに使ったネタです。

投稿から


なお、最近調べたところによると、トーベ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズに出てくるトフスランとビフスランという妖精が、 「こなさん、みんばんは」風にしゃべっている(あるいは翻訳されている)ということですが、 私は読んでいません。 エラリー・クイーンの短編でもあるようです。「クイーン検察局」の中の 「我が奇妙な学部長」(My Queer Dean) 。もちろん、この表題は My Deer Queen のスプーナリズムで、 スプーナリズムの典型とされる文です。

WWW・メーリングリストから

WWW の中を"spoonerism", "スプーナリズム" というキーワードで調べたら結構ありました。 人のすんどしでふもうをとるのはいいですね。

註1:ある Web ページに載っていたもとの例では 「悲しみのズンドコに・・・。」となっていて、 最初はこちらを載せていました。これを見たある方が「ズンドコでは(転換になっていないから) スプーナリズムの例として適当ではない」とのお便りを寄せて下さいました。 ありがとうございます。「悲しみのゾンドコに」に直しました。 でも、「悲しみのズンドコに・・・。」は Web ページにたくさんあるのに、 「悲しみのゾンドコに・・・。」は見当たりません。ズンドコ節の影響も入ったということで、 許して下さい。

註2: この例から「ヒラマヤ」とか「エベレーター」も連想できます。

身内・知人ほか

特記なきものは私の発案、採取です。

「言いまつがい」

同名の本からの魅力的な例です。(2005-06-20)

「金の言いまつがい」

同名の本からの魅力的な例です。典型例はp.67 の●逆転現象とP.80の●超逆転現象、 ●p.85のウルトラ逆転現象にあります。 その他のコーナーにもスプーナリズムがあるので採取しました。(2012-12-09)

書籍・雑誌・新聞・テレビから

最後に、古典的な媒体である書籍・雑誌・新聞・テレビからの例です。

校閲記者の例

以下数点は、毎日新聞校閲記者が挙げた例です。元ネタは毎日新聞のWebページ 読めばよむほど (www.mainichi-msn.co.jp) ( 2016-03-26 現在ドメイン存在せず)です。 ここの内容は1週間しか続かないので、後の参照のために、 スプーナリズムに近い例を載せます。

最初の2点はいいですね。最後、正しくはトゥール・ダルジャンです(フランス語では、 Restaurant LA TOUR D'ARGENT)。由緒あるフランス料理の店のようです。

付録

クープランの変奏

フランスにはクープランという作曲家とプーランクという作曲家がいました。 クーランプという法学者がいるという話ですが、これは確認できませんでした。 ちなみに、 Google で「クーランプ」を捜すと2件出てきますが、 明らかに一件は「クープラン」の間違いです。もう一件もおそらく「クープラン」の誤記だと思います。

擬スプーナリズム

頭音転換でない音の入れ違いは、厳密にはスプーナリズムとはいえないでしょう。 そんなものもここではスプーナリズムとして入れています。面白ければいいのです。 その中の傑作は「マイクソロフト」でしょう。 たとえば、「がんばれ!ゲイツ君」の次のページで紹介されています。 http://www.asahi-net.or.jp/~FV6N-TNSK/gates/column233.html (著者がWeb サイトを閉鎖したため現在はリンク切れ)。

私が気に入っているのは VOW で紹介された、「なんばザデイナー学院」です。 ここに張り付けるわけにはいきませんので、VOW を買うとよいでしょう。(2005-01-09)

落語に見る転換

落語の中から、私の好きな噺「出来心」(別名「花色木綿」)を紹介します。

「七つをかしらに四人の子持ち、八十の母親抱えて、ほんの貧の出来心」が、 間抜けな泥棒にかかるとこうなります。
「八十をかしらに四人の子どもと七つの母親、ほんの貧の出来心」

私がスプーナリズムに陥る理由

「なむろあみえ」は私が作ったスプーナリズムです。 なぜ、言い誤ったか、つれあいが教えてくれました。 私は以前から、ナムラさんという方と親しくおつき合いしています。 それも、安室奈美恵のデビューより10年以上も前からです。 私には新しい情報は入りにくいので、そこでナムラさんからの類推で 「なむろ」になったと推定されます。 もっとも「やすむろなみえ」とも読んでいたので、 これについては弁解のしようもありません。

なお、私はスプーナリズムだけではなく、「変読」も得意です。 天海佑希を「あまがいゆき」と読んで笑われたことがあります。 これは、高校時代の友人に西海(にしがい)くんがいたからです。

また、二谷友里恵を「ふたやゆりえ」と読んで、ばかにされたこともあります。 これも、昔からの趣味である将棋で、 プロ棋士の二上達也(ふたがみたつや)氏の読み方に倣ったものです。 ちゃんと理由はあるのです。(2006-01-14)

新聞コラムより

毎日新聞2005年12月10日朝刊「余録」より、 糸井重里が編集した「言いまつがい」から、ことばが入れ換わる例、 すなわちスプーナリズムの例から次のものを挙げていた。

ここまで引用した後で、このコラムの筆者は、次の例を出した。

これは、12月8日、 「61万円で1株」の売り注文を出すはずが誤って 「1円で61万株」の売り注文を出してしまった証券会社があり、 市場が混乱した事件を指している。 この事件から、スプーナリズムを思いだしたコラムの筆者を、 私は畏敬する。

ワナナバニ園

上で「ワナナバニ園」を思いついたSくんのことを書いていますが、 彼の家で、熱川バナナワニ園のコップを見せてもらいました。 次のように書いてあります。

ATAGAWA
BANANAWANI EN

これだけAの字が連続していては、 「ワナナバニ園」と言ってしまうのも当然でしょう。

なお、類似例として「バナナマラ」があります。 「バナナラマ」(BANANARAMA)は「ヴィーナス」などのヒット曲で知られる 女性3人組です。(2006-01-14)

リンク集

本ページにリンクがあるサイトを含めています。

2ch

こうなったら、2ch から採取したものを全部載せます。注釈はありません。

マラプロピズム

スプーナリズムの上位概念として、マラプロリズムがある。 マラプロピズムとは、Wikipedia によれば、 「普通喜劇的な効果のために、ある言葉を、似た響きを持った別の間違った言葉に置き換える文学技法のこと」 である。 私が最近思いついたのは、「見る気もよだつ」。もちろん、「身の毛もよだつ」と「見る気もしない」の混交である。 (2010-03-29)

倒語

倒語とは、言葉を逆の順序で読む言語現象である。逆さ読みともいう。この場合、言葉の区切り目の取り方は場面によって異なる。 典型例として、ジャズをズージャと呼んだり、調子いいをC調と読んだりする例がある。植木等の「無責任一代男」(歌詞は青島幸男)では、 「人生で大事なことは/タイミングにC調に無責任」と歌う。

フランス語では verlan と呼ぶ。以下はフランス語の話である。 relou というあざけりことばがあり、たとえばウザいという訳がある。 これは lourd (重い)ということばの逆さ読みであり、逆さ読みするとニブい、うっとうしい、などの意味が出てくる。 ちなみに、verlan 自身も逆さ読みであり、もとは逆という意味の l'envers であった。 このまま読むと lan-ver と発音するのでこれを逆さ読みして ver-lan と発音し、倒語を意味することばとなった。

以上、倒語の項は 2012-08-06 記載

倒語と意味が似ていることばとして「芋の山」がある。 広辞苑(第四版)では次のように説明している(意味を損なわない範囲で表現を変更した)。 ≪言葉や物事が前後して意味をなさぬことを非難していう語。 連歌で「やまのいも」を転倒して「いものやま」ということからこの名がついた。ぐりはま。≫

一方、goo 国語辞典(デジタル大辞泉)では次のように解説されている。 ≪連歌の用字法(修辞法)の一。語を転倒して、意味を強く印象づける手法。「山の芋」とあるべきところを「芋の山」とする類。≫ これには非難の意味は感じられない。

広辞苑で類語のようにしてあげられていた「ぐりはま」は、広辞苑(第四版)には次のように説明されている。 ≪(「はまぐり(蛤)の倒語)物事が食い違うこと。あてがはずれること。ぐれはま。(後略)≫

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MARUYAMA Satosi