水上勉:チャレンジ!整数の問題199

2026-04-13

概要

「まえがき」から引用する。本書は受験のための参考書ではなく,数学,特に整数に関心のある方を念頭において書いたものである.

感想

初等整数論の本ではあるが、一般的な初等整数論よりさらに話題を絞っている。たとえば、本書で扱わない初等整数論の話題には、平方剰余の相互法則などがある。

素数砂漠

「1章 ウォーミングアップ」から、興味深い用語や問題が見つかる。たとえば、p.4 で素数砂漠という用語が出てくる。内山田洋とクール・ファイブが歌う「東京砂漠」をつい思い出してしまった。

「2章 素数」では、素数砂漠には,いくらでも長いものがある.という記述がある。このあとで、`n` 個の連続する整数からなる素数砂漠の例が示されている。 言われてみれば確かにそうなのだが、私には思いつかなかった。

「3章 1次不定方程式」の 31 で紹介されている問題は、本書には出ていない用語だが、「フロベニウスの硬貨交換問題」である。この種類の問題を見ると、私は高校1年生のときにダイレクトメールで来た、 Z会添削勧誘のパンフレットを思い出す。そのパンフレットにはたぶん、フロベニウスの硬貨交換問題があったような気がする。 「`x, y` を自然数とするとき、`3x + 7y` の形で表わせない最大の数 `n` を求めよ」という問題だ(`x, y` の係数はうろおぼえ)。 パンフレットに書かれていた解答をみると、この解答に関する添削というのが微に入り細を穿つもので、 高校数学というのはこんなに面倒なもので、なおかつZ会というのは非常に怖い、という印象が植え付けられた。当然 Z 会には入らなかった。最近、ある入試問題数学を解説したサイトで、 この Z 会の問題に「フロベニウスの硬貨交換問題」という名称がついていて、有名な問題だったということに驚いた。ただ、私が 50 年近く前に抱いた印象の強烈さというものは他の人ももつかもしれないし、 だからこそこの種の問題に名前がつくきっかけになったのだとも思う。

「4章 約数の個数・和」で紹介されている問題の 42 番は「20 より小さな自然数で、`sigma(n) = sigma(n+1)` となるものを見つけよ」である。ここで、`sigma(n)` は約数関数である。 この答は計算をすればわかる。本書に書かれていることによれば、(20 より小さな自然数、という制限を外した)自然数 `n` に対して、`sigma(n) = sigma(n+1)` という等式を満たす `n` が無限個あるかどうかを初めて問題にしたのは,シェルピンスキーであるという。シェルピンスキーといえば、この人の名前を関したフラクタル図形があったはずだ。 すごい数学者はいろいろ考えるものだ。

「5章 オイラー関数」では、その題名の通り、有名なオイラー関数の定義とオイラー関数に関する問題が載っている。オイラー関数の計算は、 久留島-オイラー関数を参照してほしい。

「6章 合同」では、合同式を使って解ける問題がいろいろ紹介されている。さすがにこのあたりになると、難しい。

「7章 フェルマーの小定理・ウィルソンの定理」では、次の定理について証明されている。

ウィルソンの定理:`p` が素数であれば,`(p -1)! -= -1 (mod p)` である.

クレメントの定理:`n` と `n+2` が,ともに素数であれば,`4{(n-1)! + 1} * n -= 0 (mod n(n+2))` が成り立つ.

フェルマーの小定理:`p` は奇素数で, 整数 `a` は `p` で割り切れないものとする.このときつねに,`a^(p-1) -= 1 (mod p)` が成り立つ.

オイラーの定理:自然数 `m` に対して, 整数 `a` が `m` と互いに素であるとき(`a` と `m` の最大公約数が 1),`a^(varphi(m)) -= 1 (mod m)` が成り立つ.

「8章 完全数」では、完全数の定義のほか、メルセンヌ数についての興味深い問題も取り上げられている。

「9章 ピタゴラス数」では、ピタゴラス数についての性質が解説されている。

「10章 二平方数の和」では、「2つの平方数の和として表すことのできる数は,どのような数なのか」という問題が紹介される。この問題は、 紀元3世紀のディファントスにまで遡る、と記載されていたのには驚いた。このような数を実際に見つけるのは、プログラミングの恰好の例題でもある。 二村良彦:プログラム技法の例も思い出した。

「11章 三、四平方数の和」は、10章で提起された問題が拡張される。ラグランジュの4平方和定理の証明も述べられている。

「12章 ウェアリングの問題」では、10章や11章の問題がさらに拡張される。以前の章では平方和を対象にしていたが、ウェアリングの問題では、立方和、4乗和などに拡張される。 すなわち、ウェアリングの問題は次のように定式化される。

2以上の自然数 `k` に対して,すべての自然数が 0 以上の `k` 乗数を `s` 個使えば表されるような,ある自然数 `s` が存在するか。存在するならば、`s` の最小値は `k` によってどう決まるか。

後半はなかなかハードである。

誤植

p.162 の上から1行目、`x^2 + y^2 + z^2` を満たす自然数 `x, y, z` の組 `(x, y, z)` とあるが、正しくは 《`x^2 + y^2 = z^2` を満たす自然数…》だろう。

数式記述

MathJax4 を使っている。

整数論の本

本書では以下の書籍を参考文献として挙げている。

書誌情報

書名チャレンジ!整数の問題199
著者水上勉
監修者黒川信重
発行日2004 年 5 月 25 日 第1版第1刷
発行所日本評論社
定価2200 円(本体)
サイズA5 版
ISBN4-535-78420-5
NDC412.1
その他草加市立図書館で借りて読む