小谷敏:怠ける権利!

2026-01-08

概要

「はじめに」から引用する。

「怠ける権利!」などと言えば、「ふざけたことを言うな!」とお叱りを受けそうです。誰もが働かなくなれば、社会は成り立ちません。 適度な労働は、健康と幸福の源泉であると筆者も考えます。しかし、死に至るほどの勤勉は人間を不幸にするものでしかありません。 この国では、現在過労死が大きな問題となっています。勤勉が人間を不幸にしている。筆者が怠惰を称揚する所以です。(後略)

副題は過労死寸前の日本社会を救う 10 章

感想

本書の題名には見覚えがある人も多いだろう。事実、本書の筆者は「はじめに」で、「怠ける権利」ということばは、十九世紀フランスの社会主義者、 ポール・ラファルグに由来しています。と述べている。そう、ラファルグの著書である「怠ける権利」は、私にとっては革新的な書籍だった。私はラファルグの本を大事にして生きていきたいと思っている。 では、このビックリマークがついた本書はどうだろうか。

第1章「怠ける権利」とは何か

12 ページを開くと、「オブローモフ」という文字が飛びこんできた。オブローモフといえば、あのロシアの作家であるゴンチャロフの小説のタイトルではないか。 後藤明生が「四十歳のオブローモフ」を書いたきっかけになった作品ではないか。ではオブローモフはどんな人物だったのだろう。ゴンチャロフの小説を読んでみたい気がしたが、 長編なので無理かな。

第4章「奴隷の国家」がやってきた

p.113 で、自身がサラリーマン(新聞記者ですから典型的サラリーマンとは言えないかもしれませんが)であった詩人の中桐雅夫は、「会社の人事」という有名な詩を遺しています。という一文が目に入った。 私も「会社の人事」を買って愛読していたのだが、書棚が散らかっていて見つからない。なんということだ。

第7章「純ちゃん」と「晋ちゃん」

本章の題は二人の内閣総理大臣経験者を指す。言うまでもなく、「純ちゃん」は小泉純一郎を、「晋ちゃん」は安倍晋三を指す。本章の副題は「棄民の国家」の完成である。なぜ二人の名前を出すことが、 本書の「怠ける権利!」と関係があるのか読んでみた。こういうことらしい。小泉のことはいったん置く。安倍は一億人にわたる日本国民をすべて活躍させるといっている。これは即ち労働させようとすることだ。働かなければ、怠けていれば、日本国民から排除する。 日本国民からの排除、すなわち棄民となることへの恐れから、国民は様々なレベルの権力に対して自発的に隷従してしまうだろう。

こういうことなら確かにわかる。私は怠けたい。だから安倍は嫌いだ。そういえば、今これを書いている日(2026-02-03)、内閣総理大臣は高市早苗である。この人は「(働いて)+参ります」というセリフで有名になった。 いや、俺は怠けるぞ。

第10章「なまけ者になりなさい」

本章のタイトルは、水木しげるが遺したことばである。

本章を読んでいてどきりとした。p.339 で経済学者の宇沢弘文が紹介されていたからだった。そして宇沢には『自動車の社会的費用』という名著があります。という一文を見て、 そういえば私は、この宇沢の著書を読んで、自動車は運転しないという決意を固めたのだった。そんな決意をした若いころがあった、と妙に回顧的になってしまった。もう宇沢の本は手元にないが、また図書館で借りて読んでみよう。

誤植

?ページ、右から7行目、AI(人口知能)とあるが、正しくは《AI(人工知能)》である。

p.138 右から5~6行め、映画の題名が田中さんはラジオ体操をしなかったとなっているが、正しくは《田中さんはラジオ体操をしない》である。

p.293 右から8行め、「特化型BI」とあるが、正しくは「特化型AI」である。また次の行の「汎用型BI」は正しくは「汎用型AI」である。この章(第9章)の表題は《ベーシックインカムと「怠ける権利」》であり、 従ってこの文の前後でBI(ベーシックインカム、Basic Income)についての言及があったことから、このような誤植が生じたのだと思われる。

書誌情報

書名怠ける権利!
著者小谷敏
発行日2018 年 7 月 20 日
発行元高文研
定価2400円(本体)
サイズA5版
ISBN978-4-87498-653-0
その他越谷市立図書館で借りて読む