宇沢弘文:自動車の社会的費用

2026-02-04

概要

カバーより引用する。

自動車は現代機械文明の輝ける象徴である。しかし公害の発生から、また市民の安全の歩行を守るシビル・ミニマムの立場から、自動車の無制限な増大に対する批判が生じてきた。 本書は、市民の基本的権利獲得を目指す立場から、自動車の社会的費用を具体的に算出し、その内部化の方途をさぐり、あるべき都市交通の姿を示唆する。

感想

本書を買ったのは今から 40 年以上前だろうか。著者の意見に共感しつつも、車に依存した私の生活を不甲斐なく思いながら何度となく読んだ。そのときのことは、 運転免許についてというページで少しだけ書いた。その後、引越しと結婚のため、処分してしまった。

処分後から 30 年近く立ち、小谷敏:怠ける権利!を読んでいて、本書が紹介されていたのに気付き、久しぶりに読まないといけないと思った。幸い、近くの図書館に置いてあったので、 借りて再読した。

「まえがき」を読んで、当時読んだ不甲斐なさがよみがえってきた。以下、気になったことをまとめる。

「まえがき」の iii ページで、このような指摘がある。

(前略)社会的費用の発生は資本主義経済制度のもとにおける経済発展のプロセスに必らずみられる現象であるといえる。ところが、経済学の分野で、 社会的費用あるいは外部不経済という問題が整合的な理論体系のなかで論及されたことはなかったといってよい。

そういえば、本書の題名の一部でもある「社会的費用」や、これと同義語のように扱われている「外部不経済」とは、どういう意味だろうか。 外部不経済とは「他の経済主体にとって不利に働く場合の外部性」というのが定義で、外部性とは、ある経済主体の意思決定(行為・経済活動)が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼすことをいうのだそうだ。 まずはこれを認識しておこう。

自動車事故による死亡者数

「Ⅱ 日本における自動車」の章で、p.69 では、自動車通行の異常性を受けて次のような事実が述べられている。なお、引用にあたって漢数字を算用数字に直した。

このような日本における自動車通行の異常さは、自動車事故による死傷統計にもっとも顕著なかたちであらわれている。 1971 年度の自動車事故による死亡数は、警察庁統計(事故後 24 時間以内死亡)で 1 万 6000 人、厚生省統計では 2 万 1000 人であり、負傷者数は 95 万人となっている。 この死亡数のうち、約半数が歩行中あるいは自転車乗車中であって、道路構造の不完全によっていかに大きな被害が発生しているかがわかるであろう。 とくに、15 歳未満の子どもの交通事故死傷者は、死者 2000 人、負傷者 12 万人であるが、そのうち 80 % 以上が歩行中および自転車乗車中という、いたましい統計が発表されている。

今でも覚えているのは、私が小学生のころの場面だ。テレビのニュース番組の終わりごろ、今年の交通事故の死者は xxxxx 人となりました、という場面が(少なくとも平日は)あった。おそらく警察庁発表の数字だったと思う。 当時、死者は毎年1万人を超えていたことははっきりと覚えている。

2026 年の今、交通事故死者は1万人を下回っている。次の図は、1970 年(昭和 45 年)から 2023 年(令和 5 年)までの交通事故の発生件数と死傷者数の推移グラフである (出典:法務省による交通事故の発生件数・死傷者数の推移 https://www.moj.go.jp/content/001413635.pdf)。死者、死傷者とも 1970 年から減少しているが、2020 年ごろから減少していないように見えるのが気がかりだ。

交通事故の発生件数と死傷者数の推移グラフ

書誌情報

書名自動車の社会的費用
著者宇沢弘文
発売日2020 年 12 月 15 日(第46刷改版)
発売元岩波書店
定価800 円(本体)
サイズ
ISBN4-00-411047-5
その他岩波新書, 購入後処分したが、その後越谷市立図書館で借りて読む
NDC