研究本
現役の作家で、これほど研究本の類が多いのも珍しいと思います。キングの作品を読むだけでは物足りなくなってしまったら、まずはこれらの本から、よりディープな世界への第一歩を。
*研究本はその性格上ネタバレが多いので、読むときには充分気をつけてください。
*おまけに研究本は足が速い!あとで買おうと思っていると、すぐに絶版になってしまいます。見つけたら即購入が鉄則です。絶版になっているものも、図書館に置いてあることも多いようです。
モダンホラーとU.S.A スティーヴン・キングの研究読本
北宋社 1985年発行
村上春樹、甲斐よしひろ、深町眞理子他のインタビュー/執筆、蛭子能収のマンガによる本邦初の研究本。
85年といえば日本ではまだ『キャリー』『呪われた町』など5点ほどしか出版されていなかった(しかも『シャイニング』はパシフィカ版が絶版になっていたので読めなかった!)ことを思えば異例とも言える早さだろう。21人が様々な角度からキングを語り、否定的な意見もあるところが面白い。ただ、今読むとちょっと観点がずれてるなと思うような個所もあるが、キングの評価も定まっていないような時期だったのでしかたないかと思う。
コンプリート・スティーヴン・キング  
奥澤成樹 編著 白夜書房 1988年発行
作家論、インタビュー、作品解説:小説編と映画編、資料編から成る、「コンプリート」の名の通りにあらゆる情報を網羅した、研究本の決定版ともいえる内容。
初めて本書を書店で見つけた時の興奮は、今でもよく覚えている。
約400ページにわたって、ギッシリ詰め込まれた情報は、資料的な価値も高く、ファンならぜひとも持っておきたい一冊。しかし残念ながら現在は絶版。探せ!
コンプリート・スティーヴン・キング 増補改訂新装版
奥澤成樹・風間賢二 編著 白夜書房 1991年発行
前書から約3年、大幅に増補されたことによって、キングファンにとってはますますマストな一冊となった。
主な変更点は、ひとまわり大判になり、ハードカバーになったこと。風間賢二氏によるキング小伝「ブランドネームになるまで」、作家論として荒俣宏、北上次郎氏らによる4本が、作品解説:小説編にDARK HALF,THE STAND完全版,MY PRETTY PONY等が、映画編にはペット・セメタリーからITまでがそれぞれ追加されている。
こちらも現在は絶版。なんとしても探すべし!

編者の奥澤成樹氏は、89年に本書の完成を見ずに急逝されました。ずばらしい本を企画、編集されたことに対する感謝とともに、ご冥福をお祈りします。
スティーヴン・キング インタビュー 悪夢の種子
ティム・アンダーウッド/チャック・ミラー編 風間賢二 監訳 リブロポート 1993年発行
1979年から85年にかけてのインタビュー集“BARE BONES”の全訳プラス風間賢二氏によるキング小伝「アメリカン・ブギーマンの誕生」。
キング本人の発言がまとめて読めるのは、いまのところ日本ではこの本だけ。(といっても残念ながら既に絶版ですが・・・。)風間氏によれば「キングのインタビュー集は(マニアを除けば)本書があれば、それで充分」とのこと。
ただ、27本ものインタビューの寄せ集めのため、同じような質問が多いのが難点。独創性のない質問に読んでいてしだいに飽きてくるが、聞かれる本人はさぞウンザリしていることだろう。
この本は作りがちょっと凝っていて、カバーは外して広げればポスターになり、背表紙の反対側(*)にはイラストがあって、前から見ればハロウィーンカボチャ、後ろからは頭蓋骨に見えるようになっている。
〔画像はこちら

(*)正式には「前小口」と呼ぶらしい。この部分に絵を描く技法は18世紀のイギリスで開発されたそう。書棚に並べた状態では絵が見えないのをいいことに、あぶな絵が用いられることもあったとか。人間(男)って、いつの時代も・・・。
スティーヴン・キング 恐怖の愉しみ
風間賢二  筑摩書房 1996年発行
「スティーヴン・キング伝」「メイン州探訪記」「キング作品の世界」の三部構成。
なんといっても「スティーヴン・キング伝」がスゴイ!「誰にそんなこと聞いてん」とか「どこでそんなこと調べてん」と思わずツッコミを入れたくなるような詳細さ。インタビューからの引用や作品の粗筋、作品誕生のヒントになったエピソードなども織り込む手際のよさ。現時点でのキング評伝の決定版といえる充実した内容で、キングにつてい知りたいと思ったら迷わずこれを読むことをお勧めします。 「キング作品の世界」では、ポストモダン・ホラー作家としてのキング論を展開。キングの作品について「新しいアイディアがなにもない」などとアホなことをぬかす奴にはぜひこれを読んで欲しい。
必携 スティーヴン・キング読本 恐怖の旅路

ジョージ・ビーム  風間賢二・白石朗・宮脇孝雄他訳 文芸春秋 1996年発行     

キングの大学生時代、ロックボトム・リメインダーズのこと、「フィールド・オブ・スクリームス」と呼ばれる野球場のこと、WZON、室内プールのある自宅のこと、キング本収集法、クライヴ・バーカーとハーラン・エリスンのインタビュー等々幕の内弁当のような盛りだくさんの内容。写真も多数。腰巻に「キングのことなら何から何まで」とあるように、この一冊を読めばとりあえずキング通になったような気分になれる。
なんといっても圧巻なのは本書の約半分を占める「スティーヴン・キング著作解説」だろう。未発表作品の解説まであるのがファンには嬉しい。
〔キング堂ホーム〕〔雑誌〕〔キングが影響を受けた作家、作品〕
〔キングに影響を受けた作家、作品〕
〔キング絶賛!〕〔その他の関連書籍〕〔リンク〕