海底鍾乳洞 「ヒデンチガマ 」に棲む変わった生き物

リーフの崖下、水深35mに小さな口を開ける海底鍾乳洞。最深部は40mを超え、一万年近く前に沈んだといわれる。この時洞窟内での生活を選び、長年にわたって暗闇にあわせた進化している特殊な生物も見られる。
水温は外海ほど上がらず年間20〜25℃の間で安定している。海底鍾乳洞調査研究会では2001年5月、鍾乳洞内の年間水温変化を調査するため、「温度データロガー」を洞内4箇所入り口1箇所に設置した。この鍾乳洞は陸上の鍾乳洞に繋がっている可能性が高く、台風時の大雨が洞内の生き物に影響あることも考えられる。1年後に引き上げた温度データロガーの結果は概略を下表に示す。
プランクトンのいない澄んだ冷たい水はライトの光を反射せず、水が感じられない不思議な透明感を感じさせる。しかし、いったん降り積もったほこりを舞い上げると2日間も舞い続けるので動きには十分な注意が必要。

(現在、ゲストの潜水は限られているので、中に入ってみたいダイバーの方は「海底鍾乳洞調査研究会」加盟のダイビングショップにお問い合わせ下さい。)

入り口から30mも入ると鍾乳洞を実感できる。右は洞窟壁下部のうろこ状のフローストーン?

入り口付近にはアカマツカサなど普通の洞窟性の生き物が見える。
30mほど入ると殆ど真っ暗になり、壁に張り付くオオベッコウガキやカイメン
軟らかそうで堅い底にはテナガエビの仲間・サザナミショウグンエビや虫の姿がちらほら。
さらに奥に入ると新属新種のワタリガニの仲間や新種のオウギガニの小さな赤い甲羅が
ライトに光り、生き物好きには時間を忘れる瞬間でもある。

現在まで鍾乳洞内で30種近くが確認され、2新種のカニも2002,2003に新種記載され和名が付く。

洞窟の暗闇に棲む独特の住民をいくつか紹介する。

01 : ワタリガニ科の新属新種 「クメジマドウクツガザミ」
02 : オオベッコウガキ:サンゴガキの仲間:ヒメエダウミウシ
03 : サビクダリボウズギスモドキ:ウナギ?:ギボシムシの仲間?
04 : 新種の「クラヤミヒラオウギガニ」:リュウグウモエビ:ハチジョウクラヤミカクレエビ
05 :

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2002‐11

第1回 水温計測結果 ( 2001.5.16 〜 2002.5.15 )

ロガー No. 最高水温 ℃ 最低水温 ℃ 年間平均水温 ℃
No. 1

入り口外 水深‐33m

30.3

2001-7-24

20.2

2002-2-11

24.59
No. 2

入口より30m 水深‐35m

25.9

2001-10-18

20.5

2001-9-13

-
No. 3

入口より60m 水深‐40m

24.4

2001-7-5, 10-17

20.2

2002-3-7

22.20
No. 4

100m ドーム天井

25.2

2001-11-2

23.6

2002-4-6

24.51
No. 5

入口より160m 水深‐35m

24.8

2001-10-17

20.5

2002-2-10

22.99

No.2は途中電池切れで2002年1月まで計測

2002‐8月データロガーを鍾乳洞より取りだし1年間の温度データを引き出した。このような深場での水温データは非常に稀だと思うので、結果を概略紹介する。

考察
No.1外洋水温は20.2〜30.3度と大きな変化を示す。グラフから2001年夏7月半ばより1ヶ月近く水深33mにおいて30℃以上の高水温を記録し、この時海上ではは高水温によるサンゴの白化や長期にわたる高潮など異常気象が観測されている。
これに対し鍾乳洞内は20〜25℃と安定した水温で、中でも冷たい水がたまる洞内最深部No.3の水温は一番低い値を示し、逆にドーム天井部は23.6〜25.2℃の高い値で年間温度差1.6℃と非常に安定している事がわかった。ドーム天井部はー27mと浅いからかもしれない。
外水温が上昇時は鍾乳洞内はなかなか上昇せず、25℃以下になる温度下降時はドーム天井部以外ほとんど同時に下降していることから、入り口水深より深い部分については外水温の下降と共に冷たく重い潮が入り口より入り込んでいる事を示している。

これらのことから、付近のクレバスや岩の隙間の海水はさらに替わり難く、陸近くではさらに真水の流入もあり汽水域の部分があることも考えられ、このような場所に棲む生き物たちの生態に大きく影響しているものと思われる。

8月のデータロガー搬出時には、入り口より80mくらい入った壁底にアシロの仲間を見つけた。種類は特定できないがアシロの仲間は深いところに棲む種が多く、はじめて目にする魚であった。色模様からシオイタチウオでは思われる。

9月には2回目の温度データロガーをほとんど同じ場所5箇所に設置した。そろそろ生き物データも少しまとめる必要がある。