1、二人で組む。置く前に背中を押す練習をする。
・手を当てる位置を決める。
・腕の力が抜けると「呼吸が分かる」ことを確認する。
・相手が吐く時に、後ろからすっと押す。
2、紙を放るように置く
・後ろから押す。
3、紙をきちんと置く
・きちんと置いた後、同様に後ろから押す。
・2の場合との比較をする。
座して紙一枚を机の上に置く。これを、今から「書」を始めるつもりで、机に対して紙が相似形になるよう、紙の四隅に「気」を配って置くのである。
ただそうするだけなのだが、置いた後は体がきちっとして、自分が被験者として、「背を後ろから人に押してもらう」と、いい加減に置いた後とではまるで違うのである。
放るように紙を置いた時は、後ろから押されると、体に抵抗力が無いが、きちんと置いてみると、自分の体にしゃんと「気」が入り、後ろで押す人は、まるで別人の体と見紛うほどに感じるものである。
子どもの頃、書道を少しはやったが、座卓に置かれた「紙に対座した身体」にこれほどの効用があったのかといまさらながらに驚く。書道を行うことの精神的な意味がここにある。
これは「座しての『茶碗と箸』による食事作法」においては一層に顕著となる。
このように、日本の生活文化における伝統的作法には、これほどの身体的効用が意図されているのだが、思えばこの半世紀、日本人は多くのこの類のことを忘れ去り、家庭教育を疎かにしてきたのである。
紙一枚をきちんと置く。ここから教えられるものは、紙一枚という「対象の四隅」にきちんと「気を配る」ことで、実はこのことで自分の四隅、つまり「全身に気が通る」ということである。