秋の涸沢岳 (3/3)

10月9日 晴れ

4時半に起床。テント内は2.8℃だった。フライの表裏は凍りつき、本体内壁には水滴がついていた。いい場所にテントを張れたので、テント内から星空を楽しめた。オリオンとかプレアデスとか木星が印象的だった(ていうか分かりやすかった)。ジャコビニ流星群の日だったせいか、流れ星を1つだけだが見ることができた。
帰宅予定は翌日なので、時間的には今日また奥穂にアタックすることも可能だったが、この大混雑とあの凍った道ではとてもじゃないけどそんな気になれなかった。夜明け前から夜明け後の涸沢を楽しんだあと、上高地へ下山することとした。

涸沢の朝

朝
夜明けの涸沢(05:51)
涸沢
朝の涸沢(08:30)
涸沢の朝は相変わらず(って、そんな言うほど見たことないけど、)素晴らしかった。夜明け前は周囲のテントも凍てついて白かった。周囲の雑踏をよそに、奥穂も涸沢岳も、北穂前穂も静かだった。
涸沢ヒュッテは大混雑で、トイレの行列は予想どおり、長大なものとなった。なんと、ヒュッテ別館の「いわひばり」を過ぎて、テント場の方にまで伸びてきていたのだ。涸沢小屋のトイレの列もテラスを横切って売店の前にまで続いていた。そんなわけで朝はトイレに寄らず、下山前に済ませればいいやということになった。
雪がついた穂高の岩壁が朝日で赤く染まるさまは神々しいほど美しかった。ザイテングラートやパノラマコースには大勢の人が歩いているのが見えた。涸沢の空は広く、広角レンズでも半分くらいしか切り取れなかった。カールの上空は雲ひとつなかった。
結局6時半くらいまで眺めを楽しんだ。夜が明けてから気温は下がり、プロトレックを外に出しておいたら7時半になって-0.3℃まで下がった。
テントから朝の光線の山を眺めながら、のんびり朝食をとって、ようやくテント撤収開始。凍った結露が融けるとまた面倒なので、凍っているうちに撤収した。8時半には撤収完了。ザックを担いでヒュッテに行った。トイレの列はこの時点ではパノラマ売店の途中くらいまでに短くなっていた。20分待ってようやく用をすませられた。晩酌のために、輸入ものであまり旨くはないけれど、涸沢氷河ワイン白を買った。

9:12 涸沢発(高度計:2235m)

道
色づく前に枯れたナナカマドが多い道(09:24)
穂高
河原付近からの穂高の眺め(09:30)
最後にヒュッテ裏のナナカマドの実とカールを眺めたりしてから下山を始めた。早く下りて、上高地帝国ホテルでケーキセットを食べようという目標をたてた。カール内はすでに陽が射して暑くなっていたので、この下りは最初から短パンで歩くことにした。
河原に出るまでは一本道で、すれ違いで時間をくった。岩には霜がついていて、油断するとよく滑った。河原に出ると、道が幾筋かできたり休憩する人も出たりして、渋滞は解消された。
前日とほぼ同じ時間帯の歩きで、やはりこの日も穂高は気高く誇らしく堂々とした山容だった。カールで見たときより陰影がはっきり濃くて見応えがある。

9:48 Sガレ(2010m)

山
カンバの黄葉と穂高(09:58)
山
横尾谷もくすんだ色だった(10:10)
Sガレでいったんザックをおろして写真を撮ったり水を飲んだり。下りる人も登る人もずいぶん多い。
下り始めると少ししてまたすれ違い待ちの渋滞に巻き込まれてしまった。またまた登りも下りも団子状態で、行列になってしまった。特に本谷橋に近くなってからのジグザグの下りでは待ちが激しかった。

10:55 本谷橋着(1730m)

本谷橋
大賑わいの本谷橋(10:55)
北穂
本谷橋からの北穂(10:58)
Sガレからここまで1時間もかかってしまった。登りのときとほぼ同じタイムだ。
行動食をとったりして休憩。

11:04 本谷橋発(1730m)

12:09 横尾着(1565m)

屏風岩
屏風岩(11:45)
本谷橋からもまたまた団子状態。渋滞はイライラするので意識的にゆっくり歩くが、それでもすぐにまた追いついてしまう。前を行く人を数えてみたら、なんと30人もいた。凄い行列だが、もちろん、みんな別々のパーティだ。
結局、涸沢から横尾までなんと3時間もかかってしまった。もう帝国ホテルは無理だろう。目標を徳沢のラーメンに修正した。

12:25 横尾発(1570m)

前穂
陽が高くなって山も霞んできた(12:28)
ここまで来ればさすがにすれ違い待ちということはない。道が日陰になったので、急に寒くなった。

13:17 徳沢(1515m)

食堂は大混雑で、ラーメンどころではなかった。こうなると小梨平もテント場が混んでいるのではないかと危惧された。休憩もそこそこに出発した。

14:18 明神(1485m)

明神岳
明神岳(14:29)
道
下山を急ぐ人々(14:45)

14:56 小梨平着(1465m)

小梨平は恐れていたような大混雑はなく、静かなものだった。しかし後から混んで騒々しくなるかもしれない。バンガローなら静かだろう。迷いに迷ったが、今シーズン最後のテント山行(のつもり)なので、ここはテントを選択した。幸い、河童橋に近い方のテーブル脇が空いていたので、速攻確保した。
この日の最大高度は2235m、最低高度は1465m、積算上昇は0m、積算下降は755mだった。

小梨平でまったりテントライフ

河童橋
大賑わいの河童橋(16:04)
テント
シャモ・プリン・ワイン・テント(16:28)
ここから二人で手分けして、かつりんはテント張り、相棒はその間にバスターミナルへ翌朝のバスの申込に行った。テントを張り終えて間もなく相棒が帰ってきた。バスは18・19番がとれた。荷物をテントに収容してから、河童橋方面へ買い出しに行った。10数年ぶりにビジターセンターに寄ったり、物凄い人出の河童橋を見物したりしてから、五千尺ホテルの売店で上高地プリンと信州黄金軍鶏の燻製を買った。
順番に風呂に入ってから、夕食を始めたのは暗くなった18時過ぎ。メインはレトルトのボルシチで、食後はおつまみチーズや燻製軍鶏でちびちびとやってから、最後にデザートにプリンを食べた。食事時は、LEDランタンに押されて最近出番の少なくなったガスランタンが久々に活躍した。やっぱLEDより断然雰囲気がいい。外で食事中は気温は8℃前後だった。
暗くなってから着く人も結構多く、そういう人たちは受付棟の近くにテントを張るので、結局我々の周りは誰もいなかった。こういう静かな夜にシュラフに潜って横になっていると、山の夜はほんとうにイイなあとつくづく思う。20時頃、寝るときのテント内は7.4℃だった。

10月10日 晴れ

トワ・サンク
早朝から営業しているトワ・サンク(06:37)
穂高
今日は少し霞んで見える穂高(07:13)
3時半には目が覚めた。朝のテント内は7.4℃だった。もちろん結露は凍っていない。
カメラと三脚を持ってひとりで外に出た。外はまだ暗闇だ。2週間前に撮れなかった星空の河童橋を撮るチャンスだ。4時すぎに五千尺ホテルの厨房の灯りが点いて橋が照らされ、ちょうどライトアップ状態になってきれいだった。気温は3℃だった。そんな時間に吊尾根を歩いているライトが見えたのには驚いた。
いったんテントに帰って、5時半くらいから撤収を始め、6時半くらいに完了。木製のテーブル・ベンチが乾いていたのは便利だった。荷物をまとめてから、河童橋を渡ってすぐの五千尺ロッジ直営のトワ・サンクというカフェに入って梓川を眺めながらのシャレオツな朝食をとった。さすがにピザとウィンナーはレンジでチンな感じだったが、信州完熟りんごのパイはなかなかイケた。店を出てまたまた河童橋を渡り、五千尺ホテルの売店で安曇野飲むヨーグルトを買って飲んだ。
この朝8:00のバスは2台編成だった。松本そば祭りのためかアルピコ電車はなかなかの混雑具合。松本に着くとダッシュしてえきねっとで予約したきっぷを受け取り(乗り換え時間がたったの6分でちょっと冒険だった)、あずさに乗った。前回食べてすっかり気に入った山賊焼弁当と缶ワインを車内で買って乾杯した。山賊焼弁当は前回と比べてちょっと味が薄かったような気がした。家には昼過ぎに着いた。
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