秋の涸沢岳 (2/3)

10月8日 晴れ

(10月8日の行程の前半(横尾→涸沢)はこちら

10:34 涸沢発(高度計:2305m)

涸沢
涸沢小屋からの奥穂(10:32)
紅葉
小屋を出てすぐは少し色がある(10:40)
テントを張ってから行動食をとってすぐに出発した。トイレは涸沢小屋で済ませた。
歩き始めると、日陰にはやはり雪が少量残っていたが、道じたいに影響はなかった。

10:47 パノラマコース分岐の大石(2390m)

紅葉
大石付近の紅葉と涸沢槍(10:46)
常念
大石付近の色の良い木と常念(10:48)
大石のあたりは紅葉撮影の名所でもある。涸沢ヒュッテだか涸沢小屋だかのブログでもここだけは色付きが良い木があるというようなことが書いてあった。実際、1本だけ色がいいのがあった。
大石を過ぎて草枯れの中をゆるゆるとトラバース気味に登っていく。この区間は陽当たりが良くて雪もなかった。

11:25 ザイテングラート取り付き(2625m)

道
この氷を渡らねばならない(11:25)
涸沢
ザイテングラート上部からの眺め:屏風の色付きが全然よくない(12:13)
ザイテングラートの取り付きのすぐ手前が日陰で、カリッッッッカリに凍りついていた。わずか1,2mの距離だが、多少緊張した。
ザイテングラートは日陰に雪が残り凍結していた。一部では雪と土が混じっていて、凍っていることが見た目にはよく分からないところもあった。そういうところで滑るとたいへんなことになる。テントを担いで来なかったのは正解だと思った。
眺めは良く、横にそびえる雪のついた前穂が美しかった。屏風の頭がくすんだ緑色をしているのが、今年の紅葉の出来を象徴しているようだった。

12:33 穂高岳山荘着(2940m)

鳥
山荘テラスに現れたイワヒバリ(12:38)
「ホタカ小ヤ20分」の石から21分で穂高岳山荘に着いた。なんだかんだ言って結局涸沢から2時間で登れた。石のテラスのいすが空いていたので腰を下ろして行動食などを食べた。少しするとイワヒバリがやってきた。完璧に人慣れしていて、写真を撮ろうとする人間に周りを囲まれてもまったく恐れるようすがない。

12:46 穂高岳山荘発(2940m)

涸沢岳
涸沢岳山頂への道(12:57)
涸沢岳への道は南斜面のためか、すでに雪はないようだ。これなら登ることができるだろう。一方、奥穂はハシゴとクサリのある北斜面。山頂まで普通で往復1時間半かかるうえに、凍結のためか渋滞もしている。今回の主目的は未踏の涸沢岳なのだから、奥穂に行くのは時間的にも無理だ。というわけで、涸沢岳に向けて出発。
稜線は強風が吹き荒れ、物っっ凄く寒かった。道は大きな段差などもなく、歩きやすいことは歩きやすい。奥穂の山頂付近と似た(当たり前か)、岩屑の道だった。

13:06 涸沢岳登頂(3070m)

槍
涸沢岳山頂から見た槍(13:13)
北穂
涸沢岳山頂から見た北穂(13:13)
涸沢岳へは20分ほどで登頂できた。山頂は南北に細長く、東側(涸沢カール側)は切り立っていた。狭いうえに寒くて、あまりゆっくり休憩できる場所ではなかった。槍が見えたときは感動的だったが、西の方には意外なことに雲が湧いていて、黒部方面は双六と鷲羽の中腹あたりが見えるだけだった。北穂との間の縦走路はキレットと言っていいくらいに落ち込んでいて、ちょっとこんな道は歩きたくないなあと思った。まあ、どのみち歩く予定はないのだけれど。

13:29 涸沢岳発(3070m)

奥穂
奥穂とジャンダルム(13:14)
涸沢岳
涸沢岳山頂の空(13:18)
時間が遅くなるとザイテングラートの凍結部がさらにカチカチになる恐れがあるので、あそこは15時までに通過したい。穂高小屋を14時に出れば間に合うだろう。というわけで、我々にしては短い山頂滞在時間で、下山を始めた。とにかく寒くて、前を行く人も自分も、歩きながらずっと鼻をすすっていた。

13:48 穂高岳山荘着(2945m)

氷
穂高小屋の前は凍っていた(13:49)
穂高岳山荘に着くと、雲はますます増えてきて、とうとう上空の陽射しがなくなってしまった。ここで相棒はトイレを済ませ、涸沢岳のバッヂを買った。奥穂やらジャンダルムやらは何種類かあるのに、涸沢岳のだけは1種類しかなかったらしい。

14:00 穂高岳山荘発(2945m)

道
雪のついたザイテングラートを下る(14:07)
テント
涸沢テント場遠望:なんか凄そうだ(14:16)
カール側に入れば風がなくなって暑くなると思っていたが、もうこうなると風がなくても寒かった。ザイテングラートの下りでは手を使う可能性もあるので、ここで手袋を装着した。涸沢テント場を見下ろすと、テントの数が尋常じゃない感じだった。
穂高岳山荘に泊まる人がまだ登ってくるので、行き違いで多少時間がかかった。

15:05 ザイテングラート取り付き(2625m)

道
石の道は歩きやすい(15:30)
テント
紅葉の間からテント場を見る:右端に謎の行列が(15:41)
1時間近く歩きっぱなしだったのでここで少し休憩した。
ここまで来ればあとは緩やかな石の道を歩くだけ。のんびりと歩いた。

15:53 涸沢小屋着(2300m)

テント
涸沢小屋テラスから見たテント場(15:53)
この日の最大高度は3070m、最低高度は1585m、積算上昇は1480m、積算下降は750m。
ザイテングラートを下りているときから分かっていたのだが、もうテント場が凄まじいことになっていた。午前中と比べても明らかに増えていた。真ん中の通りに謎の行列があったのだが、それはテント泊の申し込みの列だった。テント場境界の青いロープを越えて張っているテントも10や20じゃないし、パノラマコースの道のはるか奥穂寄りに張っているテントも見えた。とにかく異様な混雑具合だ。
明日はもう下りるばかりなのでアルコールが欲しくなり、小屋の売店でヱビスビールを買って飲んだ。売店内も大混雑で、奥の自販機まで到達するのが大変だった。小屋の入口には「布団1枚に3名以上」という貼り紙がしてあった。
朝からトイレに行っていないので、涸沢小屋でトイレに行くことにした。ここも短いが並んでいた。時間がかかりそうだったので、相棒には先にテントに帰ってもらった。結局15分くらい並んだ。

狂乱の一夜

人混み
トイレと売店の行列(17:13)
夕暮れ
夕暮れの穂高・涸沢岳(17:21)
午前中にここにテントを張ったとき、周りは石積みなので近くには誰も張らないだろうと思っていたが、この混雑ではもうそんなの関係なし。凸凹の石積みの上のわずかなスペースにもテントが張ってあった。なんかもう異常事態なのである。
着替えたりしてひと休みし、17時頃になってようやくテント申込の列が短くなったので(マイテントから列が見えたのだ)、相棒と連れ立って出かけた。かつりんがテントの申込みをしている間に相棒はヒュッテのトイレに並ぶことにして、いったん別れた。
テントの受付は、昼12時に始まってから5時間ずっとぶっ通しということだった。申込済みの人に渡されるプラスチックの証明札も品切れ。プラスチック札は600番台まで見たことがあったので、700張りは超えているということだ。帰宅後に見た涸沢ヒュッテの日記によると、この日は過去最高でなんと1200張り・2000人が泊まったということだった。尋常じゃない。
ヒュッテに向かうと、通路に人が溢れていた。トイレの2つの入口とパノラマ売店の、合わせて3本の行列だったのだ。相棒がその人の渦に飲み込まれていた列に並んでいたのを発見。まだまだ時間がかかりそうだった。この日はトイレも最大で1時間待ちだったというが、それでもこの時の相棒は30分かからなかった。やれやれ。
夕食は和風ポトフというか洋風豚汁というか、そんな感じの鍋。味噌などで豚汁のような味付けにして、豚肉の代わりにウィンナーとベーコンを入れた。最初はなんじゃこりゃと思ったが、だんだん慣れて旨くなった。食ったらさっさと寝てしまった。
夜23時頃に目が覚めた。ここがチャンスとばかりにトイレに出かけた。帰りに迷うといけないのでLEDランタンを点けて置いていった。これだけ多くの人がいると夜中でも人通りが絶えなかったが、さすがにトイレは並ぶことはなかった。ランタンを点けておいたおかげで迷うことなくテントに帰れた。
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