秋の涸沢岳 2011年10月7日 - 9日 テント定着

10月7日 曇りのち晴れ

始発を乗り継いで松本へ向かう。この秋一番の冷え込みで寒く、電車には暖房が入った。南アはきれいに出ていたが、山梨県内を通過する時間帯がちょうど通学ラッシュだったので、思うように見られなかったのは少し残念。
アルピコ電車も平日で松本大学生が多かったが、大学最寄りの北新駅でみんな降りてしまい、あとはがらがらに。バスを乗り継いで、11:10過ぎに順調に上高地に到着。
あれだけの晴れ予報だったのに、岳沢から上は雲の中。予報では弱い冬型ということだったが、その影響だろうか。
バスターミナルで身支度を整えていると、年配の登山指導員氏がやってきて、どこに行くのかと尋ねるので涸沢から穂高を目指すというと、いま穂高小屋から入った情報で、小屋前は積雪2,3cmで稜線は10cm、凍結・強風のため冬山装備でないとムリと言う。どうやら山に付いた雲は上で雪を降らせているようだ。のっけから予定変更しなければならなくなったが、今日はとにかく横尾までだ。

11:53 上高地発(高度計:1530m)

穂高
河童橋からの穂高は例によって雲の中(11:49)
それにしてもいやに登山者が多い。いつもならここでおやきでも食べてから行くか、というところだが、胸騒ぎがしてとりあえず出発。早めに横尾に行って、テントサイトを確保したほうがよさそうだ。
前穂いらい2週間ぶりの上高地だが、その2週間であたりはすっかり秋めいていた。

12:32 明神(1555m)

13:19 徳沢(1585m)

梓川
梓川を眺めながら歩く(13:13)
徳沢
秋色の徳沢(13:26)
徳沢のテント場は13時の段階で10数張り。これなら横尾もまだまだ大丈夫だろう。ちょっぴり安心した。

14:16 横尾着(1645m)

前穂
夕方、前穂に後光がさした(16:26)
この日の最大高度は1645m、最低高度は1525m、積算上昇は105m、下降は0mだった。
横尾は南側のサイトが半分程度埋まっていた。今日はこれから混んでキツキツになりそうな気がするので、北側のサイトに張った。
テント泊の申込みに小屋に行くと、ひとりが受付中だった。その人の言うには、涸沢の紅葉はもう終わっているとのこと。小屋の人も、横尾大橋の脇のカツラの葉っぱが、黄葉したと思ったらすぐに霜で枯れてしまったと言っていた。そういえばあの見事な黄色がない。
コーヒーを飲んでからひと眠りしたあと水を汲みに行くと、雲がとれた前穂が姿を見せていた。山肌には雪が付いていた。こりゃあ登れそうにないなあ。
テントは南側で50張りくらい、北側で30張りくらいだったと思う。今夜は冷えそうなので夕食は鍋にした。充填豆腐を入れると、とても鍋らしい鍋になった。最後はうどんと卵を投入して〆た。食事の間はテント内は8℃前後だった。
寝る前に作戦会議。翌日は当初の計画では穂高小屋まで登るつもりだったが、雪が積もっていてはそれも無理だろう。とりあえず涸沢まで登ってテントを張り、あとはその日のうちに行けるところまで行って帰ってくればいい。明日から連休に入るため涸沢のテント場も混むだろうが、朝イチで張っておけば大丈夫だろう。

10月8日 晴れ

前穂
前穂に朝日が当たる(05:52)
3:30起床。テント内は2.8℃。フライはカリカリに凍っていた。テント本体内壁と、シュラフの表面も濡れていた。シュラフは自分の吐いた息がかかって結露したようだ。プロトレックを外に出しておいたら-0.6℃まで下がった。月の入りは午前1時過ぎ。明け方の前穂の星景を楽しんだ。
朝食に餅入りうどんを食べてから、凍ったテントを撤収。

6:23 横尾発(高度計:1590m)

カツラ
霜が凍りついた横尾大橋脇のカツラの葉っぱ(06:23)
霜
横尾大橋の欄干は霜がびっしり(06:25)
横尾大橋には霜がたっぷり付いていた。
相当寒くなると覚悟していたが、そのせいか、思ったほど寒さは感じなかった。上はTシャツ・ウールシャツ・カッパ、下はサポートタイツと薄手の長ズボンで、毛糸の帽子をかぶった。手袋はしないでいられた。

6:48 岩小屋(1635m)

シモバシラ
道脇のシモバシラ:これほど豪快なのは初めて見た(07:01)
北穂
ここからの北穂はほんとうに美しい(07:17)
岩小屋で大きな声でさえずる鳥がいた。よぅく見るとミソサザイだった。
屏風岩を眺めながらあまり勾配のない道をゆるゆると進むと、北穂が見えてきた。ここからの北穂はほんとうに美しい。木々の色づきは3年前に比べて薄いように思った。

7:26 本谷橋着(1760m)

北穂ポイントから10分ほどで本谷橋へ。本谷橋は混雑していた。橋を渡って右岸でザックを下ろして行動食を食べるなど休憩した。
上から大勢の人が下りてくる。連休前だというのに、相当混んでいることは間違いない。

7:44 本谷橋発(1760m)

紅葉
あんまりパッとしないナナカマド:これでも色付きのいい方(08:18)
秋色の道を登っていくとだんだん山が見えてくる(08:38)
ここからはストックを使うことにした。道は登りに転じるが、石が階段状に整備されていて大きな段差などもなく、涼しい中での歩きで快適だった。
紅葉については、途中すれ違った人の言うには「45年通っている人が今年は最悪だって言ってた」とのこと。まあ確かにそんな感じだけれど、それでも要所要所にはきれいな木もあるし、なんにしたってこの上天気で文句を言ったらバチが当たる。
天気がいいので山の眺めが素晴らしい。登るにつれて、前穂・吊尾根・奥穂と、順々に視界に入ってくる。

8:45 Sガレ(2040m)

霜
ツガザクラやチングルマに霜がびっしり(09:02)
紅葉
そこそこ色のいい木と涸沢槍(09:08)
Sガレでザックをおろして休憩した。奥穂の山肌に、横に白い筋が走っていた。雪が付いているのだ。カメラのファインダー越しに見ると、山だけが切り取られて見えて、まるでスイスかどっかの山のようだった。日本アルプスとはよく名づけたものだ。雪の付いた奥穂高岳は気高かった。山を見て「雄大だ」とか「美しい」とか思ったことはあるが、「気高い」と思ったのはちょっと記憶にない。
歩き出して河原に出ると、脇の高山植物がびっしりと霜に覆われていた。

9:24 涸沢着(2265m)

道
涸沢ヒュッテ直下のナナカマドもこんな色・・・(09:23)
テント
涸沢小屋から見たテント場(10:30)
涸沢ヒュッテの近くまで登ると、日陰に雪がちらほらと。昨日はこの辺りでも降ったようだ。ヒュッテ下のナナカマドの葉は紅葉前に枯れていて全然ダメだった。
ヒュッテで水を汲み、テラスからテント場を偵察。テラスからだと全体の混雑状況がわかる。まだ時間は早く選び放題だった。今日は絶対に激混みになるので、岩積みでサイトが仕切られている谷側の方を選択した。これならすぐ隣にテントを張られる心配もなくて、のんびりできるだろう。
望遠レンズで登山道の状況を確認。気になるのはザイテングラートの積雪状況だが、涸沢からは雪は確認できなかった。ザイテングラートも稜線も、少なくない人が歩いているのが見えた。これなら上まで行けるかもしれない。
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