黒部源流域の山を歩いた6日間・第4日目 2002年7月19日 - 25日 テント縦走

7月23日 晴れ

夜明けを待つ黒部五郎岳
夜明けを待つ黒部五郎岳
時計のアラームで3時に目を覚ます。まだ眠い目をこすりながら、空模様を見てみようとテントの入り口を開けて外に顔を出すと・・・たくさんの星がまたたいていた。今日は今山行のメインイベント、雲ノ平散策の日だ。昨夕は天気が今ひとつだったし、ガスっていたら一日順延しようと思っていただけにとても嬉しい。
サブザックの中身は昨日とほとんど変わらないので準備にそう手間はかからない。4:40、トイレに行くと夜明け前の黒部五郎岳の上空の雲がほんのりと朝のピンク色に染まっていた。よい一日になりそうな予感がした。

5:02-9:45 雲ノ平散歩

小屋泊まりの人たちも活動を開始したようだ。山荘方面に向かって歩き出すと早速おじさんに話し掛けられた。「あのうスイス庭園はこっちでいいんですか」「は?・・・ここはキャンプ場ですよ」「ええ」「上の分岐から行くんじゃないですか」「こっちからでも行けますか」かつりんは呆れて「地図でも見たらどうですか」「はい、どうも」続いておばさんに話し掛けられた。「あのう、はしば山はここを真っ直ぐ行けば登れますか」「はしば?・・・」ぴんときた。「鷲羽ですか」「あっ!そうです、たしか鷲羽」雲ノ平というとどの登山口からでも1泊以上しないと到達できない、北アルプスでも最も山深いところだと思っていたが、こんな連中がひょこひょこと歩いているなんて、ずいぶんと俗化しているのだなあと思うと少し悲しかった。
気を取り直して散策開始。アラスカ庭園は遠いので寄らず、そのかわり祖母岳などで必要以上にゆっくりした。スイス庭園からの水晶岳はきりっとして立派だった。夕焼けの水晶も見たくてもう1泊しようかとも思ったが、鷲羽に登りたいという相棒Kの意見を採用した。この時間から、重装備での鷲羽越えは我々の実力では無理と判断し、今日は最短ルートで三俣に行って翌朝サブザックでピストンすることにした。2日前、急登から見上げて登りたいと強く願った鷲羽に早くもアタックできると思うとわくわくしてきた。
遭難事故があったらしく、山荘にはひっきりなしに無線連絡が入り、どことなく空気がぴりぴりしているようだった。
散策時の写真集はこちらへ)

11:24 雲ノ平発

散策を終えて9時半過ぎにテントに戻ってきたときにはすでに日は高く、閉め切ったテントの中はひどい暑さであった。幸いにも沢が近かったので、タオルを冷たい水にひたしてよくしぼり、汗を拭いながら撤収作業を進め、11時半頃には出発できた。ところで、撤収作業をしていると、沢から人が登ってきた。そこに富山県警のヘリが飛んできて、我々の目の前でその沢ヤさんをピックアップして飛び去っていった。県警の隊員だったのだろうか。遭難事故は沢で起きたのだろうか。なんとなくもやもやとした不安を残したままの出発となった。

12:02 分岐通過

分岐から祖父岳を見上げる
分岐から祖父岳を見上げる
分岐から、先行者がいたので後をついて登っていった。しかしイヤな予感がしてきた。ペンキマークがないのだ。だが踏み跡は明瞭すぎるほどで、ひとりやふたりのものではない。実は写真の左の線が昨日の道で、右の線が先行者の通った道である。先行者は雪田を右に大きく迂回して岩の上をずっと歩き、そのまま、歩きやすい右の道を正規ルートと思ってしまったようだ。踏み跡にもすっかり騙された。しかし昨日のもろくザレた急斜面よりも、巨岩が累積していてはるかに歩きやすかったので、構わずに進んだ。道は中腹くらいから急に踏み跡が不明瞭になり不安になってきた。先行者はもう影も見えない。正規ルートとの間にはハイマツがあり、戻るにはいったん分岐付近まで下りてから登り返すしかないようだ・・・

12:38 祖父岳登頂

祖父岳から槍ヶ岳を望む
祖父岳から槍ヶ岳を望む
しかしそのまま登りつめると山頂直下にたどりついた。ふう。そこには×印の付いた岩があった。
山頂からは穂高が雲に隠れている以外は周囲はよく見渡せた(ぐるぐる写真)。昨日「ピークはいらない」と思ってしまった怒りは解けたようだ。

13:01 祖父岳出発

難所
難所を振り返り見る
さて、昨日も通った難所である。ここは登りより下りの方が緊張する。ロープだけならともかく、ロープで下りたあとの岩がいかにも滑りそうなのが気に入らない。しかも片側は切れ落ちていて、滑落したら大事故になるのは必至である。ロープを使っている間はストックは邪魔だが、そのあとの滑りそうな岩では、重装備でもあるのでストックを使ってバランスをとりたいところだ。相棒は重装備での岩よじり系を多少苦手としているので、昨日一度通って様子を知っていたのは幸いであった。
ここ以外は快調に下っていった。

13:50 岩苔乗越

黒部源流に咲くハクサンイチゲ
黒部源流に咲くハクサンイチゲ
ここから黒部源流の分岐を目指して沢沿いに下る。道は、大岩が転がっていたり、ほとんど川になったりと忙しい。
この沢が黒部川の本当の源流なのだと思い、最初の1滴目を見たかったのだが、上流部はどこも残雪だらけでよくわからなかった。往きに、源流分岐の周辺にも雪が大量に残っていたのを覚えていたので、それが見えればあと少しだろうと思ったのだが、実はそれからも結構長かった。

15:22 源流分岐

三俣へと続く道
三俣へと続く道
予想以上の長いだらだら下りで結構バテた。水を補給してすぐに出発。もうあとは知っている道だし、まあ遅くとも17時までにはキャンプ場に着くだろう。道端のコバイケイソウなどを眺めながら、休み休み、ゆっくりと登っていった。

16:15 三俣キャンプ場着

予想以上にテントは多かった。目をつけていた隠れ家も入居者がいたので、仕方なく水場の近くの砂州に陣取った。水流の跡を見ると、ぎりぎりテントの広さだけ陸地があった。しかし不安なので雲ノ平に引き続きここでも治水工事をすることになった。ここの砂利は質がよく加工しやすいのでたいへん楽しかった(要するに子どもの砂遊びと同じなわけです)。

三俣にて

今日の夕食はナスのぴりから炒め、ひじきサラダマヨネーズ味。
この夜、時計の電池が切れてしまい、ウンともスンとも言わなくなってしまった。今まで記録してきた温度や高度がパァになってしまった。そういえば前はここでカメラの電池が切れたんだったっけ。
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