【第四章 モルヒネの副作用】


 

【4.1】「モルヒネの副作用一般について」


 
【4.1】
 癌患者の痛みにモルヒネを使用し始めても、副作用対策が不十分だと投与を続けられなくなり、疼痛治療成績は低下してしまう。モルヒネの長期反復投与に際しては副作用防止策を確実に行うことが極めて重要である。特に消化器系の副作用は適切な投与量でも発生するため、発生してから対処する方針よりも、予防してしまう心構えで対処するのがよい。
,臨床と薬物治療(1990),,58,43

 
【4.1】
 モルヒネの副作用としては、呼吸抑制は少なく、便秘は必発し、初期に嘔気眠気を生じる。
,臨床と薬物治療(1989),,45,162

 
【4.1】
 モルヒネのほとんどの副作用(幻覚、発汗、薬剤過敏症など希な副作用も含まれる)はモルヒネ投与開始直後から現れる。長期投与した後に現れたら、モルヒネ以外の原因を考えるべきである。
,癌患者と対症療法(1995),6,1,55


【4.1】
 高用量、または長期間、もしくは腎不全が進行しているときにオピオイドが投与されているときに、ミオクローヌス、せん妄、痛覚過敏、幻覚、難治性嘔気が生じる。これらの症状に最も影響するのがオピオイドの活性代謝物の蓄積である。対策として、まず水分投与、次いでオピオイドの変更、潜在的な代謝機能低下の改善、症状の治療の順となる。
 もし、経口的水分摂取が制限されるなら、非経口的に補液を始める。非経口的な補液のうち、経皮的方法が簡便であると考えている。たとえば生理的食塩水80〜100mL/時。このときスプラーゼを輸液1リットルにつき150単位加える。
 脱水は意識障害を引き起こす。補液は適切な腎機能を維持し、オピオイド代謝物の蓄積を避けられる。
,エドモントン緩和ケアマニュアル(1999),,,24

 
【4.1】
 モルヒネには、心血管系に対する作用が非常に少ない。また、肝毒性や腎毒性がない。
,医療麻薬の利用と管理’95(1995),,,72

 
【4.1】
 モルヒネ投与中の患者で、嘔気眠気混乱などが出現してきたら、肝・腎機能と共に高カルシウム血症をチェックする必要がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,6

 
【4.1】
 モルヒネ投与で疼痛と副作用のコントロールがついている骨盤内の癌の患者さんで、急に副作用が出た場合は、水腎症によってモルヒネの副作用が過剰に出現したことを疑わなければならない。
,ターミナルケア(1995),7,1,6


【4.1】
 呼吸予備力が低下しているいかなる場合(肺気腫や脊柱後側弯、重度肥満)でも、オピオイドの使用には注意が必要である。ヒスタミンを遊離するオピオイドは喘息発作や気管支収縮を生じる場合がある。咳嗽反射の抑制や分泌物の乾燥化も生じうる。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,57

 
 

【4.2】「モルヒネの副作用としての便秘」


 
【4.2】
 モルヒネを長期反復投与する限り、ほとんど全例に便秘が起こる
 その治療にはプルゼニド(2錠から3→4→6→8→10錠/日)が最もよく使用される。ラキソベロン(10滴から15→20→25→30滴/日)もよく用いられる。酸化マグネシウム(1.5〜3g/日、2〜3分服)はよい補助的効果をあげる。
 どの緩下剤にも必要投与量に大きな個人差があるため、平常通りの便通の確保に必要な投与量を用いなければならない。

,臨床と薬物治療(1990),,58,43

 
【4.2】
 モルヒネによる便秘には耐性が出来ないのでモルヒネの服用中は緩下剤を必ず併用する。
,臨床と薬物治療(1990),,58,43

 
【4.2】
 麻薬性鎮痛薬の投与に伴い出現する便秘には予防的な下剤の投与が必要となる。
 緩下剤は同じ作用の薬剤を多く投与するより、軟便剤と蠕動刺激剤を併用するなど作用の異なる薬剤を併用する方が効果的である。
,痛みの薬物療法(1990),,,199

#1
【4.2】
 モルヒネによる便秘に対し、プルゼニドは1日量として1〜2錠ずつ増量していき、1回量が多くなったら2〜3回に分けて服用する。ラキソベロンは5滴くらいずつ増量していく。いずれの薬剤も、常用量とは関係なく排便が得られるまで使用量を増やすことを心がける。
 緩下薬を2〜3日続けて増量しても排便がみられない場合、ビサコジル坐剤浣腸を使用する。緩下薬投与中に下痢になった場合は緩下薬を中止し、普通便になってから下痢になる前の量に戻して再開する。硬便や宿便があれば適時摘便を行い、ビサコジル坐剤や浣腸を使って排便を促進させる。

,緩和ケアテキスト(2002),,,51

      参照→(ビサコジル坐剤)
      参照→(浣腸)

#1
【4.2】
 モルヒネによる便秘に対し、ほとんどの患者で「大腸刺激性下剤」+「浸透圧性下剤」の併用により、良好なコントロールが得られている。
 この併用により便秘が改善しない場合には、同一の作用機序を有する下剤、例えば大腸刺激性下剤であっても、センノシド(プルゼニド)からピコスルファート(ラキソベロン)に変更(あるいはこの逆のパターン)することで良好な便通が得られる場合もあるので、同一作用機序のいくつかの下剤を試してみることも必要である。
 また、便通はあるものの排便後に爽快感が得られない患者に大柴胡湯7.5g/日を併用し、排便はより順調になり、爽快感が得られた症例も報告されている。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,270

#1
【4.2】
 モルヒネの副作用としての便秘の治療に有効な薬剤がいくつかある。クエン酸モサプリド(ガスモチン)【適応外】はセロトニン(5HT4)受客体のアゴニストで、胃から結腸まで広範囲の消化管蠕動を亢進させる。蠕動亢進よる腹痛が少なく、刺激性下剤と膨張性下剤を併用しても便秘>が改善しない場合に追加投与すると有用である。
,わかるできるがんの症状マネジメント2(2001),,,66


【4.2】
 食事摂取が1〜2割でもできている状態であれば、緩下剤の内服は続ける。
 腹部膨満感があれば浣腸も行う。浣腸により排ガスを促すことにもなり、腹部膨満感の緩和になる。少しでも排便があり、排ガスがあることで、経口摂取が可能になる。
 ほとんど経口摂取ができていない状態においても、少量ずつ摂取されていれば、便として大腸内に貯留してくる。これが長時間大腸内にとどまっていれば宿便となり、便秘の状態となる。
 ほとんど食事をとっていなかった患者が死亡数日前になり、多量の便を失禁するという状態をみても、排便を促す処置は必要であるといえる。

,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,84


【4.2】
 経口摂取や経管栄養が行われていなくても便秘は生じうる。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,141

#1
【4.2】
 患者に便秘の定義を説明してもわからないケースが多い。
 排便回数を画一的に1日1回で調整するのは困難なケースも少なくない。自分が便秘なのか判断できない患者には、次のように説明している。
「”排便時に痛みがある”場合を“便秘”と思ってください。」
 痛みがある患者では、排便時に「りきむ」ことで痛みが増強するため、「りきまない]で排便できる固さに下剤を調節するように説明することが大切である。具体的には、次のように説明している。
「1日に1回便通があっても、排便時に痛みがあれば便秘です。逆に3〜4日に1回しか便通がなくても、痛みがなければ、便秘ではありませんから、安心してください」
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,271

 
【4.2】
 便秘管理の目標で、大切なのは排便回数(排便間隔)よりも、便の性状が兎糞状であるかどうかという点と、排便に困難を感じたり残便感や腹部膨満感などの症状を認めるかどうかという点である。
 これらの症状があれば、排便誘導を積極的に行い、症状がなければ24〜48時間のうちに排便をみればよいと考えるのが妥当な考えであろう。
,ターミナルケア(1995),7,1,11

 
【4.2】
 (緩下剤の使用法)
 センナ製剤は2日間便通がなければ増量する。セノコット0.7gはプルゼニド1錠分に相当する。
,終末期医療(1991),,0,26


【4.2】
 癌患者の便秘に対してセンノサイドの場合は1回12〜24mgを就寝前内服。高度の便秘には1回96mgまで増量。
,最新緩和医療学(1999),,,105

 
【4.2】
 (モルヒネの副作用としての便秘に対するラキソベロンの使用法)
 就寝前10滴を開始量とし、下痢を生じたら5滴に減量、2日たっても便通がなければ15滴に増量。以降も便通が不十分なら20−40−60−80滴と増量する。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,109
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,113

#2
【4.2】
 モルヒネ投与量が増えるにしたがい、緩下薬の必要量が増えることが多いが、患者群全体をみると、モルヒネ投与量と緩下薬の必要量との間には相関関係がみられない。しかし、投与量の一般的な目安を知っていれば、適切な開始量を決めるときに役に立つ。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,132

#2
【4.2】
 便秘の防止に必要となる緩下薬の量にはかなりの個人差があり、モルヒネの投与量との相関もないと考えて対処すべきで、平常の便通を維持できる量が緩下薬の適量と考えてください。場合によっては、浣腸、坐剤、摘便、食事の工夫も必要です。
,Q&Aがん疼痛緩和対策のアドバイス 第2版(2002),,,33

 
【4.2】
 カサンスラノール製剤の最大量投与も無効なら、投与量を半減し、浸透圧性緩下剤(小腸洗浄薬)たとえばラクツロースシロップ【適応外】30mL 1日3回を加える。
 また、カサンスラノール製剤で疝痛を生じるときは、ラクツロースシロップ20mL〜40mLの1日1〜3回投与に代える。ラクツロースは、大腸刺激症状の既往がある患者や、センナなどの蠕動刺激薬で痛みが起こる患者に使用すると良い。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,74


【4.2】
 排便が固い場合、浸透圧性下剤(例えば、軽度の場合にはラクツロース、重度の場合には硫酸マグネシウム)を投与する。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,141


【4.2】
 便秘に対しラクツロースの作用には数日かかる場合がある。慢性投与でより有効である。悪心を生じ、ガスによる腹満を生じる場合がある。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,140


【4.2】
 便秘にラクツロースを投与して胃膨満を生じる場合、ガスを緩和するには、ラクツロースの中止ではなく、活性炭製剤を投与する。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,142

 
【4.2】
 便秘が続くと腹部膨満感が現れ、対処しないと宿便や麻痺性イレウスに発展する。
 宿便の場合、単に便通がないだけでなく、少量の水様便が頻回に排泄されることがある。排便があったと安心せず、直腸内の指診を行い便塊の除去を行わなければならない。

プルゼニドの最大投与量は15錠の報告がある。
,モルヒネの副作用対策(1990),,3
,最新医学(1990),45,5,990

 
【4.2】
 便秘が長期にわたっている場合は、一般的な方法よりも、オリーブ油浣腸が有効である。オリーブ油80mLを直腸腸内に注入し、肛門にタンポンで栓をして一晩おき、固まった便を軟化させて排泄させる。患者に一晩臥床を強いなければならないが、苦痛なく早期に解決できる方法である。
,ターミナルケア(1995),7,1,21

 
【4.2】
 1・2・3浣腸はオキシドール20mL、グリセリン(またはオリーブ油)40mL、2%石鹸水(または微温湯)60mLを混合して直腸から注入する方法である。非常に頑固な宿便があるときに有効であるが、直腸粘膜にびらんがある時には適さない。
,がんの症状マネジメント(1997),,,42

 
【4.2】
 直腸診にて硬便が触知されれば摘便を行う。摘便後、まだ宿便が残っているようであれば、レシカルボン坐薬テレミンソフト坐薬を使用する。坐薬使用後、まだ宿便がとりきれないときには浣腸を行う。
,がんの症状マネジメント(1997),,,42

#2
【4.2】
(ビサコジル坐剤:テレミンソフト)
 坐剤は、挿入後から溶解するまでに30分を必要とする。
ビサコジル坐剤(テレミンソフト)の挿入後5分以内で排便した場合の理由は、肛門と直腸粘膜への接触刺激によるのであって、薬理作用によるのではない。
20〜30分後の排便反応は、薬が吸収され、水酸化され活性代謝物となって作用した結果である。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,134

 
【4.2】
 グリセリン浣腸や下剤で解決しない便秘のときは微温湯による洗腸が効果的である。洗腸時に排便がなくても1〜2時間後に大量の排便があることがある。
,JIM(1992),2,5,384

 
【4.2】
 宿便になったときの対応策としては、とにかく便を出すこと。硬い宿便の存在を直腸触診で確かめたらオリーブ油120mLの停留浣腸を行い、一晩停留しておく。その前投薬として少量のジアゼパムの静注を考慮してもよい。次いで肛門から注意深く指を入れて糞塊を少しずつ崩しながら除去する。ジオクチル・ナトリウム・スルフォサクシネート300mgほどを100mLの水に溶いて注腸すると便塊はさらに柔らかくなる。ここで等張食塩水の高位浣腸(または石鹸浣腸)を行う。
 柔らかい宿便の時にはテレミンソフトを反応があるまで1日1回使う。
癌患者と対症療法(1996),7,,61

#1
【4.2】
 宿便の時の便塊が硬い場合は、夕方ピーナツ油浣腸を行い、翌朝まで停留させておき、次いで10〜20mgのテレミンソフを使い、次いで塩類浣腸を行う。これで排便がないときには、用手摘便を試みなければならない。用手摘便を行うときには、ベンゾジアゼピン系の薬を前投薬する必要がある。前投薬としては、ワイパックス2mgの経口投与または静脈内注射、あるいはドルミカム2mgの経口投与または皮下注射を行う。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,35

 
【4.2】
 (副作用としての便秘)
 経口投与が不可能な症例で、皮下・静注などでモルヒネを投与している場合に、浣腸でも排便がないときにはプロスタルモンFの点滴が必要となる。
,がん患者の痛みの治療(1994),,,89


【4.2】
 モルヒネの副作用としてのまれな難治性便秘の症例では、腸管粘膜が正常であれば、経口ナロキソン投与(0.4〜0.8mgを効果が得られるまで4時間毎)を24〜48時間を超えない短期間に試みてもよい。この経口拮抗薬は、腸管のオピオイド受容体に選択的に作用すると推定される。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,321

#2
【4.2】
 患者に用を足させるための、プライバシーを守った環境を提供することも、実は重要な因子であることも忘れてはいけない。
,ペインクリニシャンが関わる緩和医療(2002),,,112

      参照→【5.1.3】(便秘に対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.3】「モルヒネの副作用としての嘔気、嘔吐」


 
【4.3】
 モルヒネによる嘔吐は原則として、投与経路による発生率の差はない。すくなくとも1/3の患者に発生するといわれており、制吐薬を必要としないのは、モルヒネ投与患者の1/3ともいわれ、発生頻度が高いので、モルヒネ投与開始と同時にすべてのモルヒネ投与患者で制吐薬を併用しても良いとする意見もある。軽度の嘔気を感じてもそれを訴えない患者がいることも考慮しておく。
 催吐作用への耐性は比較的早く発生するため、制吐薬が必要な期間はモルヒネの投薬開始からおよそ2週間であることが多い。2週間たったら制吐薬を中止あるいは減量しても大多数の患者で嘔気は起こらない。
 制吐剤にも副作用がありうるので、その場合には他剤に切り替える。制吐剤を2剤併用すると効果が増強する。

,臨床と薬物治療(1990),,58,44

 
【4.3】
 モルヒネによる悪心嘔吐は投与開始後1週間が最も著しく、その後徐々に軽減して約2週間で消失するか、軽減する。
 この期間に投与を中止すると嘔気は消失するが、再開するとまた出る。このように投与と中止を繰り返していてはいつまでたっても嘔気からは解放されない。コツはモルヒネの初回量を十分(1日40mg以上)投与すること。少量では除痛が不十分で副作用だけ出て患者が拒否してしまう。患者に一度十分な除痛を経験させると「この程度の嘔気なら痛みより我慢し易い」といって服薬を希望する。

,癌の痛みハンドブック(1992),,99

#1
【4.3】
 モルヒネによる吐き気は通常、耐性が早期についてくる場合が多いが、最も大きな問題はそれが患者に説明されていないことである。そして、それに対する対策があり、予防的にそれを投与することによって嘔気を経験することもなくなることを説明することによって、副作用に対する恐れは軽減させることができる。
,オピオイド治療(2000),,,50

 
【4.3】
 モルヒネによる吐き気には3つの原因がある。
(1)第四脳室にある化学受容器引き金帯(CTZ)を直接刺激し、その刺激が嘔吐中枢(VC)に伝わり嘔吐を引き起こす。
(2)前庭器を介してCTZを間接的に刺激し、VCに伝達される。
(3)胃前底部の緊張により運動性が低下し、胃内容物の停留が起こる。この停留による圧増大が求心性神経を介してCTZ、VCを刺激する。
などが挙げられる。
 モルヒネによるこうした吐き気・嘔吐は、投与初期や増量時にみられる。しかしモルヒネの投与量が適正である場合、連用により耐性が生じ、吐き気・嘔吐は消失していく。

,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,112

 
【4.3】
 吐き気の対策マニュアル(国立がんセンター中央病院薬剤部)(一部改変)
【モルヒネ使用中の患者から吐き気の相談があったとき】 【ポイント】状況の把握(発現時間、増量の様子等)、受診可能かどうか
質 問 「服用して何時間経過後に吐き気を生じたか?」
回 答   吐き気の出現時間とTmaxが重なっている場合
    参考)モルヒネ水:30分〜1時間
       アンペック:1〜2時間
       MSコンチン:2〜4時間
原 因   モルヒネがCTZを直接刺激していると考えられる
対処法 ●制吐薬としてドパミンD2レセプター拮抗薬を推奨する(セレネースノバミンウィンタミン等)。
●Cmaxを低下させるようなモルヒネ投与法への変更→1日量を変更せずに投与回数を増やして1回量を減量する。
●当院受診不可能な場合:近医で制吐薬を処方してもらう。
質 問   「どのようなときに吐き気を生じたか?
回 答   乗り物に乗ったとき、あるいはその後に吐き気を感じた(乗り物酔いのような吐き気)。
普段横になっているのに立って体を動かしたときに起こった(ふりむく、起き上がる、眼球を動かすなどの体動時)。
原 因   モルヒネが前庭器を過敏にしていることが考えられる(前庭器からの刺激による吐き気・嘔吐)
対処法 ●制吐薬として抗ヒスタミン剤を推奨する(トラベルミン等)。
●当院受診不可能な場合:トラベルミンならば、薬局でも購入可能。
質 問   「食事との関係は?」
回 答   食事時間のときや食後に吐き気が生じた。
原 因   モルヒネによる胃内容物の排泄抑制や胃噴門部の緊張の高まりが原因と考えられる
対処法 ●モルヒネのTmaxと食事の時間をずらすようにする。
●制吐薬として消化管の運動促進薬(ナウゼリン、プリンペラン等)

その他、上記のいずれでも対処できない場合。
対処法 ●作用機序は不明であるがステロイド剤が効く場合もある。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,112
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,117


#1
【4.3】
 (モルヒネと抗癌剤による吐き気の違い)
 嘔吐中枢(VC)が刺激される経路は大さく4つに大別される。
(1)chemoreceptor trigger zone (CTZ)が刺激されてVCに至る経路。
(2)消化管や肝の神経終末から刺激が迷走神経や交感神経の求心路を通り、一度CTZを経て、あるいは直接VCに至る経路。
(3)前庭器官からの刺激がVCに至る経路。
(4)大脳皮質からの刺激がVCに至る経路。

 モルヒネと抗癌剤の吐き気・嘔吐の発現機序は同じであり、判断の基準がなく識別するのが困難である。ただし、抗癌剤の吐き気・嘔吐は上記の4つすべてに起因するが、モルヒの場合には(1)〜(3)が原因であり、(4)のケース、すなわち予測性の嘔吐(anticipatory emesis)を惹起すると明記した文献や書籍はみられない。したがって、化学療法時の制吐療法には大脳皮質に作用するベンゾジアゼピン系のロラゼパム(ワイパックス)、セロトニン拮抗薬などが処方されるほかは、モルヒネの場合も同じ制吐薬が処方される。
 したがって、吐き気・嘔吐が発現している場合、(1)原因薬物の催吐作用が強く、それに対応する制吐薬の投与量が十分でない。(2)上記4つの作用経路をカバーできるように複数の制吐薬を併用する。の2点を考慮する。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,274

#1
【4.3】
 モルヒネによる嘔気・嘔吐は中枢への直接作用によるものであるので、中枢作用の強いプロクロルぺラジン(ノバミン)やハロぺリドール(セレネース)が第一選択であり、末梢作用の強いメトクロプラミド(プリンぺラン)やドンぺリドン(ナウゼリン)は効果が弱い。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,49

 
【4.3】
 モルヒネの吐き気対策として淀川キリスト教病院ホスピスでは、モルヒネ製剤を使うときは始めからノバミンを同時にスタートしている。
,ターミナルケアとコミュニケーション(1992),,28

 
【4.3】
 モルヒネによる嘔吐はドパミンD2受容体を介し、ノバミン、ウインタミン、セレネースなどが有効。一方、5HT3受容体拮抗薬であるカイトリル、セロトーン、ゾフランは無効である。
,今月の治療(1996),4,4,115

#2
【4.3】
「少量のモルヒネで開始すると嘔気が多い」
 投与初期の少量のモルヒネで嘔気が多いことについては、比較対照試験などによる臨床的検討は行われていませんが、多くの医師が吸収の速い皮下注射でのモルヒネ投与よりも吸収のゆっくりな経口投与のときに嘔気が多いという印象をもっています。動物実験によるとモルヒネの50%有効鎮痛用量を1としたとき、消化管輸送能抑制作用、すなわち止瀉作用の50%有効用量は0.02、嘔気・嘔吐に関係すると考えられる脳内ドパミンの変化の50%有効用量はO.1で、これらの副作用はいずれも鎮痛用量よりも少ない量で発現することになります。一方、行動抑制の50%有効用量は2.6、呼吸抑制作用の50%有効用量は10.4で、これらが起こるのは鎮痛用量よりも高用量によってであり、50%致死量は357.5ともっと大量です。これらは動物実験におけるデータですが、参考になるデータです。このような説明から、モルヒネを恐れるあまり少なすぎる量で経口モルヒネを開始すると、鎮痛が少しも得られていないのに嘔気ばかりが起こり、患者に不利益をもたらすことがありうると考えられます。
 ガイドラインやマニュアルが指示している経口モルヒネ投与開始量30〜60mg/日よりも少ない量で開始することをできるだけ避けるべきこと、経口モルヒネ投与開始時から制吐薬や緩下薬の併用が必要とされている背景を理解しやすくさせてくれる考え方です
,Q&Aがん疼痛緩和対策のアドバイス 第2版(2002),,,23

#2
【4.3】
(徐放性モルヒネ製剤による嘔気の発生)
 徐放性製剤は腸管内でゆっくりとモルヒネを放出するため、lag time(服用から鎮痛効果が現れるまでの時間)が1時間以上と、速放性製剤のlag timeの数分間に比べ著しく長い。このことから、徐放性製剤の初回投与後には、鎮痛が得られる前に嘔気が起こってしまうことがあるのではないかと推測されるが、これを証明する比較対照試験は行われていない。
,がん患者と対症療法(2002),13,2,68

#1
【4.3】
・(ノバミン)【適応外】
錠・散 1回投与量 5〜10mg 1日3〜4回
注 投与量 5〜20mg/日、点滴静注
鎮静作用は弱く、錘体外路症状は少ない
第一選択薬

#1
【4.3】
・(セレネース)【適応外】
錠・顆粒 1回投与量 0.75〜1.5mg 就寝前
液剤 1回0.5〜1.0mg、1日3〜4回 注 投与量 1.125〜20mg/日 持続
鎮静作用は強く、錘体外路症状の出現は高頻度
アカシジアなどの副作用に注意

#1
【4.3】
・(トラベルミン
錠 1回投与量 1錠 8時間毎
注 投与量 1A 頓用
鎮静作用、錘体外路症状ともになし
めまい、体動時の嘔気・嘔吐に

#1
【4.3】
・(プリンペラン
錠・散・シロップ 1回投与量 5〜10mg 1日3〜4回
注 投与量 20〜60mg/日 持続
鎮静作用、錘体外路症状ともに少ない
制吐効果は不十分

#1
【4.3】
・(ナウゼリン
錠剤 1回投与量 5〜20mg 1日3〜4回
坐剤 1回投与量 30〜60mg 1日3〜4回
鎮静作用、錘体外路症状ともに少ない
制吐効果は不十分

 
【4.3】
・(ウインタミン)【適応外】
内服1日10〜25mgを4〜8時間毎に投与する。
不安を取り除くことにより鎮痛効果を増強させる。
向精神症状作用あり。
,癌の痛みハンドブック(1992),,121

#1
【4.3】
・(ドラマミン
錠 1回投与量 50mg 1日3〜4回
鎮静作用、錘体外路症状ともになし
めまい、体動時の嘔気・嘔吐に

#1
【4.3】
・(ピーゼットシー)【適応外】
錠 1回投与量 2〜4mg 1日3回
制吐作用も強いが、鎮静作用も強い。
ノバミンセレネース無効時に少量から
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,50

 
【4.3】
・(ドロレプタン)【適応外】
0.05〜0.1mg/kg(筋・静注)
ウインタミン、セレネースより制吐作用は強いが、強い鎮静作用があり注意が必要。
,癌の痛みハンドブック(1992),,134

#1
【4.3】
 (モルヒネの副作用としての吐き気のコントロール)
(1)消化のよい食事を取る。刺激や匂いの強い食物は避ける。
(2)音楽を聞いたり、軽い体操をしたりして精神的な緊張を取り、リラックスした気持ちを持続できるような環境を作る。
(3)吐き気が起こってしまったときには、右を下にして横向きに寝て、腹式呼吸をする。また、冷水でうがいをするなど口腔内を清浄、清涼にする。冷気にあたったり部屋の空気を入れ換える。
 こうした生活の中での工夫も吐き気の予防には有効なこともあるが、吐き気・嘔吐が治まらないようなときは、制吐薬の適切な使用により予防、治療しなくてはならない。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,271

 
【4.3】
 悪心・嘔吐に食事の工夫も予想以上に効果がある。モルヒネ投与開始数日は献立を工夫すると乗り切りやすい。
 また、食前に胃部膨満感が残っているような患者では制吐剤に消化剤や、健胃散.コランチルなどの制酸剤を加えるとよりいっそう効果的なことがある。
,癌の痛みハンドブック(1992),,99

 
【4.3】
 モルヒネによる嘔吐は胃が膨満していると出やすいので1回の食事量を減らし、食事回数を増やす。食後1〜2時間は安静にして胃がからになってから動くと良い。気が紛れると嘔吐しにくいので食後はテレビ、読書などで気分転換する。
,癌の痛みハンドブック(1992),,99

 
【4.3】
 モルヒネ投与を受けている患者の少数にはセレネース等によっても改善しない嘔気、嘔吐を生じることがあり、モルヒネの副作用としての胃内容物の排出遅延によると考えられる。そのときはセレネースの代わりにプリンペラン10mg/回、8時間毎で開始し、最大20mg/回4時間毎に向けて増量するとよい。さらに嘔吐が続くときは数日間にわたりプリンペラン60mg/日を持続皮下注でモルヒネと併用するとよい。
,がんの痛みからの解放 第2版(1996),,,36

#1
【4.3】
 (セレネース、ノバミンで制吐効果が得られない場合)
 併用例「プロクロルペラジンとトラベルミン」、「プロクロルペラジンとトラベルミンとドンペリドン」、「ハロペリドールとトラベルミン」等。
 これ以外にもステロイドが有効な場合があり、特にリンデロン坐剤が効果のあった症例を経験している。
 さらに、MSコンチン錠からアンペック坐剤へ剤形を変更することで対応できた症例もあり、MSコンチン錠に比ベアンペック坐剤の方が嘔吐の発生頻度が少ない印象がある。
 また、吐き気により服用できない場合など、経口から血中濃度の変動の少ない持続注射への変更により吐き気が消失した症例もある。
 十分な制吐療法にもかかわらず管理できない症例ではモルヒネ不耐性も考慮し、他のオピオイドヘの変更を検討する。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,272


【4.3】
 モルヒネの副作用としての治りにくい嘔気、嘔吐に対しては、ゾフラン8mgを錠剤、注射で朝夕に、または持続注入を検討する。
,疼痛コントロールQ&A(1998),,,71

#1
【4.3】
 ノバミン、セレネース、プリンペラン、トロペロン、トラベルミンなどの制吐薬が無効な場合で、リンデロン坐剤が有効な症例もある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,118

 
【4.3】
 ステロイドは嘔吐の抑制の目的で使われ、時に極めて有効である。投与はメドロール16〜32mg(経口)あるいは125mg(静脈内)、プレドニン15〜60mg(経口)、デカドロン3〜12mg(経口)などの報告がある。
,ターミナルケア(1995),5,4,258

 
【4.3】
 モルヒネ投与中の患者で、嘔気などが出現してきたら、肝・腎機能と共に高カルシウム血症をチェックする必要がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,6
(注:モルヒネ投与開始時に出る嘔気はモルヒネの副作用だが、すでにモルヒネ投与中の患者に新たに嘔気が出た場合は他の原因を探るべきである)
#1
【4.3】
 患者の状態が悪化し、肝機能や腎機能障害を伴うようになると、モルヒネの代謝、排泄が妨げられ、副作用が強く現れるようになる。モルヒネの代謝産物であり鎮痛作用を有するM6Gの蓄積によるところも大きい。
 順調に疼痛管理が行われていた患者が、モルヒネの増量もないのに吐き気を訴えるようになったら、このような機序も考えられるので減量を検討する。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,87
(注:腎機能障害の場合はフェンタニルへの変更を考慮する)

 
【4.3】
 経験的に嘔気が問題となるのは1日60mg前後のモルヒネを投与していることが多い。
,モルヒネの副作用対策(1990),,5
,最新医学(1990),45,6,1248


【4.3】
 モルヒネによる嘔気に、トロペロンを1回1mg程度投与した。保険適応はないが強力な制吐作用を有し、他剤で制御困難な吐き気にも対処できた。
 テグレトール、バルビツール酸系、エピネフリンなどとの併用には注意を要するという。
,ターミナルケア(1998),8,2,98

 
【4.3】
 フェノチアジン系薬剤(ウインタミン、ノバミン)はモルヒネの悪心を改善するが、その副作用(低血圧と鎮静)を一層悪化させる。長期の連用による晩発性ジスキネジアには注意。
,癌の痛みハンドブック(1992),,121

#1
【4.3】
 セレネース、ノバミン、ウインタミンでは、副作用として錐体外路症状が起こり得る
 錐体外路症状が出現した場合には制吐薬の減量あるいは中止が望ましいが、吐き気・嘔吐の再発を招きかねないため、減量または中止が困難な症例もある。そのような場合には塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸ビペリデンあるいはプロメタジンなどの抗コリン薬を併用することで、制吐効果を損なわずに、錐体外路症状の緩和が図れる。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,116


【4.3】
 通常フェノチアジン系の薬剤の制吐作用は同じような効果があるが、精神安定効果については薬によって大きな差異がある。制吐効果のみ必要な場合、通常ノバミンを選択する。ノバミンは経口投与から非経口投与に変える場合、同じ与薬量でよいが座薬として投与する場合は、24時間投与量は2倍にすべきである。
,終末期ケアハンドブック(1993),,,124

      参照→【7.4】「緩和医療における向精神薬の使用上の注意」

 
【4.3】
 癌性疼痛及び吐き気のコントロールにモルヒネやレペタンとセレネースやプリンペランの混合注射は可能である。
,ターミナルケアマニュアル第2版(1992),,,149
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,173


【4.3】
 抗ヒスタミン薬のすべてが制吐作用を持つわけではないが、数種の抗ヒスタミン薬には制吐作用がある。作用機序は延髄の嘔吐中枢への直接作用であり、このため全てのタイプの嘔吐に有効である。
,終末期ケアハンドブック(1993),,,125

 
【4.3】
 まれではあるが、制吐薬によってもモルヒネの吐き気がコントロールできずに、モルヒネの内服を断念するときがある。
 このようなときは、適応があれば硬膜外鎮痛法に切り替える。硬膜外鎮痛法で使用するモルヒネは内服や坐薬の与薬量よりはるかに少量なので、吐き気をきたすことはあまりない。また、持続皮下注入法に切り替えて、吐き気が消失したこともある。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,56

 
【4.3】
 制吐剤の使用やモルヒネの投与経路の変更などでも改善しない嘔吐、嘔気の場合、レペタンやフェンタネストなどの代替薬を考慮する。
,ターミナルケア(1995),7,1,44

 
【4.3】
 モルヒネの内服で嘔吐がひどいとき、内服治療にこだわって、モルヒネからレペタン内服に切り替えると、さらにひどい嘔吐をきたす場合もある。注射あるいは硬膜外鎮痛法を選択するとよい。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,56

#1
【4.3】
 淀川キリスト教病院ホスピスの臨床経験では、モルヒネによって嘔気・嘔吐が出現した場合、ブプレノルフィン(レペタン)に変更しても同様の副作用が出現する可能性が高いが、フェンタニルでは出現しにくいと考えられた。せん妄の場合も同様の傾向が認められた。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,73

 徐放性でない塩酸モルヒネ製剤と比べ、MSコンチンの吐き気が多いということは十分に考えられる。

      参照→【3.2.2】「MSコンチン」

#2
【4.3】
 フェンタニルはμ2受容体への親和性が低いため、モルヒネに比べて便秘を生じにくい。したがって、モルヒネからフェンタニルヘの変更時に、緩下剤の調節を行わないと下痢を生じることが多い(モルヒネからの変更時に、動悸、発汗異常、激しい下痢などを伴う退薬現象を生じたとする報告もある)。したがって、モルヒネによる便秘が重症化し、食欲低下や嘔気・嘔吐、あるいは麻痺性イレウスなどを生じるような場合には、フェンタニルは効果的な代替薬の候補になる
,ターミナルケア(2003),13,1,11

#2
【4.3】
 モルヒネやレペタンの副作用対策が困難な45例にフェンタネストの持続皮下注を行ったところ56%の症例で副作用の改善が得られ、鎮痛効果は有効率で65%であった。フェンタネストの副作用は少なく、特に、嘔気、嘔吐や混乱の出現はごくわずかであった。
,ターミナルケア(1995),7,1,46

#2
【4.3】
 フェンタニルはモルヒネと比べ嘔気・嘔吐が少ないことがわかっている。しかし一方で、フェンタニルパッチにおいてはモルヒネと比べ変わらないとする結果と少ないとする結果の双方が報告されている。
,がん患者と対症療法(2003),14,2,52

      参照→【5.3】「デュロテップパッチ」
      参照→【5.1.3】(嘔気・嘔吐に対するオピオイドローテーション)

 
 

【4.4】「モルヒネの副作用としての眠気」


 
【4.4】
 モルヒネの副作用としての眠気の発生頻度はモルヒネ使用患者の約20%である。眠気は一般に投与量と関係するが、少量でも見られることがある。ただし、激痛時は痛みがとれるまでは眠気は出現しない。
 患者や家族はモルヒネ開始とともに眠気が出現すると不安になることがあるので、開始前に「痛み止めで少し眠くなることがあるが数日でなくなるので心配することはない」と説明する必要がある。モルヒネ開始前に痛みのため不眠が続いていた患者は、痛みが緩和すると数日間よく眠ることがあり、軽度の眠気は苦痛とならず、むしろ「気持ちがいい」という患者が多い。寝不足解消のため安心して寝てよいと説明する。
 眠気に対する耐性が早期に出現するので、多くの患者では3〜5日間の様子観察だけで軽減、消失する。原則として痛みがとれるまでは、強い眠気は起きない。したがって痛みがなく眠気が強い場合、過量投与をまず疑い減量する。減量は1回量を3割減で痛みを出現させずに眠気を軽減させるように調節するとよい。
 投与量を減らしても眠気が残る場合は、他の原因を除外した後にリタリン【適応外】の投与を試みる。リタリンは覚醒効果があり1回10〜20mgを朝、昼の2回投与で、眠気の改善に有効である。不眠の原因となるので夕刻以降の服用は原則として避ける。
 また、モルヒネの持続皮下注入法に変更することで、副作用の発生を減少させることが可能である。この方法は痛みに応じて投与量を微調節でき、持続的効果が得られ、血中濃度を非常に安定させ、副作用が出現しにくい特徴がある。

,臨床と薬物治療(1990),,58,46
 
#2
【4.4】
 モルヒネを開始または増量した時に、疼痛が軽減せず眠気ばかりが強まる場合は、モルヒネ無効の痛みである可能性が高い。
 腎機能障害患者の場合は、代謝産物の蓄積を原因とする眠気が発生しやすい。オキシコドンやフェンタニルにはこれら腎機能低下による影響は出にくいといわれている。
 眠気を原因としてオピオイドローテーションを行う場合は、眠気の発生頻度が少ないフェンタニル(デュロテップ)が有利である。
 モルヒネ過量投与時の傾眠傾向であれば、呼吸数低下を伴う場合がほとんどである。このため、呼吸数が正常または頻呼吸で傾眠傾向になった場合、モルヒネ以外の原因を探るべきである。



【4.4】
 モルヒネ投与中の患者で、眠気などが出現してきたら、肝・腎機能と共に高カルシウム血症をチェックする必要がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,6

 
【4.4】
 眠気はモルヒネの過量投与を示す最初の兆候なので、そのときには投与量を半減する。しかし、痛みのため寝不足が続いた患者は、痛みの解消とともによく眠る。覚醒時に辻褄のあった話が出来ればモルヒネの薬理作用による眠気でないと考えてよい。
,終末期医療(1991),,0,28

 
【4.4】
 モルヒネには副作用としての眠気があるが、これとは別にモルヒネを必要とする患者の大部分が「うたたね」をすることが多い。多くの患者はスタミナに限界があり、健康時と違って休息や睡眠を多くとる必要がある。面会時に容易に目覚め、たやすく話をすることができれば休息としての「うたたね」であって患者にとってよいことである。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,197

 
【4.4】
 モルヒネによる副作用の眠気に対して薬物療法を必要とする事は少ない。患者はむしろ心地よい眠気を好むことさえある。もし患者が希望すれば以下のような薬物療法もある。
カフェイン200〜300mg/日。頓用として1回100mg
塩酸エフェドリン100〜150mg/日。頓用として1回50mg【適応外】

,癌の痛みハンドブック(1992),,103

#1
【4.4】
 カフェイン1日量100〜300mgを日中投与または頓服として1回100mg用いる文献もある。また、カフェインを含有し眠気の適応を有する薬剤として、安息香酸ナトリウムカフェイン(アンナカ)がある。アンナカは、散剤および注射剤があるため、経口投与不可能な患者における傾眠対策としても有効であると考えられる。常用量はアンナカ末が1回0.1〜0.6gを1日2〜3回、アンナカ注は、1回0.1〜0.4gを1日1〜3回(皮下、筋肉内または静脈内注射)である。モルヒネの傾眠対策に使用される投与量は不明であるが、カフェインに準じた使用が望ましいと考えられる。いずれにしても、患者の睡眠パターンの正常化を目標とする。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,119

 
【4.4】
 モルヒネ使用時の眠気の原因には、モルヒネ以外にもいろいろあり、鑑別が必要である。脳転移、肝不全の症状としてのうつらうつらした状態をモルヒネによるものと間違えることもある。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,57

 
【4.4】
 眠気、傾眠が強くても、痛みが軽減しなければモルヒネの単独投与では効果が不十分と考えられる。また、投与開始後数日しても傾眠が持続し、衰弱、腫瘍の脳転移、肝不全、尿毒症、電解質異常、血糖値の異常低血圧などの意識障害を生じる原因がなく、投与量の減量で痛みが出現する場合はリタリン10〜20mg/回、朝昼の2回を試みる。
,痛み治療マニュアル(1993),,,54

 
【4.4】
 痛みが消失したが、眠気などの中枢性副作用の出現がTmax(最高血漿濃度に達するまでの時間)前後であれば、1日量を変えずに投与回数を増やすのが良い。
,Cancer Pain Symposium in Tokyo(1994) より

      参照→【5.1.3】(眠気に対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.5】「モルヒネの副作用としての呼吸抑制(過量投与)」


 
【4.5】
 一般的には、鎮痛に用いる適切量では呼吸抑制はまれである。モルヒネの効果は少量から増量すると、まず鎮痛効果、便秘作用、ときには同時に催吐作用が現れる。もっと多い量になると催眠効果、ついで呼吸抑制が現れる。(参照→【2.2.3】「モルヒネの血中濃度と薬理作用の発現」
 したがって、鎮痛効果が得られる経口投与量では呼吸抑制が起こることは皆無に近いため、ワンショットの注射のような危険はない。
 傾眠は、過量投与を示す最初の症状と考えてよい。少量で鎮痛効果が得られる患者では、比較的少量でも傾眠その他の作用が得られるので、投与初期には注意が必要である。
 万一、呼吸抑制が発生したらモルヒネを減量もしくは中止して、顔を横に向けたり肩枕を使用して気道を確保し、必要ならば酸素吸入を行い様子観察で自然に回復していく。ナロキソンを使用したり挿管を必要とすることはまずない。

,臨床と薬物治療(1990),,58,28

#2
【4.5】
 神経ブロックなどによって突然に痛みが消失した場合も、呼吸抑制が起こりうる。
,臨床と薬物治療(1990),,58,48

#2
【4.5】
 モルヒネの呼吸抑制量は鎮痛量の10.4倍であり、モルヒネを適正に用いていれば、稀にしか発現しない。ただし短時間にモルヒネを大量に投与した場合や維持量を2倍以上に増量した場合、また睡眠薬を併用する場合は舌根沈下や呼吸数減少が起こりうる。
,ペインクリニシャンが関わる緩和医療(2002),,,85

#1
【4.5】
 臨床的にはモルヒネ開始後睡眠時に呼吸回数が8回/分以上あれば、問題はない。モルヒネ開始後睡眠時に呼吸回数が6回/分以下となった場合には、覚醒を促したり、場合によってはモルヒネの適量投与も含め、投与量を再検討する必要がある。
,わかるできるがんの症状マネジメント2(2001),,,51

 
【4.5】
 オピオイドの過量投与による副作用発現には一定の方式がある。
 まず痛みがある間(除痛に必要な投与量以下)は呼吸抑制などの副作用は発生しない。
 痛みが消失した後(除痛に必要な投与量以上)で、縮瞳あるいは傾眠傾向となり、これと相前後して呼吸数が減少してきたら注意警報である。
 したがって、オピオイドが投与されている患者では縮瞳傾眠傾向の有無及び呼吸数を必ずチェックする習慣をつけるべきである。

,がん患者の痛みの治療(1994),,,86

#2
【4.5】
(モルヒネによる呼吸抑制が生じたとき)
(1).呼吸抑制が軽度で可逆性と判断されるときは、次の手順でモルヒネ量を調整するなどの単純な対処法で対応できます。
 1.刺激を与え、意識的に呼吸するよう促し、必要なら酸素吸入を行う。
 2.次回分のモルヒネ投与を見送る。
 3.3回目以降のモルヒネ投与量を減量する(50%減をめどとする)。
(2).呼吸抑制が高度の場合
 痛み治療に用いたモルヒネで高度な呼吸抑制が起こることはまれですが、オピオイド拮抗薬であるナロキソンにより薬理学的に改善が必要となります。次の手順に従います。
 1.気道の確保、
 2.酸素吸入、
 3.ナロキソンの投与の順で、退薬症状に留意しながら、できればモニター機器を用いて回復するまで監視します。
(3).ナロキソン投与法
 呼吸数が1分間8回以上あり、覚醒していて、チアノーゼがなければ、上記の(1).に準じてモルヒネを減量または中止で呼吸抑制が時間単位の期間で改善しますが、呼吸数が1分間8回未満となり、呼びかけても覚醒せず、チアノーゼが認められるとき、ナロキソンの適応です。ナロキソンを生食水で400mg/10mLの割合で希釈し、2分間隔で0.5mL(20μg)ずつボーラス静注します。これを呼吸数が回復するまでくり返します。ナロキソンの半減期は多くのオピオイドの半減期よりも短いため、呼吸回復後も観察を続ける必要があります。また、オピオイドヘの耐性が強いほどナロキソンヘの反応が強く現れ、不快な退薬症状が現れるとされていますので、この場合にはナロキソンの開始量を少量とします。患者に処方したモルヒネを孫などの小児が誤って服用した場合には呼吸抑制が最大の問題となるので、在宅患者に対する薬の管理についての指導は、誤用による呼吸抑制の重要な予防法と認識しておくべきです。

,がん患者と対症療法(2003),14,1,87

#1
【4.5】
 モルヒネ投与の限界として強い眠気あるいは傾眠が1つの指標とされているが、あまりにも主観的、曖昧な症状である。
 そこで、宮城県立がんセンターでは呼吸数縮瞳を指標としている。睡眠時の呼吸数が10回/分以下あるいは瞳孔径が3mm以下になれば警戒、呼吸数5回/分以下あるいは瞳孔径が2mm以下は中止としている。

,疼痛コントロールのABC(1998),,,318

#2
【4.5】
(モルヒネの再開)
 過量投与後のモルヒネの再開は、投与した製剤の有効持続時間を過ぎた後、傾眠傾向など過量投与の症状がないことを確認してから再開する。

#1
【4.5】
 モルヒネでは呼吸抑制が最大となるのは静注後5〜10分、皮下注と筋注では注射後30分〜90分、硬膜外投与では遅発性呼吸抑制として知られるように投与後4〜12時間後に呼吸抑制が生じる。
,オピオイドの基礎と臨床(2000),,,11

 
【4.5】
 モルヒネによる呼吸抑制は非常に少ないが、初期投与量を多くしたり、坐薬を使うと現れやすい。(初回モルヒネ坐薬30mgは危険である)
 ただしモルヒネを使用している間は代謝も低下するため呼吸数が減少しても、気道が確保されて肺に病変がなければガス交換は十分に保たれていることが多い。
,モルヒネの副作用対策(1990),,10
,最新医学(1990),45,8,1617

 
【4.5】
 モルヒネの投与によって、呼吸数が10回/分以下になると呼吸数のチェックを頻繁に行うよう指示し、6回/分以下になると、念のため動脈血液ガスの検査を行うようにしているが、検査の結果、PaCO2が50mmHg以上あることはきわめてまれである。さらにPaCO2が50mmHg以上ある場合でも、「深呼吸をしなさい!」と呼びかけると、モルヒネによる呼吸回数の減少の場合は必ず応じるので、まず深呼吸励行を先行すべきである。
 拮抗薬の使用は深呼吸励行の呼びかけにもかかわらず、PaCO2が55mmHg以上が持続する場合と考えられるが、拮抗薬の効果時間は短いので再び呼吸抑制がくるようならば人工呼吸に移行すべきである。

,がん患者の痛みの治療(1994),,,95

 
【4.5】
 臨床的にはモルヒネの薬理作用のうち、呼吸抑制、嘔気、眠気は非常に耐性ができやすく、鎮痛と止瀉は形成されにくい。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,47

 
【4.5】
 ロルファンはモルヒネによる呼吸抑制に通常1回1mgを投与する。モルヒネの多いときはその量の1/50量が通常量。呼吸数が10回/分以下になったら筋注、または静注。1回の注射で2〜5時間作用するが、呼吸抑制が長時間の場合はIVHなどに混ぜる。
,癌の痛みハンドブック(1992),,106

 
【4.5】
 (呼吸抑制時のナロキソン投与法)
 モルヒネの長期投与をしていないときはナロキソン0.1〜0.2mgを静注する。
 長期投与をしていたときは0.01mgを10倍希釈液で1〜2分かけてゆっくり静注。以後、呼吸回数が10〜20回/分を維持できるように0.005〜0.01mgを必要に応じて追加する。
 数日以上麻薬の投与を受けている場合には、ナロキソンの急速投与で退薬症状が出る可能性がある。ナロキソン投与で痛みが出現してきたら投与を中止する。
 ナロキソン投与で呼吸がいったん回復しても、1時間以上は観察を続ける。1時間を過ぎて呼吸が安定してくれば、ほぼ安全と考えてよい。ただし、MSコンチンやアンペック坐剤などのように作用が持続する薬剤の場合には、作用時間が切れるまで注意が必要である。

,痛み治療マニュアル(1993),,,55

 
【4.5】
 モルヒネによる呼吸抑制と判断された場合、製剤やモルヒネ投与量の違いによらず、ナロキソンの1回投与量は0.01〜0.02mg、通常0.01mgの静注で呼吸回数は速やかに増加する。呼吸数が増加しても目標(呼吸数10回/分)に達しない場合は数分ごとに追加投与する。また、呼吸数が目標値に達しても再び減少するようであれば同量を繰り返し投与する。この治療法では、血液中の過剰なモルヒネが多いほどナロキソンの作用時間は短くなり、場合によっては数分で再び呼吸数の低下がみられるが、繰り返し投与することで徐々に効果が延長してくる。投与中に患者が痛みを訴えたなら、ナロキソンの投与量を半減する。
,緩和医療学(1997),,,58

 
【4.5】
 ナロキソンの投与は過剰投与にならないように効果発現まで少量(0.1mg)ずつ、2〜3分毎に静注を繰り返すようにした方が安全である。患者が興奮状態になることがあるので血管確保したのち行うことが望ましい。
,ターミナルケア(1995),7,1,33


【4.5】
 (モルヒネの過量投与の治療法)
 ナロキソンによる治療を目標は呼吸数10〜16回/分で痛みが出現しない状態を維持すること。モルヒネの静注では投与直後が最高血中濃度となり、過量投与の症状も投与直後がピークと考えてよい。ナロキソンの作用時間を過ぎても呼吸数が安定していればほぼ安全と考えてよいが、数時間は十分な観察を行う。
 MSコンチンの場合、水分の経口投与はモルヒネの吸収を促進する可能性が高いので、観察期間中は飲水や経口摂取を避けるべきである。モルヒネの投与再開は観察期間の後、患者に傾眠などがみられなくなった時点を指標とする。
,ターミナルケア(1996),6,1,31

#2
【4.5】
 医原性の呼吸抑制の場合にはナロキソン100〜200μgを静脈内注射し、その後2分ごとに100μgを呼吸機能が満足な程度に改善するまで追加投与する。さらにオピオイドによる吸収が続いて遅発性の呼吸抑制が発生する可能性があることを踏まえ、1〜2時間後に、筋肉内に追加注射することを勧めている。もっと少量が推奨されることもある。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,57

#2
【4.5】
(オピオイド鎮痛薬の医原性過量投与時のナロキソン投与法)(アメリカ疼痛学会の勧告)
 呼吸数が1分間8回ないしそれ以上であり、患者が容易に目を覚まし、チアノーゼがなければ、観察しながら待つ方針をとり、次回の定時投与量の減量または中止を検討する。
 呼吸数が1分間8回未満で、患者が目を覚まさず、チアノーゼがみられるときにはナロキソンの1アンプル400μgを生理的食塩水で10 mLに希釈し、その0.5mL(20μg)を2分ごとに静脈内注射し、呼吸数が十分になるまでくり返す。ナロキソンはモルヒネ(および他のオピオイド鎮痛薬)に比べて作用時間が短いので、追加投与が必要となることが多い

,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,57


  

【4.6】「モルヒネの副作用としての混乱、幻覚、せん妄」


#2
【4.6】
(せん妄とは)
 末期患者における錯乱状態の報告では,特異性を欠いた”錯乱”が共通してみられる。錯乱したとされた患者は見当識障害や不適切な行為、幻覚を感じられ、痴呆やせん妄の医学的診断をされている。医療従事者間の記達を円滑にするため,患者が体験している認識や行為の変化をもとに,常に錯乱の意味を限定しなくてはならない。
 ”錯乱”とされた行為の出現は,急性のせん妄症候群を示す。せん妄は末期患者を管理するうえで深刻な合併症である。せん妄は痴呆とは異なり、十分治癒可能なので,迅速な診断と処置が必要である。
,エンドオブライフ・ケア(2004),,,364

#2
【4.6】
 モルヒネによるせん妄がよく話題になるが、その発生頻度は低い。せん妄が発生すると主治医も家族も驚くため、話題になりやすいであろうが、モルヒネによるせん妄は、他の原因によるせん妄よりも対応しやすく、モルヒネの減量やハロペリドールの併用で対処できる。
,がん患者と対症療法(2002),13,2,68

#1
【4.6】
 痛みの強い進行・末期癌患者がモルヒネの増量や三環系抗鬱薬の開始に伴って精神変調をきたした場合、まずはせん妄の可能性を疑う必要がある。
 幻覚や妄想が特に夜間に明らかで、意味不明な会話が目立ち疎通も不良な場合には、せん妄の診断は容易である。しかし軽度のせん妄の場合、幻覚や妄想が目立たず、疎通も良好で一見したところ意識清明のようにみえることがある。そのためせん妄が見逃され、「痛みのためではないか?」「死への不安や恐怖のためではないか?」と、あたかも心因・反応性の疾患ではないかと誤解されることがある。
 筆者の経験では、モルヒネを主因としたせん妄の特徴は、(1)神経因性疼痛などの緩和困難な痛みがある患者で、(2)モルヒネの増量とともに精神変調が出現し、(3)精神変調に先行してモルヒネが原因と思われる昼間の眠気があった、などである。このような患者に対しては、「現在の季節や日付はいつか?」、「今いる場所がどこか」、「100引く7は? その答えからもう一度7を引くと?」などといった単純な質問をしてみるとよい。疎通が良好で意識清明のようにみえても、これらの質問に間違った答えをするようであれば、せん妄の可能性が高い。
 モルヒネや三環系抗鬱薬が原因と考えられる場合、神経ブロックや放射線療法など他の鎮痛法を積極的に併用し、両薬剤の減量や中止を試みる必要がある。
 せん妄の薬物療法としては、心血管系への影響、呼吸抑制、抗コリン作用などが少ないことからハロペリドールが推奨されており、終末期においては多くの場合5mg/day以下の低用量で効果が認められる。

,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,154

#1
【4.6】
 老人性痴呆が潜在的にある患者の場合には、モルヒネの服用で、夜間せん妄などが誘発されることがある。
 このような症状がみられたらモルヒネの使用の有無に関係なく、ハロペリドール(セレネース)【適応外】を使用する。この薬は1錠0.75 mgで、0.75、1.5、2.25と徐々に増量していく。セレネースの使用後、2〜3日しても混乱状態がおさまらないような場合には、代替オピオイドを使う。

,ホスピスケアの実際(2000),,,14

 
【4.6】
 モルヒネによる混乱、幻覚は、非常にまれであり1〜2%と報告されている。末期癌患者には混乱が比較的発生しやすく、モルヒネ由来のものか、他に原因があるのか鑑別することが重要である。とくに高カルシウム血症による混乱が見逃されることがあるので注意する。
 対策としては、痛みのない場合は、まず減量する。減量は1回量を3〜5割減にしてみる。
 混乱の治療としては、セレネースが第一選択である。内服可能であれば、セレネース液【適応外】が使用しやすい。1回0.5mgを1日4回から開始して状態を見ながら増減するとよい。

,臨床と薬物治療(1990),,58,47


【4.6】
 モルヒネの副作用としての混乱に対し、内服困難な場合は、セレネースの5〜30mg/日の持続皮下注入または持続点滴静注を行う。セレネースの注射液は、内服薬と投与量が全く異なるので注意する。(注射薬を内服薬として使用してはならない)
,最新緩和医療学(1999),,,55

 
【4.6】
 モルヒネ投与中の患者で、混乱などが出現してきたら、肝・腎機能と共に高カルシウム血症をチェックする必要がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,6

 
【4.6】
 末期癌の患者には高カルシウム血症が出現することがよくある。モルヒネ使用中に混乱が出現した場合は、高カルシウム血症を除外することや、そういうものがあることを念頭に置いて見ていくことが大事である。
 まず、他の薬物(例えばH2ブロッカーでも混乱は出現する)、またはモルヒネも含めて薬物による混乱を疑い、最小必要限に薬物を減らし、場合によっては中止することが大切である。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,76

 
【4.6】
 モルヒネに対する誤解として「頭がおかしくなる」がある。確かにモルヒネによる混乱はあるが、わずか数%である。仮に混乱が出現しても、適切に対応すれば臨床上問題となることはほとんどない。
,がんの症状マネジメント(1997),,,41

 
【4.6】
 モルヒネによる混乱・錯乱は全体の約2%ぐらいに現れる。高齢者と肝機能障害患者に時々起こることがある。この場合、セレネースを1日2mg投与すると治まる。
,ターミナルケアとコミュニケーション(1992),,29

 
【4.6】
 まれではあるがモルヒネによる錯乱は高齢者に起こりやすい。このため増量は時間をかけてゆっくり行う。あらかじめ患者によく説明し理解を求めることも重要である。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,198

【4.6】
 モルヒネによる錯乱、めまい、不安感は高齢者で数日にわたってみられる事がある。あらかじめ、本人や家族に説明して眠気の場合と同じように対処すると数日で消える。
,がんの「いたみ」克服の知恵(1998),,70

 
【4.6】
 モルヒネによる錯乱、幻覚は比較的少なく、投与初期に見られ数日で改善することが多い。
 衰弱、腫瘍の脳転移、肝不全、尿毒症、電解質異常が原因であるので十分に鑑別する。鎮痛後2〜3日しても改善がなければ、投与量を30〜50%減量してみる。
 鎮痛が不十分であればNSAIDsを併用、改善がなければセレネースを併用する
か、モルヒネを徐々に減量、中止した後にレペタンに切り替える。
,痛み治療マニュアル(1993),,,55

#2
【4.6】
 悪夢、幻覚があれば、ハロペリドール(セレネース) 0.75〜1.5 mgを就寝前に服用するとよい。特に、夜間せん妄で点滴を抜いたり、大声をあげてしまう場合は、鎮静剤で睡眠を確保する必要がある。
 ミダゾラム(ドルミカム)の持続皮下注入法か持続静注法で、確実な睡眠時間を取り、1日の生活にメリハリをつける。ミダゾラムは、短時間作用性の鎮静剤で、21時〜6時といった投与期間で10mg〜30mg のように使用すると、朝食時には眠気は軽快している。状態が悪い患者では、呼吸抑制の副作用もあるため、9時間で5mg〜10mg から開始して増量していく。
 患者に「最近、忘れっぽかったり、話が飛んでしまったり、またはつじつまの合わないことはありませんか」と聞いてみて、本人も混乱について悩んでおり、おかしくなったり、気が変になったのではないかと心配していたら、“気が変になったわけではないこと”を伝える必要がある。
 また、家族も対応に困っていたら、おかしな話の内容を責めたり、そのたびに訂正するのではなく、そのまま受け入れていくよう援助もする。

,モダンフィジシャン(2003),23,3,336

 
【4.6】
 ターミナル後期においては薬剤性の混乱に十分注意する。
 薬剤性混乱は原因薬剤の減量・中止で改善する。淀川キリスト教病院のホスピスの調査では、モルヒネと抗コリン薬(ハイスコ)によるものが多かった。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,10
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,26


【4.6】
 パーキンソン症候群はフェノチアジン系薬物投与患者の約15%に生じる。進行癌患者での頻度は高い。高齢者に最も多く、その頻度は50%に近い。女性は男性の2倍の頻度。通常、原因薬物投与開始後5〜30日後に生じる。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,236

 
【4.6】
 モルヒネによる錯乱・せん妄がみられた場合、モルヒネの減量やフェンタネストなどへの変更、またはセレネース(1回0.75〜1.5mg、2〜4回/日経口投与。緊急時には2.5〜5mg筋注・静注も可能)の投与も検討する。
,ターミナルケア(1995),7,1,32

#2
【4.6】
(終末期における譫妄の薬剤による治療)
 軽症の場合はチアプリドが血中半減期も短く、25〜100 mg を夕食後や就寝前に使用する。中等度以上の場合はハロペリドールの有効性が多くの報告で支持されており、0.5〜5mgをその状態に応じて経口、皮下、筋肉、静脈内投与する。近年錐体外路症状の副作用が少ないリスペリドンが使用可能であり1〜3mgから開始する。他にはクロルプロマジン、チオリダジンなども用いられる。ロラゼパムとハロペリドールの併用の有効性が報告されているが、ベンゾジアゼピン使用は意識低下をきたし、逆にせん妄を悪化させることがあるため、使用には注意が必要である。
,モダンフィジシャン(2003),23,3,402

#2
【4.6】
 認知障害(幻覚を伴う活動型のせん妄)にはモルヒネの減量またはハロペリドール(セレネース)3〜5mgを直ちに、次いで頓用、必要に応じて他のオピオイドヘ変更を行う。あるオピオイドが強いせん妄を起こしても、他のオピオイドでは起こらない。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,46

#1
【4.6】
 淀川キリスト教病院ホスピスの臨床経験では、モルヒネによって嘔気・嘔吐が出現した場合、ブプレノルフィンに変更しても同様の副作用が出現する可能性が高いが、フェンタニルでは出現しにくいと考えられた。
 せん妄の場合も同様の傾向が認められた。

,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,73

#2
【4.6】
 モルヒネによるせん妄が出現した場合、現在はフェンタニルの貼付製剤であるデュロテップパッチが癌性疼痛の保険適応で使用可能であり、有用性が報告されているオピオイドローテーションを積極的に試みるとよい。ただし上記製剤は投与量の微調節が困難であるため、疼痛緩和が不十分な場合は、躊躇せずフェンタネストの持続皮下注・静注に変更が必要である。
 電解質異常が原因の場合も、治療によりせん妄の改善が期待できる。
,モダンフィジシャン(2003),23,3,402

#2
【4.6】
 モルヒネに起因する有害事象、特に幻覚を伴うせん妄がある場合はモルヒネからオキシコドンに変更(オピオイド・ローテーションまたはオピオイド・スウィッチング)したほうがよいと多くの研究者が述べている。臨床的には、腎機能障害を有する患者の場合、オキシコドンを選択した方がよいとされている。
,日本病院薬剤師会雑誌(2004),40,1,81

      参照→【7.4】「緩和医療における向精神薬の使用上の注意」
      参照→【5.1.3】(せん妄に対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.7】「モルヒネの副作用としてのふらつき感」


 
【4.7】
 モルヒネ投与開始時にふらつき感が高齢者や全身衰弱の強い患者に起こることが希にある。この場合、患者には心配しないで様子を見るように説明する。ほとんどは数日で消失する。
,臨床と薬物治療(1990),,58,48

#1
【4.7】
 モルヒネの副作用としての、ふらつき、めまい、浮遊感などで表現される不安定感には容易に耐性が形成されるため、数日間安静を保つのみで軽減あるいは消失することが多い。
,オピオイドのすべて(1999),,,59

 
【4.7】
 モルヒネによるふらつきの対処の仕方として、原則的には患者によく説明し消失するまで増量を控えて投与を続け消失してから増量する。
 ただし少量のモルヒネでもふらつきが出現する患者(モルヒネ不耐)もいるので次の処置をする。
(1)患者に数日で消失することをよく説明し理解が得られたらそのまま様子を見る。
(2)薬剤に対する恐怖と不安を和らげるため改めてモルヒネ使用の意義を説明する。
(3)歩行や起立時には介護をする
(4)除痛が完全に得られているときはモルヒネを50%減量する。
(5)除痛が得られていないときは非ス剤を併用しモルヒネを減量する。また、硬膜外モルヒネあるいは局所麻酔薬の注入に変更する。
(6)モルヒネに起因するめまいに有効な治療薬はないのでモルヒネ以外の麻薬に変更する(経口ならコデイン)。

,モルヒネの副作用対策(1990),,11
,最新医学(1990),45,9,1816

 
 

【4.8】「モルヒネの副作用としての血圧低下」


 
【4.8】
 モルヒネは直接血圧を下降させることはない。しかし、鎮痛効果による緊張からの解放や、呼吸抑制の結果、排便後の虚脱などの間接的な原因により血圧が下降することがある。モルヒネによる血圧下降には通常の血圧治療に準ずる。原因が上記の場合には、塩酸エフェドリンやカルニゲンの筋注ないし静注で十分な場合が多い。
,癌の痛みハンドブック(1992),,107

 
【4.8】
 モルヒネによる呼吸抑制に引き続いて起こった血圧低下は遷延する傾向があるので呼吸抑制に対する治療と共に、点滴によるイノバン、カタボンなどを与薬する。
,癌の痛みハンドブック(1992),,107

 
 

【4.9】「モルヒネの副作用としての発汗」


 
【4.9】
 副作用としての発汗はモルヒネにより30%発生する症状だが、まず他の疾患による発熱に伴う二次的な発汗の可能性を除外する。
 原因不明のいわゆる腫瘍熱といわれるような場合には、ナイキサンを投与する。それでも治まらない場合には少量のステロイドを併用する。
 発熱のない発汗はモルヒネによると考えられるが、決め手となる対症療法もない。現在は吸湿性のよい下着を頻繁に替えるなどしか手はない。

,がん患者の痛みの治療(1994),,,94

 
【4.9】
 モルヒネの副作用としての発汗にはアトロピン【適応外】の1日1〜2mg投与が有効である。
,癌の痛みハンドブック(1992),,104


【4.9】
 モルヒネ副作用として、発汗過多がみられたらプレドニン20mg/日を試す。
,ターミナル・ケアの症状緩和マニュアル(1998),,,42

 
 

【4.10】「モルヒネの副作用としての掻痒感」



【4.10】
 掻痒症オピオイド非経口投与の一般的な副作用であり、経口投与ではまれである。くも膜下や硬膜外オピオイドを受けた患者の大多数や、静脈内、筋肉内オピオイドにより治療された患者ではしばしば認められる。
 掻痒症には耐性が生じるため、通常、オピオイド療法期間中に軽減する。通常は顔面に限局するが、ときに会陰部や全身に広がる場合もある。

,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,372

#1
【4.10】
 鎮痛量のモルヒネを静脈内注射すると、皮膚血管を拡張し、顔や首、胸上部の皮膚に紅潮を生じ、ときに痒みを伴う。また、モルヒネの注射部位には、蕁麻疹が生じる。モルヒネは、ヒトの皮膚のマスト細胞に作用すると脱顆粒を惹起しヒスタミンを遊離する。このヒスタミンがモルヒネによるこれらの反応にかかわると考えられている。これらの反応は、オピオイド受容体を介さず、オピオイド拮抗薬で抑制されない。
 一方、除痛の目的でモルヒネを硬膜外、あるいは脊髄くも膜下腔内投与した際の主な副作用として痒みがある。この反応は、モルヒネがオピオイド受容体を介して神経に作用した結果であると考えられている。

,疼痛治療の現状と展望(2000),,,152

#1
【4.10】
 オピオイドによるかゆみと診断するためには、かゆみを起こす可能性のある他の全身疾患を除外していかねばならない。以下に各疾患の特徴と対応策を示す。
 緩和医療において遭遇するかゆみは、老人性掻痒症、胆汁欝滞、カビなどによる皮膚症状、リンパの欝滞、薬物(全身または脊椎・硬膜外オピオイド)、その他の薬物(フロセミド)、尿毒症、精神的なものなどが挙げられる。

,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,84

#1
【4.10】
 モルヒネによるかゆみに対する耐性は多くの場合数日で生じることを患者に説明する。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,88

#1
【4.10】
 モルヒネによる掻痒感の発生頻度は数%程度であるが、硬膜外投与に限ると15〜80%と高率に認められる。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,75

 
【4.10】
 副作用としての掻痒感は、モルヒネの硬膜外腔投与例で多くみられる。ほとんどが抗ヒスタミン薬の投与で対処できるが、重症例にはステロイドを投与する。
,がん患者の痛みの治療(1994),,,95

#1
【4.10】
 モルヒネ硬膜外投与の10分後にヒドロキシジン50mgまたは生理食塩液を筋注したところ、ヒドロキシジン投与群で重度の掻痒感の発現率が低いことを報告している。ただし、軽度〜中等度の発現率には有意差はない。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123

#2
【4.10】
 モルヒネの掻痒感対策としてアタラックスP50mgの筋注により掻痒感を軽減させる試みが報告されている。しかし、プラセボ投与群に比べ、高度な掻痒感の発生率は低かったものの、中等度ないし軽度の掻痒感については有意な改善は認められなかった。
,PharmD,2,4,66

#1
【4.10】
 モルヒネによる掻痒感に対し強カネオミノファーゲンC【適応外】(5〜20mL/日)を投与する方法も報告されている。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124

 
【4.10】
 モルヒネによる掻痒感ナロキソン【適応外】を試みた報告もあり、有効であった症例もあるが、ナロキソンの至適投与量について不明な点が多く、ナロキソン投与はモルヒネの良好な除痛効果を損なう可能性が高いため、患者の状態を十分モニターしながら投与しなければならない。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,117
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123

#1
【4.10】
 脊椎内オピオイド投与では、掻痒が最も多く生じることが示されている。鎮痛作用を低下させることなく少量(5μg/kg/時)のナロキソンに反応する。
,疼痛管理シークレット(2001),,,285

#1
【4.10】
 モルヒネの硬膜外あるいは脊髄くも膜下腔内投与による痒みオピオイド拮抗薬で抑制されるのに対して、モルヒネの末梢作用による痒みはオピオイド拮抗薬で抑制されないことを考慮すると、末梢作用の可能性は低いと考えられる。前述のように、モルヒネの全身性投与により末梢性に生じる痒みは、一般にオピオイド受容体を介さない。
,疼痛治療の現状と展望(2000),,,154

 
#1
【4.10】
 適応外使用であるが、モルヒネの硬膜外投与による掻痒感に対して、安全かつ有効な治療法として、就眠量以下のプロポフォール【適応外】を投与し良好な結果が得られたとの報告がある。 
 Borgeatらは、モルヒネを硬膜外投与あるいはくも膜下投与された術後患者を対象に、プロポフォール10mg(1mL)をone shot静注し、その後掻痒感の強い患者に対して、さらにプロポフォールlOmgを追加投与し効果を判定した結果、プロポフォール群ではコントロール群(イントラリピッド)と比較して掻痒感が有意に軽減した(p<0.05)と報告している。
 また、長沼らも10〜20mgのプロポフォール静脈内投与により、くも膜下腔モルヒネ投与後の掻痒感が軽減したと報告している。
 しかしながら、Warwickらはイントラリピッドをコントロールに用いた二重盲検試験により、プロポフォールの鎮痒作用を否定しており、確立した投与法とはいいがたい。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124

#1
【4.10】
 Boreeatらは、掻痒感を5段階にスコア化し、モルヒネを硬膜外投与あるいはくも膜下投与された術後患者で、掻痒感の強い(スコア4〜5) 50名を対象として、モルヒネにより惹起された掻痒感に対するプロポフォールの効果を検討した。
 プロポフォール1Omg(1mL)あるいはイントラリピッド1mLをone shot静注、その5分後に効果を判定した。掻痒感の強い(スコア3以上)患者に対して、さらにプロポフォール1Omgあるいはイントラリピッド1mLを追加投与し、その5分後に効果を判定した。その後もなお、掻痒感の強い(スコア3以上)患者に対しては、試験をオープンにしてプロポフォール1Omgを投与し、症状が改善されない場合にはナロキソン0.08mgを投与した。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,277

#1
【4.10】
 最近では、くも膜下腔投与や硬膜外投与でしばしばみられる掻痒感プロポフォール(ディプリバン注)オンダンセトロン(ゾフラン注)の投与が安全かつ有効な治療法であるという報告も散見される。

 (1)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、掻痒感が強い場合にはさらにプロポフォールlOmgを静注。
 (2)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、その後30mg(3mL) /24hrで持続静注。
 (3)オンダンセトロン(ゾフラン)8mg(2A)を生理食塩液100mLに溶解して静注投与。
 (4)オンダンセトロン(ゾフラン) 4mgを経口もしくは静注投与。


 ただし、これらの薬剤についても投与方法は確立されていないこと、オンダンセトロン、プロポフォールともに高価な薬剤であること、適応外使用であることを考慮し投与に際しては慎重であるべきである。
,オピオイドのすべて(1999),,,98

#2
【4.10】
 モルヒネの掻痒感対策として、オンダンセトロンが無効の患者群にプロポフォールを静注したところ効果を認めている。
,PharmD,2,4,67


【4.10】
 オピオイドの副作用としての掻痒症の対策としてオピオイドの変更が有効である。ナロキソンの静脈内投与も有効。抗ヒスタミン薬はくも膜下オピオイドによる掻痒症を除いて有効である。
 最近、少量のディプリバン(10mg静注)がくも膜下オピオイドによる掻痒症を有効にコントロールすることが明らかになった。本剤は鎮痛に影響を与えず、この程度の低投与量では副作用もわずかである。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,372

#2
【4.10】
 Saiahらは、モルヒネの硬膜外投与後に掻痒感を訴えた患者40名を対象として、ナロキソンプロポフォールについて比較検討を行った。その結果掻痒感の軽減効果は同等であったが、プロポフォール群では疼痛の軽減にも効果が認められたのに対し、ナロキソン投与群では疼痛程度が増強する傾向にあった。
,PharmD,2,4,66

#1
【4.10】
 オンダンセトロン(ゾフラン)の投与
 適応外使用であるが、オンダンセトロンの投与により重篤な副作用を認めることなく掻痒感の軽減が図れたとの報告があるので以下に示す。
 Crightonらは、モルヒネの脊椎投与後に出現した掻痒感に対し、オンダンセトロン4mgを経口投与した1例と、オンダンセトロン4mgを静脈内投与した1例を報告している。どちらもオンダンセトロンの投与により1時間以内に掻痒感の軽減が図れている。
 Lariianiらは、モルヒネの硬膜外投与による掻痒感に対し、オンダンセトロン4mgもしくは8mgを静脈内投与した4例を報告している。この4例では、数分以内に掻痒感の軽減が図れている。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,278

#1
【4.10】
 モルヒネのくも膜下あるいは硬膜外投与後に掻痒感を訴えた患者を対象に、オンダンセトロン【適応外】8mgを点滴静注し効果を判定した結果、オンダンセトロン投与群で掻痒感が有意に軽減した(p<0.05)との報告もある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124

#1
【4.10】
 オンダンセトロン(ゾフラン)は5-HT3受容体拮抗薬である。回腸の求心性迷走神経末端および最後野のCTZの5-HT3受容体を遮断することにより、嘔吐を抑制すると考えられている。鎮痒においても5-HT3受容体拮抗作用であると考えられているが、作用部位はよくわかっていない。
 Borgeatらは硬膜外モルヒネの掻痒感にオンダンセトロンが有効であると報告しており、Charuluxanananらは悪心、嘔吐だけでなく掻痒感にも効果が高いと報告している。現在のところ抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心、嘔吐にしか保険適応がない。モルヒネの便秘傾向を増悪させるという問題点がある。
,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,78

#2
【4.10】
 かゆみ(モルヒネ全身投与では全身に、脊髄投与では上肢、顔面・鼻に限局)にはオンダンセトロン(ゾフラン) 5mgを直ちに静脈内注射、または8mgを1日1〜2回3〜5日間経口投与する。これは中枢性の効果であり、ヒスタミンタイプ1拮抗薬は無効。中枢性オピオイド拮抗薬は有効であるが、鎮痛にも拮抗する。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,46

#2
【4.10】
 Crightonらは、モルヒネの脊椎投与後に掻痒感を認めた患者にオンダンセトロンを経口または静注し、著明な改善を認めている。また、他の報告でもオンダンセトロンは静注で有効とする報告があり、そのなかには倍量のオンダンセトロンで効果がない症例に対しナロキソンの静注で効果があったことも報告されている。このことから両者の作用機序は異なり、一方が無効の場合は、他の一方により効果が得られる可能性が考えられる。
,PharmD,2,4,67

#1
【4.10】
 リファンピシン【適応外】は黄疸に伴う掻痒感に有効であるとする報告が多い。黄疸に伴う掻痒感も内因性のオピオイドが関与するといわれており、実際ナロキソンでかゆみが抑制されるので、モルヒネによるかゆみとの類似性が高い。
 Mercadanteらはリファンピシン300mgを1日2回投与することでモルヒネによる掻痒感が軽減することを報告した。リファンピシンがかゆみを抑えるメカニズムとして、ミクロゾーム酵素の誘導によりかゆみ物質の代謝を促進することが推測されている。
,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,78

#1
【4.10】
 硬膜外投与したモルヒネによって生じる掻痒感に対して竹炭酸の塗布が有効であるという報告や、頑固な全身掻痒に対してヨモギローションが有効であるという報告がある。
 フェンタニルはモルヒネよりヒスタミン遊離が少ないため、症状が改善せず患者にとって苦痛である場合にはフェンタニルに変更するという方法もある。
,わかるできるがんの症状マネジメント2(2001),,,68

#1
【4.10】
 中枢性の痒みには、オピオイド受容体拮抗薬以外に有効な治療薬はなく、抗ヒスタミン薬が無効の場合は、モルヒネの減量や他のオピオイド鎮痛薬(フェンタニル)による治療を考慮する。
,オピオイドのすべて(1999),,,63

 
【4.10】
 モルヒネによる掻痒感が抗ヒスタミン薬で解決せず、患者が不快である場合はレペタンスタドールに変更する。これらはモルヒネに比べ鎮痛効果が劣るものの掻痒感の発生頻度が少ないので十分な鎮痛効果が得られるならば変更することは可能である。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,118
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123

#2
【4.10】
 モルヒネの掻痒感対策としてモルヒネ4mgの硬膜外投与後に、副作用軽減を目的としてドロペリドール2.5mg硬膜外投与したところ鎮痛効果に影響を及ぼすことなく掻痒感などの副作用を軽減できたと報告している。
,PharmD,2,4,67

#1
【4.10】
 (国立がんセンター中央病院の痒みの症例)
 モルヒネによるかゆみの緩和で依頼を受けた症例は2年間で8例のみである。モルヒネによるかゆみは全身的であるが、そのなかでもかゆみは体幹に集中していた。また、もう一つの特徴として、かゆみはオピオイドの投与開始直後から数日の経過のなかで発症することが多く、経過観察のみで3〜4日で消失したものもあった。そのうち、VAS50/100以上の重症例は2例のみであった。これらに対してはすでに抗ヒスタミン薬が投与されていたが、当科においてプロメサジンに変更しかゆみは軽減した。しかし、完全に消失させることはできなかった。その他のVAS50/100未満の症例に対しては、抗ヒスタミン薬が投与されていない症例に対してハイドロキシジン50mgを就眠前に投与し対応した。モルヒネによるかゆみは、重症例はあまり少ないと考えられるが、かゆみ自体が適切に評価されず当科にコンサルトされなかった可能性、当科がかゆみの治療まで行っていることを知らなかった可能性も考えられ、今後、かゆみの治療に開してもアピールしていく必要があると考えている。
,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,84

      参照→【5.1.3】(痒みに対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.11】「モルヒネの副作用としての排尿困難、尿閉」


 
【4.11】
 モルヒネの副作用としての排尿困難尿閉は、ほとんどが男性で、前立腺肥大や尿道狭窄がある人に起こりやすい。また、内服や坐薬や、持続皮下注入などの全身的投与ではほとんど起きない。もっぱら、硬膜外腔あるいはくも膜下腔にモルヒネを投与したときに起こる副作用で、硬膜外腔にモルヒネを投与した場合、4〜5人に1人位起こる。尿閉が起こるときは、投与したその日のうちに急性尿閉の形で突然起こるため、24時間たって兆候がなければ安心できる。
 尿閉に対しては、発症の可能性と起こっても数日で自然に消失することをあらかじめ患者に説明しておく。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,60

#1
【4.11】
 脊椎内オピオイド投与による尿閉の頻度は10〜50%であり、オピオイドの全身投与と同様である。少量のナロキソンに反応する。
,疼痛管理シークレット(2001),,,286

 
【4.11】
 排尿障害はモルヒネの長期投与により耐性が生じる。発現頻度としては、1〜3%という報告が多い。排尿障害に対する対応としては、経過観察で改善することが多いが、薬剤としてはベタネコールなどの排尿筋の収縮力を増強させる薬剤とミニプレスなどの膀胱出口部の圧を減少させる薬剤を併用する。
,緩和医療学(1997),,,70

#1
【4.11】
 モルヒネの排尿障害により、しばしば導尿が必要となるが、耐性の形成とともに、数日以内に不要となることが多い。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,89

 
 モルヒネによる排尿困難では、病室内で排尿困難な場合でもトイレに連れていくことで可能となることもある。
,癌の痛みハンドブック(1992),,107

 
【4.11】
 モルヒネによる排尿障害の治療薬としてベサコリン1日30〜50mg、3〜4回や、ハルナール1日1回、1回0.2mgがある。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,48
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,145

 
【4.11】
 モルヒネによる排尿障害
べサコリン 1回20mg 1日3回(8時間ごと)
ウブレチド 1回5mg 1日3回
ミニプレス 1回0.5〜1mg 1日 3回(体位性低血圧に注意)
ハルナール 1回0.1〜0.2mg 1日1回
フリバス  1回25mg 1日1回
エブランチル1回15mg 1日2回

または他の薬剤(レペタン等)に変更
ナロキソンはこの副作用にも有効であるが、投与は慎重でなければならない。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,116
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,121

 
【4.11】
モルヒネによる尿閉
ミニプレス0.5〜1mg、2〜3回/日
ウブレチド5mg、1〜2回/日
ベタネコール10〜30mg、2〜3回/日
などで様子をみる。
,ターミナルケア(1995),7,1,34

      参照→【5.1.3】(排尿障害に対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.12】「モルヒネの副作用としての口内乾燥」


 
【4.12】
 口内乾燥は、多い報告では約半数にみられるとされる。この場合には、水分摂取を促したり、氷片やアメをなめたり、うがいの励行や、リップクリームの塗布など局所的対処療法を行う。
,臨床と薬物治療(1990),,58,48

 
【4.12】
 (モルヒネによる口渇への対処法)
 生のパイナップルは蛋白分解酵素を含んでいるので小さく切って飴のようになめると口腔内正常化に役立つ。
 グリセリン溶液は乾燥するとかえって口渇を増すため不適当。
 唾液の分泌を促す薬としてピロカルピンが知られている。これは放射線照射などで唾液腺そのものが障害を受けた例でも効果があり、口渇を訴える約半数の患者がこれによって改善するといわれている。5〜10mg、3回/日より開始し、必要に応じて1回10mgまで増量できるとされている。気管支喘息、COPDの患者には禁忌である。
,ターミナルケア(1995),7,1,35

(注:現在、ピロカルピンの類似薬として、サリグレンがシェーグレン症候群に対する口渇に適応をとっている)

【4.12】
 モルヒネの口内乾燥に対する対処法としては、チューインガムを噛ませたり、酸味のキャンディをなめさせたり、サリベートを使うなどの方法がある。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,43

#1
【4.12】
 モルヒネの副作用としての口渇に漢方薬の白虎加人参湯が有効であるという報告や、キシリトールには唾液分泌促進効果があり、タブレットや含漱液が有効であるという報告がある。
,わかるできるがんの症状マネジメント2(2001),,,67


 

【4.13】「モルヒネの副作用としてのミオクローヌス」


#1
【4.13】
 中枢神経症状(眠気混乱ミオクローヌス呼吸抑制)は投与量が急激に増えた場合や絶対量が多い場合(数100 mg以上)にみられることが多い。モルヒネの開始や増量後、しばらくしてこれらの症状がみられた場合は、モルヒネ以外の原因がある場合も多い。
 ミオクローヌスはモルヒネの血中濃度が高く、抗鬱薬、向精神薬、制吐剤、 NSAIDsなどの薬剤を併用している患者にみられる。症状が増強する場合、可能であればこれらの薬剤を変更する。
 薬剤の変更が困難な場合、薬物療法を検討する。ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、ニトラゼパム、ミダゾラム)や抗痙攣薬(クロナゼパム、バルプロ酸)のほか、末梢作用型の筋弛緩薬(ダントロレン)も有効であると報告されている。
,わかるできるがんの症状マネジメント2(2001),,,68

#2
【4.13】
 ミオクローヌスにはジアゼパムまたはミダゾラム5mgを直ちに、次いで頓用。またはモルヒネの減量、痛みが出たら元の量に戻す。よく使われる通常量では起こることが少ない。高用量の静脈内注射や髄腔内投与で起こることが多い。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,46

 
【4.13】
 ミオクローヌスは手足のピクッとする運動のことで、モルヒネの大量投与で起きやすいとされているが、少量でも出現する患者はいる。ランドセンの就寝前投与でほとんどの患者の発作は軽快する。
,がんの痛みを癒す(1996),,,81

#1
【4.13】
 ミオクローヌスが認められた場合、心配するものではないことを保証することが重要であるが、苦痛を生じるようであれば、早期に対策を講じる必要がある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,279

 
【4.13】
 ミオクローヌス(痙攣性不随意運動)は長期にわたる高濃度モルヒネ投与時の副作用として知られている。主に就寝中に発生し、それによって時に患者が目覚めてしまう。
 フェンタネストなどに変更することで収まる場合が多い。
 ランドセンの使用はまだ限られた報告しかない。就寝前0.25〜2mg経口あるいは出来るだけ緩徐な静注はほぼ安全と思われる。
 ジアゼパム坐剤【適応外】10〜20mg就寝前、ミダゾラム【適応外】、5mg皮下注ののち10mg/日持続皮下注などもある程度有効。
 筋弛緩剤や、抗痙攣薬はあまり有効でない。
,ターミナルケア(1995),7,1,33

#1
【4.13】
 モルヒネの副作用としてのミオクローヌスには一般的には、ランドセンの投与で対処するが、眠気を生じることがある。ダントリウムを用いて眠気を生じることなく、ミオクローヌスに対処し得た例も報告されている。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,75

#2
【4.13】
 われわれは、抗痙攣薬のクロナゼパム(リボトリール)1mg 眠前を使用しており、ほとんどの患者のミオクローヌス発作は軽快している。痛みが問題になっていなければ、モルヒネを減量することによっても対応できる。
,モダンフィジシャン(2003),23,3,336

      参照→【5.1.3】(ミオクローヌスに対するオピオイドローテーション)
 
 

【4.14】「モルヒネのその他の副作用」


 
【4.14】
(気分高揚、鬱状態)  モルヒネによる副作用としての気分高揚は癌患者にはほとんど見られないが、鬱状態はしばしば見られる。抗鬱薬を投与するが、反応しない場合は中止しステロイドも試みると良い。
,モルヒネの副作用対策(1991),,,19
,最新医学(1991),46,1,180

#2
【4.14】
(気管支収縮→呼吸困難)
 ヒスタミン遊離(気管支収縮→呼吸困難)には抗ヒスタミン薬のポララミンを5〜10mgの筋肉内注射または静脈内注射、および気管支拡張薬の投与または、メサドンなどの化学構造が異なるオピオイドに直ちに変更する。頻度としては稀である。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,46

#2
【4.14】
(胃内容の停滞)
 胃内容の停滞(上腹部膨満感、腸内ガスの増加、食欲不振、しゃっくり、持続性の嘔気)などにはメトクロプラミド(プリンペラン 10〜20mgを4時間ごと)を使う。問題が解決しなければ、モルヒネを他のオピオイドに変更する。
,トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(2003),,,46

#2
【4.14】
(Paradoxical pain)
 Paradoxical painは日本ではあまり認識されていないが、モルヒネ投与量が大量になってくると逆に痛みを起こすものである。くも膜下投与で多いが全身投与でも起こるとされている。欧米ではこれによるオピオイドローテーションも行われている。代謝産物のM3Gが原因と考えられている。
,がん患者と対症療法(2003),14,2,38

      参照→【5.1.3】(その他の副作用に対するオピオイドローテーション)





  

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