EHN 2009年3月31日
科学者ら 自閉症とビニル床材との 不可解な関連を見つける 解説:マリア・コーン、EHN 主席編集委員 情報源:Environmental Health News, March 31, 2009 Scientists find 'baffling' link between autism and vinyl flooring By Marla Cone, Editor in Chief Environmental Health Newsr http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/autism-and-vinyl-flooring 訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2009年4月1日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090331_autism_vinyl_flooring.html スウェーデンとアメリカの研究者らによれば、フタル酸エステルを放出することがあるビニール床材の家に住んでいる子どもたちは自閉症に2倍なりやすいらしい。科学者らはこの発見を”興味をそそる不可解なこと”と呼んでいる。専門家らは、遺伝的要因と環境的要因の両方が結合して、過去20年間、子どもたちの間で劇的に増加している自閉症を引き起こしているのではないかと疑っている。
科学者らは、決定的なものからは程遠い”と言いつつ、その発見に驚かされた。”彼らの研究は自閉症に特化したものではなかったので、彼らは、この関連性が確認されるかどうかを調べるためにもっと多くの子どもたちを対象にしたさらなる研究を推奨した”。 ロチェスター大学環境医学校の教授であり、この研究の共著者であるバーナード・ワイスは、ビニル床材と自閉症の関連性は、実際には偶然に見つけたと述べた。彼はそれを”興味をそそる不可解なこと”と呼んでいる。 専門家らは、遺伝的要因と環境的要因の両方が結合して、過去20年間、子どもたちの間で劇的に増加している神経発達障害である自閉症を引き起こしているのではないかと疑っている。この新たな研究において、スウェーデンの家族は、アレルギーと屋内空気汚染の研究調査の一部として床材について質問を受けた。プラスチックに柔軟性を持たせるために用いられるフタル酸エステル類は以前の研究で、アレルギーと自閉症との関連が示されていた。 この研究は、屋内環境に関連する様々な質問をする調査に基づいている。調査対象の6歳から8歳までの4,779人の子どもたちのうち、72人が自閉症であり、60人が男の子であった。
ビニル又は塩ビ(PVC)床材の寝室の家で生活していた幼児や子どもたちは、5年後の2005年には木やリノリウムの床材の家の子どもたちに比べて自閉症が2倍多いようである。 ”自閉症スペクトラム障害をもった子どもたちの多くは同障害のない子どもたちと比べると、2000年には子ども及び両親の寝室の床材に塩ビ(PVC)が使用されていた”とこの科学者らはジャーナル『 Neurotoxicology(神経毒性学)』に書いている。”さらに、自閉症スペクトラム障害をもった子どもたちは、窓の内側に水滴が多くつく家に住んでおり、そのことは喚気の不良を示しているように見える”。 調査対象の子どもたちはまた、母親が喫煙する場合には2倍、自閉症になるように見えた。また自閉症の子どもたちはよりぜん息であるように見えた。 主席研究者はスウェーデンのカリスタッド大学のカールグスタフ・ボルネハグであり、彼は2004年に、屋内ダスト中にフタル酸エステル類を含む家に住む子どもたちの中にぜん息とアレルギーの高い比率を見出していた。 科学者らは、ぜん息と自閉症は関係があるかどうか、あるいはホルモンかく乱性のような何か他のメカニズムによってフタル酸エステル類が自閉症のリスクに寄与しているかどうは、わからないと報告している。フタル酸エステル類は動物実験ではオスのホルモンと性的発達を阻害する。 ”データは決定的なものからは程遠い。それらは謎解きであり、不可解ですらあり、現時点では簡単に説明できるものではない”と報告書の中で科学者らは述べた。”しかし、それらは自閉症障害へ環境的な要因の可能性として出現しているわずかな手がかりなので、それらは注意深く考察されるべきであると信じており、更なる研究を請合うものである”。 この研究に参加しなかった何人かの科学者らは結論を引き出すには多くの制限があると警告しているが、自閉症と屋内空気汚染物質との間の関連性を探すよう設計された新たな研究を提案してる。 マウント・サイナイ大学医学校子どもの環境健康センターのディレクターである小児科医のフィリップ・ランドリガン博士は、この結果は興味あるが、非常に少ない数に基づいているので、予備的である”と述べた。ランドリガンは、”環境的暴露が自閉症の原因に関係あることは疑いない”と述べているが、彼は最も顕著な暴露は子ども時代ではなく、”基本的な脳の行動がまだ固まっていない”妊娠初期ではないかと考えている。 研究者らは質問票に頼っており家庭内の化学物質を測定していないので、彼らは子どもたちがフタル酸エステルに暴露しているのかどうかわからず、その発見の信頼性には制限がある。以前の研究でフタル酸エステル類は家庭内ダスト中に共通して存在することがわかっている。 フタル酸エステル類はビニル床材やその他の建材、おもちゃ、医療器具などのプラスチック可塑剤として使用されている。近年、この化学物質は議論の的となっており、昨年、米議会は子ども製品中での使用を禁止した。 フタル酸エステル類を製造する化学会社を代表する米化学工業協会は、月曜日の声明の中でこの新たな研究はこの化学物質と自閉症との間の関係を証明していないと述べた。”質問票と両親の回答以外にこれらの子どもたちを評価する方法がないので、この発見はとるに足らない”と同協会の執行理事クリス・ブライアンは述べた。自閉症は、”体系的に分析されておらず、5年間の研究でひとつの質問がなされただけである”と彼は述べた。 産業側は、床材からのフタル酸エステル類の放散は”非常に低い”レベルであると述べた。これらの成分は低揮発性の重い分子構造なので揮発しにくくダスト中に放出するのはわずかであると彼らは述べた。 ビニル床材はスウェーデンでは一般的であり、約1パーセントの家庭だけがカーペットの床である。しかしアメリカの寝室ではビニル床材は一般的ではないので、アメリカの子どもたちの自閉症とは関係がないかも知れない。しかし、カーペットは、動物実験で脳の発達を損なうことが示されている農薬と臭化難燃剤など他の汚染物質を含んでいる。 科学者らは、彼らの新たな発見は、内分泌かく乱特性を持つ他の化学汚染物質の研究が自閉症の発症解明への有用な知見を生み出すかもしれないことを示唆している”と述べた。 今までにカリフォルニアでは3つの研究が、家庭用又は農業用農薬への子どもの暴露と自閉症との関連を見つけている。 カリフォルニアでの自閉症の比率は1990年以来7倍に増大していることを最近の研究(訳注1)が明らかにしている。遺伝子は急には変化しないので、科学者らは化学汚染物質がなんらかの役割を果てしているのではないかと疑っている。しかし、どの化学物質か、あるいはどのような化学物質の組み合わせかを正確に特定しようと試みる研究は非常に少ない。 訳注1 訳注2:当会が紹介した自閉症関連情報
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