EHP 2007年10月号 サイエンス・セレクション
自閉症と農薬
傾向を追跡するためにデータを統合


情報源: Environmental Health Perspectives Volume 115, Number 10, October 2007
Science Selections
Autism and Agricultural Pesticides
Integrating Data to Track Trends

http://www.ehponline.org/docs/2007/115-10/ss.html#auti

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年10月15日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/07_10_ehp_Pesticides_ASD.html


 米疾病管理予防センター(CDC)の環境公衆健康追跡プログラム(Environmental Public Health Tracking Program)は、多様なデータ・ソ−スを統合して、他の調査・研究で利用できるようにするものである。このプログラムに参加したある助成プロジェクトで、出生、社会サービス、及び農業に関するデータ・ソースを統合することにより、研究者らは農場農薬の環境暴露と自閉症スペクトラム(ASDs)との関連についての高い目的意識のある疑問を提起することができた。[EHP 115:1482?1489; Roberts et al.]

 この調査は、カリフォルニア・セントラル・バレー(サクラメントからサンワーキンリバーまでに広がる19郡の帯域)で農業用農薬散布についてよく定義されている場所の近くに居住する母親から生まれた子どもの自閉症スペクトラム(ASDs)に焦点を合わせている。研究チームはASDsと診断されサービスを受けた1996〜1998年の間に生まれた465人の子どもを特定した。彼らは、母親の出産時の居住場所の農薬散布場所への近接性を決定するためにカリフォルニア州農薬規制局のデータを使用した。同時期に同地域で妊娠していた母親のASDsではない6,975人の子どものデータがコントロールとして使用された。

 同チームは、3つの要素の全ての組み合わせを検証した。すなわち、母親の居住場所と農薬散布場所との距離、散布された農薬の種類、そして農薬散布時の妊娠段階である。妊娠期間中の3つのウィンドウに特に関心をもった。中枢神経系形成期間(受胎1週間前から7週間後まで)、神経管発達の期間(受胎4日前から24日後まで)、及び妊娠全期間(受胎2週間前から出産まで)である。

 可能性ある組み合わせの数は多く、影響を受ける子どもの数は比較的少ないので、この調査では、3つの要素がどのように相互に関連するかの予備的な見解だけを得ることとした。しかし、農薬のひとつのグループは際立っていた。よく使用されているジコホールやエンドスルファン等を含む有機塩素系農薬は、母親の居住場所と農薬散布場所との距離が1,750メートルまでの場合、ASDsと関連性があった。綿花、果実、野菜、豆、ナッツなどの栽培に使用されるジコホールとエンドスルファンはセントラル・バレー地域で使用される有機塩素系農薬の98%を占めている。

 この研究は、有機塩素系農薬への暴露とASDsの関連性を指摘したが、因果関係を示しておらず、関係するかも知れない他の要素について考慮していない。有機塩素系農薬散布場所に最も近い居住場所(ASDsとの関連性が最も強い場所)については、暴露データは、わずかに8ケース及び105コントロールであった。これらのうち、興味の中心は農薬の量が最も多い場所に最も近く住む4分の1の人々である。他の公共の用途のために日常的に収集されるデータを使用したこの研究は、有機塩素系農薬とASDsの関連性の更なる分析の必要性を示しており、入手できる地理学、公衆健康、及び社会サービスの記録を用いて難しい環境健康の疑問を提起するための基礎作業を用意した。

ビクトリア・マックガバン(Victoria McGovern)


化学物質問題市民研究会
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