NGOs 連合 2015年3月12日 声明
食品及び食品容器中のナノ物質についての政策提言

情報源:Coalition of NGOs, March 12, 2015
Policy for Nanomaterials in Food and Food Packaging
http://www.asyousow.org/our-work/environmental-health/nanomaterials/
policy-for-nanomaterials-in-food-and-food-packaging/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年3月19日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ngo/150312_NGOs_Nano_Policy_for_Food_Industries.html

 ナノ毒性研究は、様々なナノ物質の摂食、吸入、及び/又は皮膚暴露によって広範な危害が引き起こされ得ることを示している。我々は、ナノ物質の製造、消費、及び自然生態系への放出がライフサイクルを通じて安全であると証明される前に、食品会社が食品、食品成分、食品接触面、飼料又は食品容器にナノ物質を使用する、又はサプライチェーン管理の不具合で意図せずにナノ物質を入れるかもしれないことを懸念している。

 消費者、従業員、研究者、会社、そして自然生態系へのリスクを最小にするために、我々は、食品産業がナノ物質の使用に関して従うことができる又は従うべきと我々が信じる下記の政策提言を行う。

提言される行動
  1. 会社は、食品と飲料製品、並びに容器中でのナノ物質の使用に関し、これらの使用が研究開発の段階なのか又は商業用製品中なのか、会社の実際を明確に説明するウェブ上で容易に見ることができる公共政策を取り入れること。その政策は、使用されている又は使用が許されているナノ物質の外部及び内部の寸法、形状、及び(粒子)分布についての記述を含むこと。その政策は、製品中へのナノ物質の導入及び/又はナノテクノロジーの適用によってもたらされる技術的影響についての会社の理解を含む。その政策は、会社の製品に導入されているナノ物質の環境健康リスク、公衆健康リスク、および労働者安全リスクを決定するために、会社の科学者及びリスク管理者らにより用いられたピアレビューされた研究の文献目録を附属書中に示すこと。

  2. 会社は、食品そのもの及び食品と飲料容器中でのナノ物質の使用の禁止か又はそれらの使用の許可のどちらかと、会社の政策の概要を示した文書を明確に示す供給者標準書を発行すること。

  3. もし会社が、食品と飲料製品、又は容器中で500ナノメートル(nm)以下の粒子を持ったナノ物質を伴うどのような物質でも使用しているなら、会社はどのようなナノ物質が導入されているのか特定する記述をラベル上に設けなくてはならない。そのような記述は義務的な栄養価表示の近くに示し、消費者が容易に見ることができるようにすべきである。会社はまた、そのウェブサイト上で、使用される粒子サイズのナノ物質が安全であることを示す科学的研究を参照として掲載しなくてはならない。

  4. 会社は、従業員が製造工程で吸入及び皮膚を通じて暴露することを防止するための”階層ハザード制御(hierarchy of hazard controls)”(原注1)アプローチを採用し発表すること。

ナノ物質の定義 (訳注1
 ナノ物質とは、ひとつ又はそれ以上の外部次元、又は内部又は表面構造(2)がナノスケール範囲(1-1000 nm)である粒子を含む工学的(engineered)又は製造された(manufactured)物質1、又はそのナノスケール粒子が同一物質でマクロスケールの粒子とは異なる特性又は機能を持つ物質である。この定義はまた、偶発的なナノ粒子、及び意図的にではなく副産物として製造され、会社の製品中に導入されるナノ粒子にも適用する。

1 天然起源の有機ナノスケール粒子(例えば牛乳タンパク質、必須ミネラル)は、この目的のためには工学的又は製造された物質とはみなされない。”天然起源(naturally occurring)”という用語は、アスベストのような天然起源の無機ナノ物質はもちろん、物質のサイズを小さくする工学的又は製造のための工程を含まない。

2 ナノ粒子のアグリゲート(訳注:一次粒子が強い力で結合した凝集塊)、及びアグロメレート(訳注:アグリゲートが集まった凝集体)はナノ構造物質であるとみなされる。

ナノテクノロジーとナノ物質の監視のための原則
 2008年1月、40以上の市民社会組織の連合体が、国際技術評価センター(ICTA)の報告書『ナノ技術とナノ物質の監視のための原則』 (訳注2:報告書発表は2007年)を支持した。同連合体は、強く、包括的な技術とその製品の監視をもとめ、8つの原則に基づく行動を促した。1) 予防的基礎 2) 法的強制力のあるナノに特化した規制 3) 公衆と労働者の健康と安全 4) 環境保護 5) 透明性 6) 公衆参加 7) 広範な影響の考慮 8) 製造者責任

原注1  階層ハザード制御(hierarchy of hazard controls)アプローチにおいて、第一段階は、有害(ハザード)物質及び/又はプロセスの除去、第二段階は、より安全な代替、そして第三段階は、工学的又は手続き的制御を通じて暴露の可能性を除去/削減することである。最後の手段として、しかし前述の制御が実施された後にのみ、全身防護スーツや吸入器のような個人防護装置が暴露リスクのある労働者を保護するために用いられる。


訳注1:ナノ定義関連情報
訳注2


化学物質問題市民研究会
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