NGO 連合 共同プレス・リリース 2007年7月31日
広範な国際的な連合が
ナノ技術の監視強化を緊急に求める


情報源:ETC Group, Press Release, July 31, 2007
Broad International Coalition Issues Urgent Call for
Strong Oversight of Nanotechnology
http://www.etcgroup.org/fr/node/651

International Center for Technology Assessment
PRESS RELEASE, July 31, 2007
http://www.icta.org/press/release.cfm?news_id=26

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年9月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/etc/070731_Joint_Press_Release.html


プレス・リリース 2007年7月31日
プレス連絡先
George Kimbrell, ICTA (202) 547-9359, gkimbrell@icta.org;
Bill Kojola, AFL-CIO, (202)-637-5003, bkojola@aflcio.org;
Peter Rossman, IUF, +41 22 793 2233, peter.rossman@iuf.org;
Ian Illuminato, Friends of the Earth U.S., (202)- 222-0735, IIlluminato@foe.org;
Kathy Jo Wetter, ETC Group, (613) 241-2267 etc@etcgroup.org;
Chee Yoke Ling, Third World Network, +6012 3768858, yokeling@myjaring.net;
Rick Worthington, Loka Institute, (909) 607-3529, RKW14747@pomona.edu

ナノ技術及びナノ物質の監視のための原則(本文)
Principles for the Oversight of Nanotechnologies and Nanomaterials
http://www.icta.org/doc/Principles%20for%20the%20Oversight%20of%20Nanotechnologies%20and%20Nanomaterials_finalwJan08sigs.pdf

広範な国際的な連合がナノ技術の監視強化を緊急に求める
公衆、労働者、環境へのリスクを懸念して
40団体以上がナノテク監視のための基本原則を発表

 【ワシントンDC】 6カ国からの消費者、公衆健康、環境、労働及び市民社会の組織からなる広範な国際的連合が、ナノ技術とナノ物質の監視のための原則訳注1)を共同発表し、この新しい技術とその製品の厳格で包括的な監視を求めた。

 新たな特性を得るために原子及び分子のレベルで物質を扱う強力なプラットフォームであるナノ技術を使用する製品の製造が近年爆発的に増加している。ナノ物質を導入した数百の消費者製品が現在市場に出ており、それらには化粧品、日焼け止め、スポーツ用品、衣料品、電子部品、赤ちゃん用品、食品及び食品包装などがある。しかし、現在のナノ物質は、健康、安全、及び環境に著しい危険を及ぼすかもしれないことを示す証拠がある。さらに、ナノ技術によってもたらされる重大な社会的、経済的、及び倫理的な課題にまだ目が向けられていない。

 第三世界ネットワークのチー・ヨーク・リンが説明するように、”ナノスケールで作られる物質は、未知の影響をもった毒性なども含んで基本的に異なる特性を持つことがある。現在までの研究は、ナノテクの取り扱いに予防的措置をとり、更なる研究が必要であると警告している”。彼女はさらに、”ナノ物質を含む数百の製品が市場に出ているにもかかわらず、公衆、労働者、及び環境は、ラベル表示がなくそのほとんどがテストされていない物質に暴露されている”と付け加えた。

 技術評価国際センターのジョージ・キンブレルは、”現在、政府による監視とラベル表示を要求しているところは世界中のどこにもないので、潜在的にリスクのあるナノ物質に、いつ、暴露したのか誰もわからないし、潜在的な健康又は環境への危害を誰も監視していない。そのことが、我々の原則に基づいた監視行動が緊急に必要であると信じる理由である”と述べた。

 現在の産業ブームは、2015年までに世界で200万人に達すると予測されるナノ労働力を創出している。”暴露による潜在的な健康への危険性は明確に特定されているにもかかわらず、評価に必要な職場での暴露測定、労働者の訓練、管理の実施は法的に要求されていない”とAFL-CIO のビル・コジョラは説明した。”この技術は、これらの欠陥が正され、労働者に安全が保証されるまで、急いで市場に出されるべきではない”。

 ”我々は、この強力な新しいタイプの汚染の影響を追跡する方法を持っていないにもかかわらず、ナノ物質は数百の製品の製造、使用、及び処分の過程で、環境中に入り込む”と地球の友のイアン・イルミナトは述べた。”監視が行き届いたときには、ダメージはすでに起きているであろう”。

 国際労働組合IUFの事務局長ロン・オズワルドは、”数百の商業的に入手可能な製品−ナノテクを導入した農薬から包装材への添加物まで−はすでに市場に出ているか、これから出ようとしているということを指摘して、ナノ製品が世界の食物連鎖に大量に侵入することを防ぐことの重要性を強調した。労働者、消費者、及び環境は、世界の食料システムと、我々全てが依存している食料を製造する全ての人々に及ぼす多くのリスクから適切に守られなくてはならない。

 ”これらの物質の製造者は、その目新しさと独自性に基づき特許を得ているという事実にもかかわらず、産業側は彼らのナノ製品は、通常の物質と同じのなので、それらと異なる規制を受ける必要はないと主張している”と、カナダのオタワを拠点とする市民団体、ETCグループのキャシー・ジョー・ウェッターは指摘した。”産業側はこのような矛盾をそのままにすることはできない。ナノに特化した規制監視が求められることは必然である”。

 ”世界中の政府は昨年の一年間でナノテクの研究開発に60億ドル(約7,200億円)を費やしているが、ナノのリスク及び社会的影響に関する研究に費やしている比率は’ナノ’である”と、科学技術に関連する全てのことがらに公衆の参加を推進する団体、ロカ研究所のリック・ワシントンは述べた。”我々は、合成化学のような規制されない’奇跡の技術’の結果が共同体全体にもたらした有害汚染を見てきている。ナノテクの社会と環境に及ぼす問題に関する研究の一部には、共同体の積極的な参加がはかられるべきであり、彼らの洞察は過去に経験したような壊滅的な問題を回避するのに我々の助けになる”。

 同連合の宣言は、新たに出現したナノ技術分野の適切で効果的な監視と管理のために必要な8つの基本的な原則の概要を示している。

  1. 予防的基礎
     製品製造者と流通業者は、彼らの製品の安全性を立証する義務を負わなくてはならない。もし、独立した健康と安全データの検証がなければ、市場に出すことは許されない。
  2. 法的強制力のあるナノに特化した規制
     ナノ物質は新規物質として分類され、ナノに特化した監視の対象とされるべきである。自主的な取り組みでは不十分である。
  3. 公衆と労働者の健康と安全
     公衆と労働者を守るために、安全性が立証されていないナノ物質への暴露を防止する措置がとられなくてはならない。
  4. 環境保護
     市場に出される前に、環境影響についての全ライフサイクル分析が完了していなくてはならない。
  5. 透明性
     全てのナノ製品はラベル表示され、安全データが公開されなくてはならない。
  6. 公衆参加
     全ての段階で、開かれた、意味のある、そして十分な公衆参加がなくてはならない。
  7. 広範な影響の考慮
     倫理的及び社会的影響を含むナノ技術の広い範囲の影響が考慮されなくてはならない。
  8. 製造者責任
     ナノ産業は、彼らの製品の責任について説明義務を果たさなくてはならない。
 ”我々は、全ての政府機関、政策立案者、産業、団体、及び全ての関連する分野が、これらの原則を支持し、反映する行動を起こすことを求める”と環境、技術及び知的所有権の問題に取り組む公益団体であるエドモンド研究所のベス・ブロウズは述べた。”新たな技術が出現しているので、我々は新たな物質とその応用は害がなく健康と、社会的に公正な世界に寄与することを確実にしなくてはならない。農薬、アスベスト、オゾン層破壊物質のような’驚異の技術’による過去の失敗があるので、完全なテスト又は監視なしにナノ物質が市場に出ていることは衝撃的である。21世紀の公衆はもっと説明責任を求めるということは驚くべきことではない”。

 ナノ監視原則に関する完全な文書は、http://www.icta.org/files/2012/04/080112_ICTA_rev1.pdf や、その他の多くの支持団体のウェブサイトで入手可能である。賛同する団体は、kimbrell@icta.org にemailすることにより、この原則を支持(endorse)することができる。

 当初(2007年7月31日現在)の支持団体は以下のとおりである。(訳注2

Accion Ecologica (Ecuador)
African Centre for Biosafety
American Federation of Labor and Congress of Industrial Organizations (U.S.)
Bakery, Confectionery, Tobacco Workers and Grain Millers International Union
Beyond Pesticides (U.S.)
Biological Farmers of Australia
Canadian Environmental Law Association
Center for Biological Diversity (U.S.)
Center for Community Action and Environmental Justice (U.S.)
Center for Food Safety (U.S.)
Center for Environmental Health (U.S.)
Center for Genetics and Society (U.S.)
Center for the Study of Responsive Law (U.S.)
Clean Production Action (Canada)
Ecological Club Eremurus (Russia)
EcoNexus (United Kingdom)
Edmonds Institute (U.S.)
Environmental Research Foundation (U.S.)
Essential Action (U.S.)
ETC Group (Canada)
Forum for Biotechnology and Food Security (India)
Friends of the Earth Australia
Friends of the Earth Europe
Friends of the Earth United States
GeneEthics (Australia)
Greenpeace (U.S.)
Health and Environment Alliance (Belgium)
India Institute for Critical Action-Centre in Movement Institute for Agriculture and Trade Policy (U.S.)
Institute for Sustainable Development (Ethiopia)
International Center for Technology Assessment (U.S.)
International Society of Doctors for the Environment (Austria)
International Trade Union Confederation
International Union of Food, Agricultural, Hotel, Restaurant, Catering, Tobacco and Allied Workers' Associations
Loka Institute (U.S.)
National Toxics Network (Australia)
Public Employees for Environmental Responsibility (U.S.)
Science and Environmental Health Network (U.S.)
Silicon Valley Toxics Coalition (U.S.)
Tebtebba Foundation - Indigenous Peoples' International Centre for Policy Research and Education (Philippines)
The Soils Association (United Kingdom)
Third World Network (China)
United Steelworkers (U.S.)
Vivagora (France)



(訳注1)
国際技術評価センター(CTA)/ナノ技術とナノ物質の監視のための原則

(訳注2)
当研究会もこの基本原則に賛同する意思を伝え、10月3日に賛同グループに加わりました。
現在、世界6大陸の70以上の団体から賛同が寄せられているとのことです。

From: George Kimbrell
To: YASUMA Takeshi
Sent: Wednesday, October 03, 2007 4:06 AM
Subject: RE: Endorsing the principles for nanotechnology

Takeshi Yasuma,

I am very pleased to add Citizens Against Chemicals Pollution (CACP) as a signatory of the Principles for the Oversight of Nanotechnologies and Nanomaterials. We now have over 70 organizations that have endorsed the Principles from six continents. Please feel free to contact me with any further questions.

Best regards,
George

George A. Kimbrell | gkimbrell@icta.org
Staff Attorney
The Int'l Center For Technology Assessment &
The Center For Food Safety
660 Pennsylvania Ave., S.E.
Suite 302
Washington, D.C. 20003
202-547-9359 | fax 202-547-9429



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