EHN 2009年8月12日 論文解説
鉄ナノ粒子はヒト肺細胞に有毒 オリジナル論文: ゼロ価鉄ナノ粒子及び二価鉄は 気管支上皮細胞に酸化ストレスを引き起こす 情報源:Environmental Health News, August 12, 2009 Iron nanoparticles can be toxic to human lung cells Synopsis by David Buchwalter, Ph.D http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/iron-nanoparticles-toxic-to-human-lung-cells/ Original: Keenan, CR, R Goth-Goldstein, D Lucas and DL Sedlak. 2009. Oxidative stress induced by zero-valent iron nanoparticles and Fe(II) in human bronchial epithelial cells. Environmental Science and Technology doi:10.1021/es9006383. http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es9006383?journalCode=esthag 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) 掲載日:2009年8月13日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ehn/ehn_090812_iron_nano_human_lung_cells.html 大規模な汚染サイトの修復に使用される鉄ナノ粒子は急速に酸素と反応し、ヒト肺細胞を殺すことができる。 鉄ナノ粒子に結合する酸素分子の数は細胞毒性における重要な要素であることを米化学会のジャーナル『Environmental Science and Technology』に発表された研究が発見した。酸素分子が結合していない鉄のナノ粒子は、酸素に曝されると急速に反応し、肺細胞を損傷することができる活性化合物を形成する。 どのタイプのナノ粒子が細胞に最も有害かを理解することが重要である。最も懸念されることのひとつは、これらのナノ物質を製造する時にひどく暴露することあり得る労働者の健康と安全である。 ナノ粒子は、通常、炭素や金属類で作られる非常に小さな物質である。それらは、消費者製品、医療、産業プロセスなど非常に広い応用分野での使用がますます増大している。そのサイズが非常に小さいために、ナノ粒子は周囲の環境に対して、同じ成分で作られている通常のサイズの物質とは異なる反応を示す。 ゼロ価鉄(nZVI)(訳注1)ナノ粒子と呼ばれるタイプは、塩素系有機溶剤(訳注2)、農薬、汚染地下水中の金属類のような汚染物質を修復するために大きな威力を持っている。ゼロ価鉄(nZVI)はすでに商業的に使用可能であり、その使用においては大量のナノ粒子を環境中に導入する。 しかし、これらの粒子に環境の浄化に役立つ能力を持たせる同じ特性、すなわち、それらの高反応性がまた、生体に潜在的な有害性をもたらす。ある反応では、広く酸化ストレスと呼ばれているプロセスで細胞中のDNAを損傷することができるフリーラジカル(訳注3)を放出することができる。前の研究は粒子が酸化プロセスを通じて肺細胞に有毒となり得ることを発見した。 ゼロ価鉄(nZVI)ナノ粒子が吸入されると、ヒト肺細胞にどのように影響を及ぼすかをテストするために、研究者らは肺細胞を異なるレベルのゼロ価鉄(nZVI)ナノ粒子及びもっと不安定な形態である酸化鉄(Fe(II))に暴露させた。そして結果を比較した。 両方のタイプは同じような仕方で肺細胞を損傷した。ゼロ価鉄(nZVI)ナノ粒子及び酸化鉄(Fe(II))のテストした中での最低用量では1時間後でも約4分の3の細胞が生きていた。最も高い用量では約4分の1だけが生き残った。 ゼロ価鉄(nZVI)ナノ粒子は、テストが同様な細胞損傷を引き起こさなかった前の4時間、酸化(酸素と反応)した。 このことはゼロ価鉄(nZVI)ナノ粒子が酸素と接触するとそれらの形態は急速に変化し、肺細胞を損傷することができる酸素ラジカルを放出することを示唆している。この結果は、ナノ粒子が最初に高活性酸化鉄(Fe(II))になり、次にもっと安定した第2鉄イオンになるということを見つけた以前の研究を支持するものである。それは、細胞を損傷する酸化ストレスをもたらす酸化鉄(Fe(II))の酸素とのさらなる反応である。 著者らは、ナノ粒子中の鉄の酸化状態はその毒性における重要な要素であると結論付けている。 訳注:関連記事
訳注3:フリーラジカル |