米EPA外部レビュー用ナノ技術ドラフト白書 2005年12月2日
パブリック・コメント及びエグゼクティブ・サマリー
EPA科学政策審議会ナノ技術ワーキング・グループ


情報源:External Review Draft Nanotechnology White Paper
Prepared for the U.S. Environmental Protection Agency
by members of the Nanotechnology Workgroup, a group of EPA's Science Policy Council


External Review Draft Document, December 2, 2005 (PDF, 738KB, 134 pages)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年12月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_051202_Nano_wp_draft_summary.html

 ナノ技術は、新たな又は強化された材料又は製品を開発するために、原子及び分子レベルで物質を操作する科学である。

 2004年12月、EPA科学政策審議会は、この新たな技術が開発されるにつれて人間の健康と環境の保護を確実にするためにEPAが目を向けなくてはならない問題を特定し記述するために、EPA内に横断的なワーキング・グループを設立した。ナノ技術に関するドラフト白書はこのワーキング・グループの成果である。

 ドラフト白書はナノ技術について述べ、資源の持続可能な使用を促進することができるナノ技術とその応用の潜在的な便益についての議論を提供している。リスク管理の問題とEPAの法的権限の概要が述べられ、リスク評価問題の広範な議論が行われている。この白書はナノ技術の環境への適用とその影響の両方について研究の必要性を特定し、科学政策の問題と研究の必要性への対応のための、次のステップに関する勧告で結んでいる。

 EPAは、ナノ技術に関する研究の必要性とリスク評価の問題に対応するために、この白書を用いるつもりである。ドラフト白書は、独立した専門家の検証を受ける予定であるが、それは2006年2月中に実施されることになっている。パブリック・コメントはこの外部ピアレビュー審査会の前に受け付けられる。2006年1月31日までに届けられた全てのコメントは、この外部ピアレビュー審査会に検討用として提出される。それ以降に届けられたコメントはEPAによって検討される。この白書に関するコメントは、電子政府 http://www.regulations.gov/fdmspublic-rel11/component/main のウェブサイトを用いて2005年12月21日から受付が始まる。このサイトは”匿名アクセス”なので、コメント本文に書かない限り、EPAはあなたの身元、E-メール・ アドレス、その他コンタクト情報を知ることはできない。


外部レビュー用ドラフト エグゼクティブ・サマーリー
 ナノ技術は、消費者製品から医療介護、輸送、エネルギー、そして農業まで、アメリカ産業界の多くの分野に変化と向上を与える可能性がある。これらの科学的便益に加えて、ナノ技術は環境中の汚染物質を測定し、監視し、管理し、そして最小化することを向上させる新た機会を提供するものであり、アメリカ環境保護局(EPA)は、これらの機会を支持し推進し続けるであろう。しかし、ナノ技術の適用が拡張し続けるとともに、EPAはまた、ナノスケール粒子(一般にナノ物質として知られている)を含む物質への曝露により生ずる潜在的なリスクをより良く理解し対応することにより、人の健康を守り環境を保護する義務と権限を持っている。

 過去5年間、EPAはナノ技術の環境への適用を開発し、潜在的な人の健康と環境への影響を理解するために、研究に資金を出し、研究方向を設定することについて主導的な役割を果たしてきた。この様な研究は既に実を結んでいるが、特にそれは、ナノ物質を環境浄化のために使用すること、及び生物学的システム中でのナノ物質の性質を理解することである。
 ナノ技術を用いたいくつかの環境的技術は進歩し研究段階を超えている。また、多くのナノ物質が、汚染の削減又は浄化を促進することを意図した新しい製品なのではないかということで、あるいは、EPAの規制のための検証プロセスに入ってきたということで、EPAの注意を引くようになった。EPAとしては、ナノ技術は、監視すべき超現代的なものであるという認識から、対応すべき現実の問題になってきた。

 2004年12月、EPAの科学政策審議会は、環境中のナノ物質に曝露することから生ずる潜在的なリスクをより良く理解することはもちろん、ナノ技術が提供するかもしれない環境保護のための重要な便益を社会が蓄積することを確実にするよう対応しなくてはならないとして、EPA内を横断するワーキング・グループを設立した。この白書はそのワーキング・グループの成果である。

 白書は、ナノ技術とは何か、EPAがなぜそれに関心を持つのか、そしてナノ技術と環境に関してどのような機会と課題が存在するのかについて記述する序言から始まる。そして、資源の持続可能な使用を促進することができる他の適用とともに、環境技術を述べつつ、ナノ技術の潜在的な環境的便益についての議論に移る。
 下記は、リスク管理及びEPAの法的権限に関する概要であり、それはナノ技術に特有なリスク評価の問題を議論するための舞台を作るものである。そして白書は、ナノ技術の環境への適用とその影響の両方のための研究の必要性に関して広範な検証を行っている。
 EPAが当面の優先事項にフォーカスするのを助けるために、白書は科学政策問題と研究の必要性に目を向けて次のステップに関する勧告をもって結論としている。補足的情報が多くの付属書の中に用意されている。

 主要な勧告には下記が含まれる。
  • 汚染防止、生産者責任、及び持続可能性
    EPAは、汚染防止、持続可能な資源の利用、及びナノ物質の製造と使用における良好な生産者責任を推進する取り組みを推奨し、支援し、開発するための資源と専門性を約束すべきである。さらに、EPAは、グリーン・エネルギーやグリーン・マニュファクチャリングのような環境的に有益な取り組みを支援する方法を特定するための、新たな”次世代”のナノ技術に迫るべきである。

  • 研究
    EPAは、ナノ技術に関する情報をより良く理解し適用するために、研究を行い、協力し、触媒作用として機能すべきである。
    • 化学的同定と特性化(chemical identification and characterization)
    • 環境的運命(environmental fate)
    • 環境的検出及び分析(environmental detection and analysis)
    • 潜在的放出と人の曝露(potential releases and human exposures)
    • 人の健康影響評価(human health effects assessment)
    • 生態系影響評価(ecological effects assessment)
    • 環境技術適用(environmental technology applications)

  • リスク評価
    EPAは、いくつかの人工ナノ物質に関するケース・スタディを実施すべきである。そのようなケース・スタディはナノ物質に関するリスク評価を実施するための、かけがえのない考慮を特定するために有益である。ケース・スタディはまた、情報のギャップを特定するのに役立ち、そのことはリスク評価プロセスを特徴付ける研究領域を描くのに役立つ。

  • 共同研究とリーダーシップ
    EPAは、ナノ物質の適用と潜在的な人の健康と環境への影響に関する共同研究を継続し拡大すべきである。

  • EPA内横断的ワーキング・グループ
    EPAは、ナノ技術科学と政策問題に関する情報の共有を推進するために、継続的なEPA内横断的ワーキング・グループを召集すべきである。

  • 訓練
    EPAは、科学者及び管理者のために、ナノ技術訓練活動を継続し拡大すべきである。

 ナノ技術は、成長し急速に変化する分野として出現した。ナノ物質の新世代が展開し、それとともに新たな、そして恐らく予測できない環境問題が出現するであろう。便益のための強化とナノ物質の影響評価に対するPAのアプローチが、新たな技術の拡大及び前進と平行して展開し続けるということが極めて重要である。



化学物質問題市民研究会
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