FoE ナノ・ニュース2006年11月
FoE オーストラリア
サムソンの”ナノ銀”洗濯機の回収を要求
リスクの懸念が高まる中で


情報源:Friends of the Earth Australia
FoE Nano News November 2006
FoE calls for recall of Samsung "Nano Silver" washing machine amid growing risk concerns
http://nano.foe.org.au/node/159

Friends of the Earth (FoE) Nanotechnology Project

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年12月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_recall_Samsung.html

 ナノ銀(銀ナノ粒子)(訳注1)が環境系と人の健康に及ぼす有害影響について懸念が高まる中で、11月23日付け米ワシントン・ポスト紙によれば、アメリカ環境保護庁は世界で初めてナノ技術に特化した規制を導入する方向に動いていることを発表した訳注2)。米EPAは今後、ナノ銀を含み殺菌剤として”抗菌”機能を持つと主張する製品を規制する。それらにはサムソンの”ナノ銀”洗濯機、冷蔵庫、掃除機及び空調機などが含まれる。

 この数ヶ月、ナノ銀が環境中の有益なバクテリアと人の健康に許容できないリスクを及ぼすという懸念が高まっていた。その反動が殺菌剤としてのナノ銀を規制するという米EPAの決定という結果に現れ、スウェーデンでは”ナノ銀”の洗濯機が市場から撤去され、そしてドイツ市場からの同社洗濯機の撤去要求 がFoE ドイツ によってなされた。

 サムソンの”ナノ銀”洗濯機のような製品は、ナノ銀を直接、下水に放出する。ナノ銀は病原体やバクテリアに対して非常に毒性が高いので、ナノ銀の抗菌剤としての使用が高まっている。しかし、ナノ銀を含む廃水は有益なバクテリアを殺し生態系の機能をかく乱するという現実のリスクがある。『Toxicological Sciences and Toxicology In Vitro』に発表された研究はまた、ナノ銀はインビトロ(試験管)で哺乳類の生殖系列幹細胞(germ line stem cells)、脳細胞、及び肝細胞に非常に有毒であることを示している。

 ナノ銀の有毒性を示す多くの証拠、及び殺菌剤としてのサムソンの”ナノ銀”洗濯機のような製品を規制するという米EPAの決定に照らして、Friends of the Earth はサムソン社に対し、ピアレビューされた研究が同社の”ナノ銀”製品が環境と人の健康に対し安全であると立証することができるまでオーストラリアの市場から回収するよう要求する。サムソンはすでにスウェーデンにおいて人々が懸念しているためにナノ銀製品を市場から撤去している。、Friends of the Earth はサムソンがオーストラリアにおいても同様に同社のナノ銀製品を市場から撤去することを要求する。

 我々はさらに、毎日250万人の乗客が利用する香港地下鉄での銀/二酸化チタンの広範な消毒剤の使用を即刻中止することを要求し、また交通当局に対し年間10億人以上の旅客が利用するロンドン幹線及び地下鉄駅及び列車にナノ銀消毒剤を導入する計画を止めるよう要求する。

 ナノ粒子の有害性リスクがほとんど理解されておらず、それらが労働者、公衆及び環境系の健康に及ぼす脅威、及びこれらのリスクを管理する規制システムが存在しないので、FoE オーストラリアはナノ粒子を含む製品の発売を直ちに延期することを繰り返して要求する。ナノ粒子を含む製品は公衆と環境をリスクから守る規制がない場合には市場に導入されるべきではない。


訳注1:
ナノ銀・ナノシルバーとは/ナノテクによる殺菌・抗菌剤 銀ナノ・ナノシルバーコロイド・溶剤について

訳注2:
ワシントン・ポスト紙2006年11月23日報道の紹介/EPA ナノ銀殺菌剤製品を規制する(当研究会訳)



化学物質問題市民研究会
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