欧州環境事務局(EEB)2011年3月17日
ナノ食品が我々の食卓をうろつく

情報源:European Environmental Bureau, Brussels, 17th March 2011
Will nanofoods sneak onto our plates?
http://www.eeb.org/index.cfm/news-events/news/will-nanofoods-sneak-onto-our-plates/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年3月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/EEB/EEB_110317_Nano_Foods.html

 EUの3機関(訳注:欧州理事会、欧州議会、欧州委員会)昨晩、新奇食品(訳注1)の規制を討議するために会合を持った。昨晩の討議は、”ナノ食品”には真剣な注意が払われることなく、クローン食品の議論の暗礁に乗り上げた(訳注2)。

 クローン食品とナノ食品の両方とも新奇食品の規制対象である。

 ”人と環境に及ぼすナノテクノロジーの影響について多くの懸念があり、食品規制当局がその影響について十分に理解することなく、ナノテクノロジーが我々の食品中で使用されることになるという事実は深刻な問題である”とEEBナノエクノロジー政策担当のルイス・デュプレツは述べた。

 ナノ物質は、DNAの損傷やアスベスト様疾病のような人の健康に新たなリスクを及ぼすかもしれないことを研究が示唆している。食品は体内に取り込まれるので、食品分野は規制当局からの特別の注意が必要であるとEEBは述べている。

 EEBは、規制の中でのテスト手法に関する科学的不確実性への明確な言及を求めている。強力で信頼性のあるテスト手法が合意されるまで、市場に出すことの認可はなされないということが規制の本文の中で明確にされるべきである。

3月29日更新

 3年間の審議の後、昨晩、最終討議がもたれたが、EUの3機関(訳注:欧州理事会、欧州議会、欧州委員会)は新たな新奇食品規制(Novel Foods Regulation)に関して合意に至らなかった。同じく新奇食品規制の対象となるクローン食品に関する意見の分裂のために、食品中のナノテクノロジーの使用を規制することについて進捗はなかった。

 このことは、ナノテクノロジーを利用して製造された食品は、今後長い年月の間、EUの法律の下で具体的に対応されることはないであろうということを意味する。

 ナノ食品を無視することの危険性を指摘していたが、EEBはこの結果に失望した。


欧州環境事務局(EEB) 2011年3月11日
EU議長国ハンガリー農業開発大臣への手紙
新奇食品調停委員会2011年3月16日会合へのEEB勧告


情報源:EUROPEAN ENVIRONMENTAL BUREAU Brussels, 11 March 2011
Letter to Minister of Rural Development, Hungary
EEB Recommendations in view of the Novel Foods Conciliation Committee Meeting
on 16th of March 2011
http://www.eeb.org/EEB/?LinkServID=B3811E29-E9CD-6239-C17282C58EAE34F3&showMeta=0

ハンガリー農業開発大臣 サンドール・ファゼカス殿

新奇食品調停委員会2011年3月16日会合へのEEB勧告

親愛なるファゼカス大臣

 3月16日開催予定の新奇食品(Novel Foods)(訳注1)に関する調停会合に関し、欧州で最大の環境市民組織である欧州環境事務局(EEB)は、議長国ハンガリーに、食品において急速に成長しているナノテクノロジー分野のための責任ある注意深い規制を支持するよう要請します。

 ナノテクノロジーの応用は、人の健康に及ぼすかもしれない高いリスクと、食品でのそのような応用の利益について疑問があるので、私たちは、あなたがヨーロッパの人々に強い意思表示を送り、ナノテクノロジーを利用した食品は、それが人の健康と環境に安全であることが証明されるまで、欧州連合(EU)の市場に出ないことを確実にするよう要請いたします。

 特に、議長国ハンガリーに次のことを要請します。

  1. 欧州議会が提案した科学的不確実性と不適切なテスト方法への言及を含む第8条を支持すること。

     ナノ粒子はサイズが小さいので、人の体に取り込まれやすく、細胞、組織、臓器に侵入する高い可能性があります。科学者らは、DNAの損傷と関連する可能性やアスベストのような病原性を含んでナノテクノロジーに由来する潜在的な多くのリスクを特定しています。食品は摂取されるので人の健康に直接脅威を及ぼします。

     欧州食品安全機関(EFSA)を含むヨーロッパ中のリスク評価機関は、食品中のナノ物質のリスク評価実施には、まだ高い不確実性があり、ナノ食品の安全性を保証するためにはツールと経験が不足していることを明らかにしています。

     したがって私たちは、新奇食品は人の健康の安全に関わる懸念を及ぼさない時にのみ許可されること確実にし、”特に不十分なデータ又は不適切なテスト方法のために、科学的不確実性がある場合には、そのような食品は安全であるとはみなされるべきではないということを確実にするよう理事会に要請します。”

  2. 新奇食品が環境に新たなリスクを及ぼさないことを確実にすること。

     ナノ物質は、製造から廃棄までの製品ライフサイクルの全段階で環境に新たな問題を及ぼすかもしれません。特に、水中にたどり着いたナノ形状の物質は、たとえ非常に低濃度であっても水性生物に急性毒性をもたらすかもしれません。土壌中での存在は食品分野及び農業分野の全ての人々に新たな懸念を引き起こします。したがって私たちは、新奇食品に環境への有害影響をもたらすリスクがある時には、欧州の市場に出すことができないことを確実にするよう強く促します。
 あなたの支援に感謝します。

Pieter de Pous
EEB Interim Secretary General

Laszlo Perneczky
EEB Board Delegate for Hungary


訳注1:新奇食品(Novel foods)の定義
(欧州議会プレスリリース2010年5月4日)
Novel foods: MEPs vote to exclude food from cloned animals
 新奇食品はEUにおいて、最初に新奇食品に関する法律が導入された1997年以前には著しい程度には消費されていなかった食品として定義される。それらは、ナノテクノロジーのような新たな製造プロセスによって製造される食品のように新たに開発された食品を含むが、EU外では伝統的に消費されていた食品も含む。

訳注2:
COUNCIL OF THE EUROPEAN UNION Brussels, 29 March 2011 Conciliation on novel foods failed

訳注:関連情報


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