パブリック・コンサルテーション用科学的意見草案
食品及び飼料へのナノ科学及びナノ技術の適用により
生ずる潜在的なリスクに関するリスク評価ガイダンス

EFSA科学委員会
欧州食品安全機関(EFSA)、パルマ、イタリア
公開:2011年1月14日/締切:2011年2月25日

情報源:ENDORSED FOR PUBLIC CONSULTATION DRAFT SCIENTIFIC OPINION
Guidance on risk assessment concerning potential risks arising from
applications of nanoscience and nanotechnologies to food and feed1

EFSA Scientific Committee2, 3
European Food Safety Authority (EFSA), Parma, Italy
Published: 14 January 2011
http://www.efsa.europa.eu/en/consultations/call/scaf110114.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年2月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/EFSA/EFSA_draft_opinion_consultation_Jan_2011.html

概 要

 欧州委員会により、科学委員会は、食品、飼料、及び農薬へのナノ科学及びナノ技術の適用により生ずる潜在的なリスクに関するリスク評価ガイダンスを作成するよう求められた。

 この工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスは、食品及び飼料(食品添加物、酵素、香料、食品接触材料、新規食品、飼料添加物、及び農薬を含む)の分野におけるナノ科学及びナノ技術の利用に関わる適用のリスク評価のための実際的なガイダンスを提供するものである。

 一般的な(訳注:従来の)リスク評価パラダイム(ハザード特定とハザード特性化に続く曝露評価及びリスク特性化)は、これらの分野に適用可能であり、したがって様々な段階のための適切なデータと情報がリスク評価を行なう評価者に利用可能となるようにすべきである。

 工業用ナノ物質(ENM)の適切な特性化は、食品/飼料中における同一性(identity)と物理化学的特性を確立するために本質的に重要である。物理化学的パラメーターは様々な環境中で変化し、工業用ナノ物質(ENM)の特性化は様々な段階で考慮されなくてはならない。すなわち、製造された状態(新品状態)、食品/飼料製品中での使用のための調剤、食品/飼料中での存在、毒性テストでの使用、生体液及び生体組織での存在などである。

 工業用ナノ物質(ENM)のリスクは、化学的成分、物理化学的特性、ハザード特性及び潜在的な曝露によって決定される。物理化学的特性化は、ナノ物質の特性を理解し、工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスが適用可能かどうかを決定するために必要である。吸収・分布・代謝・排泄(ADME)パラメーターは、工業用ナノ物質(ENM)の化学的成分とともに物理化学的特性(例えば、サイズ、形状、溶解性、表面電荷、反応性など)によって影響を受けるように見える。工業用ナノ物質(ENM)の内部曝露をもたらす吸収と分布、反応性、移動性、及び残留性が、詳細テストのための一般的指標である。ナノ特有の特性の程度が小さい場合には(A loss of nano-specific properties)、従来のリスク評価が行なわれ、ナノ特有のリスク評価手法は適用されないであろう。

 食品/飼料(matrix)中、又は消化器体液中で、工業用ナノ物質(ENM)が非ナノ形状に完全に変換されると判断される場合には、特定用途のための非ナノ形状のための(訳注:従来の)EFSAガイダンスが適用されるべきである。しかし工業用ナノ物質(ENM)の変換について、分解/変質のタイミングと場所は、工業用ナノ物質(ENM)のナノ形状特性が、動的及び局部的影響を含んで、生物学的挙動に影響を及ぼす瞬間まで、重要である。

 この工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスによってカバーされる工業用ナノ物質(ENM)は、二つのカテゴリーに分類される。第一は、非ナノ形状物質が食品/飼料中において意図された用途ですでに承認されている時に、ナノ形状物質が同じ用途で適用される場合であり、第二は、対応する非ナノ物質が承認されていない新規工業用ナノ物質(ENM)の場合である。

 食品/飼料中で同じ用途の承認された非ナノ形状物質がある場合、工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスの目的は、ナノ形状であることにより引き起こされるかもしれない潜在的な追加的ハザードとリスクに求められる補足的及び特定の情報を示すことである。そのような工業用ナノ物質(ENM)については、生体外(in vitro)遺伝子毒性テスト、ADME、及びげっ歯類による90日間反復経口投与毒性試験が、この工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスにしたがって実施されるべきである。これらの調査の結果、及び、非ナノ形状に関するデータによっては、他の生体外試験が必要かも知れない。  工業用ナノ物質(ENM)が食品/飼料中、及び消化器体液中に残留するが、非ナノ形状での使用が承認されていない場合には、その工業用ナノ物質(ENM)に関する毒性テストが、その意図する用途に関連するEFSAガイダンスに、この工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスで述べられるナノ特性に応じて必要な修正を加えて、行なわれるべきである。

 工業用ナノ物質(ENM)の詳細なリスク評価に着手する前に、提案される用途の予想される曝露シナリオが概要が示されるべきである。これらの曝露シナリオは、要求されるハザード特性化の程度を決定することに寄与し、リスク評価に求められる曝露評価のためのパラメーターを提供するであろう。
 工業用ナノ物質(ENM)に関する適切な生体外及び生体内試験が、ハザードを特定し、ハザードを特性化するために容量−反応特性データを得るために、実施されるべきである。非ナノ形状物質のために用いられるテスト・モデルと標準テスト・プロトコールは、必ずしも工業用ナノ物質(ENM)のために適切又は最適ではないかもしれず、研究者コミュニティーにおける現状の取組は、これらの問題に目を向けている。

 曝露評価のための工業用ナノ物質(ENM)の量を決定するための出発点は、現在は、食品/飼料に加えられる物質、又は食品/飼料に接触する物質に依存する。加えられた工業用ナノ物質(ENM)の初期特性化は、曝露評価における仮定として用いることが出来るが、食品/飼料(matrix)中にナノ形状として存在する量を決定することが望ましい。現在、食品又は飼料(matrix)中に存在する工業用ナノ物質(ENM)を日常的に決定することは可能ではなく、そのことが曝露評価における不確実性を増大させる。もし、食品/飼料(matrix)中のナノ形状又はその中で吸収される形状を決定することが出来ないなら、加えられる全ての工業用ナノ物質(ENM)が、ナノ形状で存在し、摂取され、吸収されるという仮定がなされるべきである。

 工業用ナノ物質(ENM)の全ての可能性ある適用、局面、及び特性をカバーするための適切で確認されたテスト手法の欠如に関連する工業用ナノ物質(ENM)の同一性、特性化、及び検出に関連するいくつかの不確実性が現状では存在する。同様に、工業用ナノ物質(ENM)には、現在の標準生物学的及び毒性学的テスト手法の適用可能性に関連して、多くの不確実性がある。これらの理由のために、この工業用ナノ物質(ENM)ガイダンスは、今後の経験と獲得する知識に基づいて更新される必要があるであろう。この分野は開発が速いので、このガイダンス文書は適切な開発に従って修正されるであろう。

キーワード
Food, Feed, Guidance, Engineered Nanomaterials, Nanoscience, Nanotechnology, Nanotechnologies, Risk Assessment


訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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