カナダ・ナショナル・オブザーバー 2020年12月7日
グラッシー・ナロウズのファースト・ネーションの幹部は
水銀処理センターへの政府資金供給を喝采する

マアン・アルーミディ(カナディアン・プレス)

情報源:Canada's National Observer, December 7th 2020
Grassy Narrows First Nations chief applauds funding for mercury treatment centre
By Maan Alhmidi|The Canadian Press
https://www.nationalobserver.com/2020/12/06/news/
grassy-narrows-first-nations-chief-funding-mercury-treatment-centre


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年12月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/news/201207_CNO_
Grassy_Narrows_First_Nations_chief_applauds_funding_for_mercury_treatment_centre.html


Canadian Press News

 慢性水銀中毒の影響を受けて生活している人々のための治療センターへの新しい資金供給は、過去60年間、数十年前の水質汚染事件の陰で過ごしてきた北オンタリオの先住民族への希望の光となる。

 ”私たちのコミュニティのメンバーは長い間苦しんできた”とグラッシー・ナロウズのファースト・ネーション(カナダ先住民族)の幹部ランディ・フォビスターは最近のインタビューで語った。

 ”それはコミュニティ全体にとって素晴らしいニュースである。我々はついにトンネルの終わりに光を見ている”。

 オンタリオ州ケノラの北東約 100キロにあるグラッシー・ナロウズのファースト・ネーションの住民らは、近くのイングリッシュ・ワビグーン川の有毒な水銀によりもたらされた長年の精神的および肉体的健康問題と格闘してきた。約130 km 離れた、ホワイトドッグ・ファーストネーションとしても知られるワバセモン・インディペンデント・ネイションズ(独立国)の多くの住民らも同じであった。

 これらのコミュニティによる長年の主張の後、オタワ(カナダ連邦政府)は、今年初めにグラッシー・ナロウズとワバセモンの両方と合意に達した。連邦政府は、メチル水銀中毒を患っている住民の必要を満たすための施設を建設するために、各コミュニティに最大 1,950万カナダ・ドル(約15億6,000万円)を約束した。

 現在、オタワはコミットメントの規模を大幅に拡大している。

 先週発表された秋の経済声明では、自由党政府は両コミュニティの水銀処理センターの建設と運営を支援するために、 2024-2025 会計年度までに 2億カナダ・ドル(約160億円)、さらにプラス 30万カナダ・ドル(約2,400万円)を継続して割り当てた。

 財政の最新情報によると、2021-22 会計年度に始まる予定の資金により、ワバセモン及びグラッシー・ナロウズ(Asubpeeschoseewagong とも呼ばれる)の両方のコミュニティ・メンバーが治療を受けている間、家の近くにとどまることができる。

 オンタリオ州ドライデンのリード製紙工場の化学プラントが 9,000キログラムの水銀をコミュニティのメンバーが漁業で依存している川に投棄した1960年代以来、何百人もの住民が水銀暴露に関連する慢性的な健康問題に苦しんできた。

 ”生まれてからずっと、今日においてさえ、神経に影響を与えるものを体内に取り込んでいる”と先住民族の幹部フォビスターは述べた。 ”それは、水銀中毒の症状のような一般的な兆候を伴なって若者に影響を及ぼす”。

 先週、先住民サービス大臣(Indigenous Services Minister)のマーク・ミラーは、水銀汚染の現地に対する行動の欠如を”我々の歴史における異常(an aberration in our history)”と表現した。

 ミラー大臣は、先住民コミュニティがより包括的な連邦資金を要求したため、治療施設の以前の計画は遅れたと述べた。

 ”我々がすぐにわかったのは、グラッシー・ナロウズとカナダ政府の間に信頼関係がなかったことであり、ある意味では当然のことであった”と彼は語った。

 ”その信頼の一部は、彼らが尊厳を持って生きることができるように、コミュニティが人々を治療するために使用される信託(基金)にお金を確保することである”。

 財政更新の新しい計画では、連邦政府が 2021年から22年に 2,800万カナダ・ドル(約24億円)、翌年に 3,200万カナダ・ドル(約25.6億円)、次の2年間にそれぞれ 7,000万カナダ・ドル(約56億円)をプロジェクトに充てる予定である。

 野党の批評家は、賞賛する前に、それが具体的な形になるのを待つと述べた。

 ”約束は素晴らしいが、解決策を見る必要があり、行動を見る必要があり、これらの問題が実際に解決されるのを見る必要がある”と保守党(訳注:野党第 1党である)の先住民サービス批判家であるゲイリー・ビダルはインタビューで述べた。

 ”発表は見たが、結果は見たことがない”と彼は語った。

 ミラー大臣は、水銀処理施設はカナダの医療制度において独自の役割を果たす可能性があると述べた。

 同大臣は先週の記者会見で、”水銀中毒の影響を研究できる最先端の場所になることを願っている”と述べた

 コミュニティ幹部のフォビスターは、約 1,200人の住民からなる彼のコミュニティは最初の水銀汚染が起こった後も引き続き汚染された水と格闘し続けていると述べた。

 グラッシー・ナロウズは、連邦政府から水の安全性についてより多くの情報を入手しようとしたため、沸騰水勧告(a boil-water advisory)がすでに 2年近く実施されていた後、2015年に安全でない飲料水に関する非常事態を宣言した。

 フォビスターによると、水質検査では、水の消毒に使用される塩素が植物や枯れ葉などの天然有機物と反応したときに形成されるトリハロメタン(THM)と呼ばれる化合物が示された。彼らはまた、発がん性の可能性があると考えられる他の 2つの消毒副産物を発見した。

 水は今年の10月に再び人間の飲料に適していると見なされたが、フォビスターによると、それは水処理施設と地元の給水管の作業が何年にもわたって実施された後のことであった。しかし彼は、コミュニティのメンバーは依然として水道水を使用することに疑いを持っており、代わりに毎週コミュニティに配達されるボトル入り飲料水に依存していると述べた。

 フォビスターによると、2週間前のテストで、コミュニティの学校の水道水に鉛が含まれていることが判明したという。

 政府は、コミュニティの新しい水処理プラントを水銀処理センターの隣に建設するための資金を提供することを約束した。フォビスターによると、2つの施設が建設される場所ではすでに地盤試験が行われているという。

 彼は、COVID-19 の恐れがあるにもかかわらず、彼のコミュニティは建設労働者がコミュニティに入ることを許可すると述べた。彼は両方のプロジェクトが春に始まるのを見たいと言った。

 ミラー大臣は、18〜36か月で建物を完成させるためのタイムラインを策定した。

 一方、フォビスターは、川がきれいになるまで、彼のコミュニティが水銀汚染の影響に耐えなくてはならないことを恐れていると述べ、そのようなプロセスは、問題の解決を長引かせ、数世代にわたりグラッシー・ナロウズの住民に試練を課す可能性があると述べた。

 ”魚が健康なら、土地は健康であり、おそらく、50年後の若者は健康であろう”。

 このレポートは、The Canadian Pressにより 2020年12月6日に最初に発行された。

 この記事は、Facebookと Canadian Press News の協力の下に資金援助を受けて作成された。

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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