米化学会 C&EN 2010年2月19日
EPA化学物質プログラム改革提案
TSCA実施の強化と企業秘密主張の制限が必要と監察総監室
チェリー・ホーグ
情報源:ACS Chemical & Engineering News, February 19, 2010
Reforms Recommended For EPA Chemicals Program
TSCA: More enforcement, limits on confidentiality claims needed, inspector general says
by Cheryl Hogue
http://pubs.acs.org/cen/news/88/i08/8808news2.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年2月22日


 米環境保護庁(EPA)は商業用化学物質に関するEPAのプログラムを内部で改革する必要があると監察総監室(OIG)が2月17日発表の報告書の中で述べた。

 報告書の中の主要な勧告のひとつは、有害物質規制法(TSCA)の下で、規制の実施を強化することである。もうひとつは化学物質製造者がTSCAの下に提出する情報で企業秘密と主張する情報の保護を制限することである。

 OIGは、TSCAに関するEPAの実施努力が欠如していることを見つけたと同報告書は述べている。実施プログラムは、会社が化学物質の製造と輸入を管理する規則に従うことを確実にすることが前提とされている。しかし、EPAのTSCA検査官の仕事は”首尾一貫しておらず、ほとんど圧力になっていない”と同報告書は言う。

 EPAは2008会計年度でTSCA検査をわずか56件しか実施していない。これは、この化学法(TSCA)によって影響を受けるであろうと推測されるアメリカの数十万という事業所の数を考えれば全く少ない。

 ”検査官の数が減少している”ことをOICは見つけている。テキサスやルイジアナには多くの化学物質製造プラントがあるのにTSCA検査官はいない。同様に、輸入化学物質を受け入る大きな港があるカリフォルニアにもTSCA検査官はいないと同報告書は言う。

 EPA実施室は、どのくらい多くの罰金を国庫に入れたかによってその成果を測定しているので、TSCAは実施について低い優先度しか与えられていないとOIGは言う。TSCA違反の罰金は、Clean Air Act(大気)や Clean Water Act(水)のようなEPAが所管する他の法律違反に比べて低い。

 OIGはまた、EPAに提出するあるデータは公開が保護されるという化学物質製造者からの要求に対するEPAの対応を批判している。EPAのプロセスは、”健康と安全に関わる研究のために公開するよりも、むしろ産業側の情報を保護するという傾向がある”と同報告は言う。

 企業秘密であると主張される情報は一般的に、物質名、製造者名、成分の使用場所である。企業秘密情報(CBI)のためのそのような保護には一般的に有効期限がない。さらに、EPAはこれらの企業秘密に対する体系的な検証や確認を一切行っていないことをOIGは見つけた。

 ヒト健康叉は環境に著しいリスクを及ぼすかもしれない物質に関し、会社が提出するほとんど半分の届出で企業秘密の主張がなされていると同報告書は言う。このことは届出の有用性に影響を与えるとOIGは言う。”健康と安全に関するデータは、もし関連する化学物質が分からなければ価値が半減する”とOIGは指摘する。

 同報告書は、EPAが健康と安全に関わる全ての企業秘密の主張に対し、期限を設定するよう勧告している。EPAはまた、TSCAの下に企業秘密のための保護を承認するための基準を規定する詳細な指針を作成すべきであると同報告書は言う。

 さらにOIGは、EPAがある新らたな化学物質叉は物質族(クラス)のリスク評価のための戦略を開発することを勧告している。これらのリスク評価は単一の成分への低容量暴露及び多種化学物質への複合暴露に焦点を合わせるべきである(訳注1)。

 報告書に添付された手紙の中で、EPA副長官ロバート・パーシアセペはOIGの勧告はEPA長官リサ P. ジャクソンのTSCA実施の強化の優先項目と一致していると述べている(C&EN, Oct. 19, 2009, page 28)。パーシアセペ副長官はOIGの提案を実施するであろうことを示した。


訳注1:関連情報


化学物質問題市民研究会
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