EurActiv 2010年1月5日
欧州委員会 ”化学物質のカクテル”に取り組む

情報源:EurActiv, 5 January 2010
Commission to tackle 'chemical cocktails'
http://www.euractiv.com/en/climate-environment/commission-tackle-chemical-cocktails/article-188518

訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年1月15日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/euractiv/100105_chemical_cocktails.html

背景
 ”化学物質のカクテル”は、分離している場合には安全であるように見えるが一緒に吸収されると、精子数の減少、成人のがんと子どもの自閉症の増加のような健康リスクをもたらすかもしれない化学物質の複合影響のことを指す。子ども時代のヒトと動物は化学物質の混合影響に特に脆弱であると言われている。

 環境と健康NGOsは、”化学物質カクテル”の問題をEUの議題にしようと長年試みており、科学者らもまた最近それらについて懸念するようになっている。

 2009年、環境委員スタブロス・ディマスは”化学物質カクテル”を世界の化学物質の議題の主要な将来の課題としてハイライトしていた(EurActiv 02/06/09)。

 欧州環境健康戦略(SCALE)とEU環境健康行動計画(2004-2010)は、リスク評価において化学物質の複合暴露を考慮する必要性を認めている。

EUの更なる情報
その他の情報

 EUの環境大臣らは、複合化学物質への暴露からヒトと動物の健康を守るためにEUの立法措置の必要性を調査するよう欧州委員会に要請した。

 2009年の最後の会議で、EU27ヶ国の環境大臣は化学物質の複合影響に関する結論を採択した。

 大臣らは、個別の化学物質評価はリスクを評価するためには十分ではないと述べ、欧州委員会にいわゆる”化学物質のカクテル”を考慮するためにEUの立法を要請した。

知識のギャップを埋める

 EUの化学物質法であるREACHの下では、リスク評価は化学物質ごとに実施され、化学物質の複合影響の有害性については多くの考慮は払われていない。

 しかし、この”欠陥”は、主に”今日までこの事柄に対する知識が十分ではない”という事実に起因するが、状況は変化しつつある−と駐EUスウェーデン代表部の環境カウンセラーであるウルフ・ブジョルンホルム・オットソンは述べた。

 EU27ヶ国の環境大臣らは、最近のデンマークの研究結果をハイライトしたが、それは2歳の子ども達が食物、水、空気、及び家庭内の対象物を介在とする暴露を測定したものである。その結果は、”ひとつの化学物質の非常に高い暴露のような有害性を引き起こすことの出来る深刻な複合影響”を示しているとオットソンは述べ、もっと多くの研究と現在の法の調整の可能性を調べる必要性を強調した。

生殖への有害物質

 大臣らは、特に内分泌かく乱物質の複合影響について懸念した。内分泌かく乱物質はヒトと野生生物のホルモン系をかく乱し、例えば脳や生殖器官の発達に影響を与えることが出来る。

 環境委員スタブロス・ディマスは、化学物質の内分泌かく乱性を決定するための特定の基準とテスト手法を開発するよう要求していた(EurActiv 02/06/09)。1999年に内分泌かく乱物質のための共同体戦略が採択された。

欧州委員会は2010年に行動を開始する

 欧州委員会は、複合化学物質への暴露に関連するリスクを科学的に評価する研究を完了させようとしている。欧州委員会はまた2010年中に、内分泌かく乱物質の複合暴露を既存の法の中でどのように扱うかについて勧告することが期待されている。

 大臣らはまた、少なくとも2012年までに、既存のEU法が複合暴露から生じるリスクを管理するのに十分な程度を評価し、適切な代替を検討するようEU執行部に要請した。

立場

グリーンピース、WWF、健康と環境連合を含む環境、健康、及び女性団体は、大臣らによる”カクテル効果”のリスクについての認識を歓迎したが、複合暴露低減のために直ちに行動を起こさないことを遺憾とした。

 NGOsは、”様々な発生源からの有害な化学物質への暴露を低減する緊急の措置とより安全な代替物による置き換え”が必要であると述べ、欧州委員会に、既存のEU法、特にREACHにおいて化学物質のカクテルに対処するための確固とした修正を準備するよう強く促した。

次のステップ

2010年初頭:欧州委員会は複合化学物質への暴露に関連するリスクの科学的評価に関する研究を完了させること。
2010年:欧州委員会は内分泌かく乱物質の複合暴露を既存の法の中でどのように対処するがについて勧告すること。
2012年まで:欧州委員会は、既存の共同体の法律が化学物質カクテルへの暴露によるリスクに適切に対応しているかどうかを評価し、適切な修正とガイドラインを考慮すること。

リンク:

欧州連合
Governments
Think-Tanks
NGOs

訳注:関連情報

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化学物質問題市民研究会
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