健康環境連合(HEA) 2010年2月11日発表
新たな報告書が有害な”混合化学物質”からの
よりよい保護の道筋を示す


情報源:The Health and Environment Alliance Information Release, 11 February 2010
Study charts path for better protection from harmful "chemical mixtures"
http://www.env-health.org/IMG/pdf/IR_Kortenkamp_mixtures_toxicity_report_FINAL.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2010年2月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/100211_chemical_mixtures.html



【ブルッセル 2010年2月11日】 欧州委員会の環境総局により委託され、2010年2月9日に発表された重要な報告書[1]によれば、欧州連合(EU)は、”カクテル効果”としてよく知られる混合化学物質への暴露によるリスクを評価し管理することが出来るし、そのようにすべきである。

 『State of the Art Report on Mixtures Toxicity(混合毒性に関する最新の報告書)』は、科学的研究が”環境中の化学物質混合物の問題に対する専用の規制検討の必要性を強調している”と述べている。この報告書は環境総局に委託されたものであるが、欧州委員会のどのような公式見解を反映したものではない。しかし、この報告書はどのようにEU政策が実際に起きている有害な化学物質への複合暴露に取り組むかについての議論に重要な貢献をしている。

 環境総局はこの報告書に関するコメントと質問を2010年4月30日まで求めている。これはEU加盟国省庁とEU科学委員会のコンサルテーション・プロセスに従うものである。欧州委員会の意図は、2012年の初頭までに複合影響からのリスクを評価し管理するための共同の公式見解を発表することである[2]。

 健康環境連合(Health and Environment Alliance)はこの報告書を強く歓迎する。”我々は数年間、人工のホルモンかく乱物質からの複合影響と乳がんとの関係に光を当ててきた[3]”と有毒物質政策顧問のリゼッタ・ヴァン・ヴリエットは述べている。”我々は、欧州委員会が彼らの公式見解を開発するときに、健康環境分野の団体の専門性と懸念が伝わるよう各団体が情報を与えるよう促す”。

 この報告書は、”混合物”に関する現在の科学を批判的に見ており、そのような有毒混合物からのハザードとリスクをEUの法が現在どのように扱っているのかを検討し、EU加盟国の異なるアプローチと経験を調査し、他の政府やWHOの国際化学物質安全性計画のような国際機関がどのようにこの混合化学物質の問題を扱っているかをレビューしている。

 現在のEUの規制の下では、化学物質が及ぼす健康環境リスクの評価は通常単一の化学物質の評価に基づいており、他には干渉する化学物質は存在しないと仮定している。この報告書は、このアプローチは適切ではないことを明確にしている。”科学的研究は混合物の影響は個々の成分のそれぞれの影響よりもはるかに大きいとということを繰り返し示している”と同報告書は述べている。またこの暴露から生じるリスクを評価するための十分な科学的ノウハウがあると言及している。

 最も重要なことは、同報告書が、ヒト健康と環境リスクが過小評価されないようにするために複合暴露評価を多くのEU法に反映するための一貫した明確な法的義務を確立することの必要性を指摘していることである。”我々は欧州委員会がこの報告書の勧告を『内分泌かく乱物質に関するEU戦略』に出来るだけ速やかに完全に取り入れるよう要求する”とリゼッタ・ヴァン・ヴリエットは述べている。

 ヒト、野生生物、及び環境が日々暴露している化学物質の混合物の影響は、2009年12月の欧州環境大臣理事会が発表した結論の主題である。大臣らは深刻な懸念を表明し、欧州委員会に既存の法を評価して修正を提案するよう要請した[4],[5]。

連絡先: Dr Lisette Van Vliet, Toxics Policy Advisor, Health and Environment Alliance, Tel. +32 2 234 3645. Email: lisette@env-health.org +32 4 84 614528 (mobile) Website: www.chemicalshealthmonitor.org

Diana Smith, Communications, Health and Environment Alliance, Tel: +33 1 55 25 25 84, Mobile: +33 6 33 04 2943 E-mail: Diana@env-health.org Website: www.env-health.org

ジャーナリストへの備考

1.『State of the Art Report on Mixtures Toxicity(混合毒性に関する最新の報告書)』
 http://ec.europa.eu/environment/chemicals/effects.htm
 http://ec.europa.eu/environment/chemicals/pdf/report_Mixture%20toxicity.pdf
 この研究は、内分泌かく乱分野の最も重要な科学者であるロンドン大学薬学部毒性学センター所長 Andreas Kortenkamp 教授が指導した。

2. この報告書に関するコメント叉は質問を寄せたいと望む関心及び関連する経験を持つどのような組織でも個人でも2010年4月30日までにENV-Chemical-Mixtures@ec.europa.euに提出することが歓迎される。

3. (省略)

4. 昨12月の環境大臣理事会は欧州委員会に対して2120年末までに、内分泌かく乱物質に関するコミュニティー戦略の実施に関する来るべき報告書の一部として、複合ホルモンかく乱化学物質への暴露がどのように既存のEU法の中で対応されるべきなのかについての勧告をするよう要請した。環境理事会はまた、欧州委員会にEUの法は、異なる発生源及び経路からの複合化学物質(内分泌かく乱物質に限らない)への暴露によるリスクに適切に目を向けているかどうか評価し、必要な修正について、2012年の初頭までに報告するよう要請した。

5. 大臣会議の結果へのNGOの反応については下記を参照のこと。
http://www.env-health.org/IMG/pdf/Final_NGO_response_Council_conclusions.pdf


訳注:関連記事



化学物質問題市民研究会
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