norden news 2015年3月26日
北欧理事会
有害物質のない日々の環境を求める


情報源:norden news (Nordic Council) News, Mar 26, 2015
Calls for a toxic-free everyday environment
http://www.norden.org/en/news-and-events/news/calls-for-a-toxic-free-everyday-environment

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年4月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/norden/norden_150326_toxic-free_environmtent.html

 北欧理事会(Nordic Council)(訳注1)は、EU が有害な化学物質への暴露、特に子どもたちの暴露を防ぐためにもっと効果的な政策を策定し、内分泌かく乱化学物質とも呼ばれるホルモンかく乱物質を特定するための基準を策定することを求めている(訳注2)。REACH の下に”非常に高い懸念がある物質の候補リスト”上にある科学物質の使用は可能な限り速やかに停止しなくてはならない。

The Nordic Council is calling for a more effective policy for preventing exposure to hazardous chemicals, especially of children, and for the EU to draw up criteria for identifying hormone-disrupting substances (known as endocrine disrupting compounds).  有害物質のない日々の環境に関する声明は、2015年3月26日、コペンハーゲンにおける会合で北欧理事会により発表された。(写真

有害物質のない日々の環境に関する北欧理事会の声明

 ある物質について科学的な疑いがある場合には、その出発点は人々の、特に子どもたちの健康を守るために配慮する義務を果たさなくてはならない。基本的な知識の欠如が、必要とする措置に関する決定を妨げてはならない。これはヨーロッパの問題であり、したがって生命と健康を守るための行動の提案を推進する主な責任は欧州委員会にある。

内分泌かく乱化学物質

 人々−特に子どもたち−は、多くの様々な経路、例えば、おもちゃ、化粧品、電子機器、建材、食品容器、医薬品等から多数の化学物質に日々、暴露している。日用品に存在する様々な内分泌かく乱化学物質(EDCs)の量はわずかであるが、それらは累積的に有害影響を持つ可能性があり、このことがこれらの化学物質やその他の有害な化学物質についての懸念をもたらす。

 例えば、それらは、乳がんや前立腺がん、精子の質低下、及び新生児の生殖器官の異常などをもたらす可能性がある。最近の研究もまた、EDCsと、たとえば注意欠陥・多動性障害(ADHD)、糖尿病、及び肥満との関連を示している。

 多くの研究者らは、EDCs について安全な下限値が存在するとは信じていない。重要な要素はいつ暴露したかであり、暴露のレベルではないように見える。例えば、胎内での暴露は、後の人生に、さらには次世代にダメージを引き起こす可能性がある。

 最近の研究は、EDCs への暴露はEU諸国に最低、年間 45 億スウェーデン・クローナ(SEK) の損失と医療費の増大をもたらし、この数値はおそらく氷山の一角である(訳注3)。

 代替は、この問題に対処するための推奨される戦略である。すなわち、そのような代替が存在するなら、有害な物質を他の有害性の低い物質に代替することである。代替の可能性を指摘すれば、もっと有害な特性を持つ製品について、より厳格な政策ガイドラインを実施することが容易になるかもしれない。

 もうひとつの優先事項は、書類による裏付けに関して製造者の責任をもっと明確に特定することである。

立法

 北欧理事会は立法に関する自由裁量を制限しているが、その理由は、司法権は主にEUレベルにあり、主に REACH 化学法、及び化学物質の使用についてのいくつかの他の EU 規則があるからである。

 EU規則を起草するのに非常に時間がかかり、潜在的に有害な化学物質についての数千の報告書のうち、EUレベルで完全に調査されるのは一つか二つしかないということは問題である。立法作業の基本的な部分、例えばEDCsの特定のための基準の起草もまた、欧州委員会内部で遅れている(訳注4)。前進させるためにもっと強力な政治的努力が求められる。

 EDCs への人の暴露を低減するために、更なる措置を取る必要がある!

 結論として北欧理事会は次のことを要求する。
  • 欧州議会は、化学物質に関するEU立法の開発と強化に関して、欧州委員会とともに、積極的に厳しく追究すること(訳注5訳注2)。
  • 欧州委員会は:
    1. 内分泌かく乱特性をもつ物質の定義を明確にするであろうEU立法のための包括的な基準のための提案を可能な限り速やかに提示すること。
    2. EDCsについての情報が含まれるよう、関連するEU法内の標準的情報要求を改善すること。
    3. 利用可能なデータに基づき、疑われる内分泌かく乱特性をもつ物質の審査を導入すること。
    4. 潜在的な影響を評価するために疑われるEDCsの独自のテストを導入すること。
    5. より厳格な化学物質政策を策定するプロセスの一部として、有害な物質を有害性の少ない物質に置きかえる代替を促進すること。
    6. 特定された EDCs への人間、特に子どもの暴露を最小にすることを目指す規則を導入すること。

訳注1
北欧理事会/ウィキペディア
北欧理事会は、バラバラだった北欧の国々が第二次世界大戦に巻き込まれて大きな苦しみを受けたことを反省し、北欧諸国の団結を目指してスカンディナヴィア三王国が中心となって1952年に設立された。現在は、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、アイスランド、グリーンランド(デンマークの自治領)、フェロー諸島(デンマークの自治領)、オーランド諸島(フィンランドの自治領)の5ヶ国3地域で構成される。 また、エストニア、ラトビア、リトアニアがオブザーバーとして参加している。本部はデンマークのコペンハーゲンにある。

訳注2
ChemSec News 2015年1月28日 加盟国及び欧州議会 EDC基準に関するスウェーデンの訴訟に参加

訳注3
内分泌学会 プレスリリース 2015年3月5 内分泌かく乱化学物質の推定費用 EU で年間 1,500億ユーロを越える

訳注4
EurActiv 2014年3月3日 内分泌かく乱物質に関する基準を発表するよう欧州委員会への圧力が高まる

訳注5
HEALプレスリリース 2013年3月13日 欧州議会の内分泌かく乱物質(EDCs)に関する採択は、健康を守ることの緊急性を伝えるものである



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