HEALプレスリリース 2013年3月13日
欧州議会の内分泌かく乱物質(EDCs)に関する採択は、
健康を守ることの緊急性を伝えるものである


情報源:Health and Environment Alliance (HEAL)
Press releases, Brussels, 13 March 2013
European Parliament vote on EDCs conveys urgency of protecting health
http://www.env-health.org/resources/press-releases/article/european-parliament-vote-on-edcs

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年3月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/130313_EP_vote_on_EDCs.html


 【ブルッセル 2013年3月13日】 内分泌かく乱化学物質(EDCs)から公衆の健康を保護することに関する欧州議会議員アサ・ウェストルンドの報告書(訳注1)の欧州議会による本日の採択は、深刻な懸念と包括的で多面的なEUの政策行動に対する強い願望を反映するものであると、健康環境連合(Health and Environment Alliance (HEAL))は述べている[1]

 ”議会は欧州委員会とその他の立法者らに、内分泌かく乱物質への人々の曝露を低減するための措置をとり、健康を保護するための措置は、EDCsと疾病の因果関係が最終的に証明されるまで待つべきではないと言うことを、的確に要求した”と、HEAL の化学物質と慢性疾患防止のための上席政策顧問リゼッタ・ファン・ブリエは述べている[2]

 ”欧州議会議員らは、2015年1月までにEDCsに適切に対応するために既存の法律が変更され、EDCsを正確に特定するための適切なテスト方法を求めること−全体の意図は人々を保護すること−特に人生の脆弱な段階−を含んで、新しい法律が提案されるよう、EUの法律と政策の組織的な見直しが行なわれるのを見ることを望んでいる[3]”。

 ”この採決は、この主導的な国際的健康機関がEDCsの潜在的な有害健康影響について非常に懸念していることを示す最近の世界保健機関と国連環境計画の報告書(訳注2)の示唆を受けている”とリゼッタ・ファン・ブリエは加えた。

 2月中旬に発表された『内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版(State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals 2012)』と題する WHO/UNEP 報告書は、EDCsといくつかの内分泌疾患の間の因果関係についてはかなりの知識のギャップがあるが、生殖系(男性器異常)、神経系(脳発達障害)、そしてある種のがんリスク増大(例えば、乳がん、前立腺がん)への有害影響について、その関連性は明らかであると言及している[4]。さらに、この WHO/UNEP 報告書は、EDCによる疾患のリスクは非常に過小評価されており、人と野生生物への曝露を低減することが重要な焦点であると明確に述べている。

 健康環境連合(HEAL)は、この議会の報告書は、特にEUは、人生の脆弱な段階と混合物の”カクテル効果”に対応する化学物質政策を具体化しなくてはならないと認めていることを歓迎してる。”我々のからだが毎日直面しているEDC曝露の現実を受け止めるEUの戦略と法律を我々は必要としてる。それらの法律は、最後の科学者の全てと化学物質製造産業組織が我々の内部汚染と内分泌関連疾患の増大との間の関連性をしぶしぶ認めるのを待つことなく、我々を守るべきである”と、リゼッタ・ファン・ブリエは強調する。

 議会の報告は:”必要な場合には、内分泌かく乱物質への人の曝露を低減するよう働くために、予防原則をより強調することにより、人の健康の効果的な保護をもたらすよう内分泌かく乱物質に関するEU戦略を修正するよう欧州委員会に要求する(第18項)”。

 多くのEU加盟国は、公衆の健康を保護するために既存の科学に基づき、EDCsに関連する法を既に制定している。

 フランスは、2013年から3歳以下の子どもの、2015年からは全ての年令の人の、使用を意図している全ての食品接触材中での内分泌かく乱物質ビスフェノールA(BPA)の使用を禁止している[5] (訳注3)。1月からは、ベルギーは3歳以下の子どもの使用を意図している食品接触材中でのBPAの使用を禁止した。スウェーデンもまた、今年から、子どもの食品接触材料中でのBPAの使用を禁止した。

 昨年、デンマークは、4つのフタル酸エステル類(DEHP, DBP, DIBP 及び BBP)はEDCsなので、もはやシャワーカーテン、テーブルクロス、及びその他の消費者製品中での使用は許されないと発表した[6]。デンマーク規制当局は、すでに2010年に、小さな子ども用の食品接触材中でのBPAの使用を禁止した。

連絡先:
Lisette van Vliet, Senior Policy Adviser, Health and Environment Alliance (HEAL), Tel: +32 2 234 36 45. Mob: +32 484 614 528, Email: lisette@env-health.org
記者への注釈:

[1] アサ・ウェストルンド(Asa Westlund)は、欧州議会自身の取り組みによる報告書『内分泌かく乱物質からの公衆の健康の保護 “Protection of public health from endocrine disruptors”』の起草人(rapporteur)である。議会の採決に先立ち発表された”内分泌かく乱物質からの公衆の健康の保護に関する報告書(2012/2066(INI)”:
http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+REPORT+A7-2013-0027+0+DOC+XML+V0//EN

[2] Paragraphs 1 and 3 of Westlund Report

[3] Paragraph 5, 12, 20, 22 of Westlund Report

[4] 2013年2月19日に発表された WHO/UNEP 報告書 『内分泌かく乱化学物質の先端科学 2012年(State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals 2012)』
HEALは、WHO 報告書についての記事と報告書への各種リンクを下記ページで紹介している。
WHO report calls endocrine disruptors a "global threat"
http://www.env-health.org/news/latest-news/article/who-report-calls-endocrine

[5] フランス議会 BPAとEDCを含まない製品に向かう道を選ぶ
French parliament takes the path towards BPA- and EDC-free products
http://www.env-health.org/news/members-news/article/french-parliament-follows-the-road

[6] デンマーク消費者協会からのニュースレター2012年8月:4つのフタル酸エステル類がデンマークで禁止される
Newsletter from the Danish Consumer Council, Four phthalates banned in Denmark, August 2012
http://taenk.dk/sites/taenk.dk/files/edc_newsletter_12_1.pdf

訳注1
ChemSec News 2012年10月31日 欧州議会報告書(ドラフト) 内分泌かく乱物質はSVHCsとして規制される必要がある

訳注2
UNEP ニュースセンター 2013年2月19日 ヒトと野生生物のホルモンかく乱物質への曝露影響が 画期的な国連報告書で検証

訳注3
ChemSec News 2012年12月19日 フランスでは食品容器中でのBPAの使用が2015年から禁止される



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