グリーンズ欧州自由連合 2016年1月29日
公衆健康/内分泌かく乱物質
欧州連合条約の守護者が
巨大ビジネスの利益の守護者となるとき


情報源: The Greens/European Free Alliance, 19 January 2016
Public health / endocrine disrupters
When the guardian of the treaties acts as guardian of special favours to big business
http://www.greens-efa.eu/public-health-endocrine-disrupters-15113.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年2月5日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/160129_Greens_News_on_EDC_Criteria.html

 世界保健機構/国連環境計画(WHO/UNEP)は、内分泌かく乱化学物質(EDCs)を、解決されるべき必要がある世界的な脅威であると考えている(訳注1)。EDCs は、農薬や殺生物剤、食品接触材、塩ビ床材、及び化粧品のような一般的に使用される広い範囲の製品中に存在する。EDCs はがん、不妊、生殖器異常、肥満、及び神経行動障害を含む、様々な深刻な人の健康問題に関連している。EDCs は非常に低用量でも作用することがあり、特に発達プロセスを阻害するので妊娠中及び幼児期に危険である。

 EDCs は現在、化学物質、農薬、殺生物剤、水、及び化粧品に関する欧州連合(EU)の各種法令で規制されている。しかし実際上は、これらの法令は明確な EDCs の定義を欠いているので、大きな欠陥がある。このことが、2009年にグリーンズが欧州議会で先頭に立って取り組んだ農薬法の大きな改正において(訳注2)、議会が欧州委員会に対して2013年末までに内分泌かく乱特性の決定のための科学的基準を採択するよう主張した理由である。その後、作業といくつかの研究を3年以上実施して、2013年の夏の初めまでは欧州委員会は順調にことを運んだ。

 しかし、欧州委員会が最終に近い草稿を作成すると、大混乱が始まった。産業側に近い科学者らは、欧州委員会に抗議の書簡を送り、化学産業界の全ての主要な関係者が可能性ある様々な基準の影響評価を実施するよう求めた。言い換えれば、彼らは、科学的事柄に対して社会経済的影響評価を求めた。そして、欧州委員会は直ぐにこの要求に屈服した。欧州委員会は 2013年末までにこれらの”性を歪める(gender-bending)”化学物質を特定するための科学的基準を採択するという法的義務を満たすことにより、これらの化学物質に措置をとる代わりに、科学産業を満足させることに一生懸命取り組んだ。2013年7月、事務総長キャサリン・デイはそのような影響評価を実施するよう指示した。ロビー攻撃の詳細な内容については、この文書を参照のこと(訳注3)。

 この行動は、欧州委員会は EDCs のための基準を採択することをしなかったとしてスウェーデン政府により法的措置が取られ、2015年12月にEUの一般裁判所(General Court)により、規則に違反したとする判決を下された(訳注4)。欧州連合理事会、欧州議会、及びいくつかの加盟国(デンマーク、フランス、フィンランド、オランダ)はスウェーデンの訴訟を支持した。それでも十分ではないかのように欧州委員会は現在、不作為を正そうとしないことによって欧州連合条約に違反すらしている。欧州委員会の不作為の根本的な原因は、その不作為を正すために必要な措置をとることが求められているのだから、影響評価の実施を立ち上げた−それは現在もまだ実施されている−ことであった。しかし、裁判所の判断にもかかわらず、欧州委員会はその影響評価を継続することを望み、それを加速するだけである。ひどい目にあわせたうえにまた侮辱を加えるために欧州委員会は、裁判所が欧州委員会の義務という脈絡から不適切であり、欧州委員会の権限を越えていると明示的に判断を示した基本的な法令の規制的変更はもちろん、様々な EDC 定義の社会経済的な影響を評価し続けることを望んですらいる。

 しかもその上に、2013年以来、採択の準備のできた実際的な基準がすでに存在する−勧告の草稿を参照のこと。欧州委員会は、ことがらの複雑さに言及することにより法に違反し続ける意図を正当化しようと試みているが、それは全て2年以上前に解決されていることである!

 現在我々は非常に困難な時にいる。EU の核となる原則と価値のひとつは法の支配である。あるいは欧州委員会副委員長としてティマーマンスが2015年にまさに正しく述べた通りである :”法の支配はヨーロッパのDNAの一部であり、それは我々はどこから来たのか、我々はどこへ行くのかということの一部である。それが我々をしてあらしめる”。ある人はまた、それをEUの我慢の限界(last straw)であると呼ぶ。もし欧州委員会が欧州連合の守護者として、最早この条約に敬意を示さないなら、それは我慢の限界を超えるものである。それは我々の共通の認識を破るものである。

 我々グリーンズは、欧州委員会に対して、欧州連合条約の守護者として同条約を完全に敬い、すでに2013年から存在する勧告案に従い、内分泌かく乱特性の科学的基準の結締のための必要な措置をとることにより、直ちにその不作為を正すことを求める。


訳注1
訳注2
訳注3
訳注4


化学物質問題市民研究会
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