欧州議会プレスリリース 2009年1月13日
欧州議会 農薬法案を承認

情報源:European Parliament Press Release 13-01-2009
MEPs approve pesticides legislation
http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/066-45937-012-01-03-911-20090112IPR45936-12-01-2009-2009-false/default_en.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/090113_MEPs_approve_pesticides_legislation.html


 欧州議会は本日、加盟国で入手可能な農薬の数を増やすが、一方、これらの農薬中のいくつかの危険な化学物質の使用をいずれ禁止することになる新たなEU農薬法案を承認した。日常生活において農薬のより安全な使用を確実にする措置もまた導入される。

 昨年12月に閣僚理事会で達した合意に基づき、第二読会の採決で、欧州議会は植物防疫剤(訳注:農薬)の上市に関する規則(Regulation)と農薬の持続可能な使用に関する指令(Directive )を圧倒的多数で承認した。

 有害化学物質は禁止されるが製造者は国境を越えてより容易に販売することができる。

 農薬の製造と認可を扱う規則の主要な点は次の通りである。
  • 承認された”有効成分”(農薬の化学成分)はEUレベルで作成されるべきこと。農薬はこのリストに基づき国レベルで認可される。
  • ある非常に有害な化学物質は、それらへの暴露が実際に無視できない、すなわち発がん性、変異原性、又は生殖毒性があるもの、内分泌かく乱性があるもの、及び難分解性、生体蓄積性、及び有毒性(PBT)のあるもの、又は非常に難分解性で非常に生体蓄積性が高い(vPvB)場合には禁止される。
  • 発達神経毒性及び免疫毒性の物質については、より高い安全基準が課せられるかもしれない。
  • もし、ある物質が植物の健康に対する深刻な危険に対処するために必要なら、たとえ上記安全基準を満たしていなくとも5年間は承認されるかもしれない。
  • ある有害物質を含む製品(訳注:農薬)は、より安全な代替が存在することが示されるなら、代替されるべきこと。議会は代替猶予期間を5年ではなく3年に短縮することに成功した。
  • ミツバチに有害らしい物質は禁止される。
 次の理由で農薬製造者と使用者は便益を受ける。
  • 加盟国は、国レベルで、あるいは相互承認を通じて、農薬製品を認可することができる。EUは3地域に分割され(北部、中部、南部)、基本的ルールとして各地域内で義務的な相互承認をする。このことは製造者が彼らの製品についてある地域内では国境を越えて承認を得ることが容易になり、したがって使用者はもっと迅速により多くの農薬を入手可能となる。しかし、議会の圧力を受けて、個々の国はその地域内で承認された新たな農薬の使用に関し追加的な条件や制限を採用する権利を与えられ、またもし特別の環境的又は農業的状況を例示できれば、承認を拒否できる。
  • 加盟国は120日以内に相互承認を決定しなくてはならないので、製品(農薬)承認に要する時間は迅速化される。今までは期限がなかった。
 新たな法は既存のEU法を徐々に置き換えていくことになる。現在の法の下に市場に出すことができる農薬は、それらの有効期限が切れるまで利用可能である。したがって突然の又は大幅な市場からの製品撤去という事態にはならない。理事会との合意は、22の有害物質だけが新たな安全基準の結果として市場から撤去されるべきであろうとするスウェーデン化学物質局(Swedish Chemicals Agency)による科学的な評価に基づいていた。

 議会でこの法案を指揮したヒルトラッド・ブレイヤー(Greens/EFA、ドイツ)は次のように述べている。”この合意は、もっと革新をもたらしEUをこの分野の先頭に立たせるものなので、環境、公衆健康、及び消費者の保護のためだけでなく、欧州の経済のためにもうまくいった”。

 農薬使用を削減し、それをよりよく管理すること

 農薬の持続可能な使用に関する指令の主要な点は次の通りである。
  • 統合害虫管理(IPM)の原則が規定されている。すなわち、農薬の代替として可能なら採用されるべき作物の転作のような化学物質を使わない害虫管理手法の推進。
  • 加盟国は、タイムテーブルと使用削減目標を含む、人の健康と環境に及ぼす農薬の”リスクと影響”を低減するための国家行動計画を採用しなくてはならない。議会は理事会との交渉を容易にするために、特定の懸念ある化学物質の具体的な削減目標としての50%という要求を取り下げた。
  • 農薬空中散布は、当局による承認対象となる例外はあるが、一般的に禁止された。住宅地域の近接では散布は許されない。
  • 加盟国は水環境と飲料水供給を農薬の影響から保護する措置をとらなくてはならない。これらは水域周辺に”緩衝地帯”と飲料水として使用される地表水及び地下水のための”安全防護地帯”を含むこと。また道路及び鉄道線路沿いに保護地域を設けなくてはならない。
  • 公園、公共の庭園、スポーツ及びリクリエーション用グラウンド、学校のグラウンド、遊び場、及び健康介護施設の近辺など、一般公衆又は脆弱なグループによって使用される特定の地域では、農薬の使用は最小とするか又は禁止されなくてはならない。
  • 新たなルールが、農薬使用者及び販売者の訓練、取扱い及び保管、情報及び周知向上、及び農薬散布装置の検査に関して導入される。
 この指令は加盟国により2011年初頭までに実施されなくてはならない。この法案の議会通過に責任ある議員クリスタ・クラス(EPP-ED、ドイツ)は、”この指令は、欧州の消費者と環境を保護するために正しい方向への第一歩である。その目的は、正しい時期に正しい用量で可能限り少ない農薬を使用することである”と述べた。彼女は、”職業的利用者のための訓練と個人的使用者への適切な情報によるリスク管理が重要である”と強調した”。

 両方の法案は理事会で承認されなくてはならないが、昨年12月に合意達成したことから、形式上のものとなるであろう。


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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