バーゼル条約
プラスチック廃棄物 概要


情報源:Basel Convention
Plastic Waste Overview
http://www.basel.int/Implementation/Plasticwaste/
Overview/tabid/8347/Default.aspx


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2020年6月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/Plastic/Basel_Plastic_Waste_Overview.html

 プラスチック廃棄物が急速に増加すると、深刻な地球環境問題が生じる。 プラスチック汚染はライフサイクルのすべての段階で発生する可能性があり、人間の健康と環境に脅威をもたらすかもしれない。 2019年、バーゼル条約締約国会議は、プラスチック廃棄物に取り組むために 2つの重要な決議を採択した(BC-14/12 及び BC-14/13)。 これらの措置により、バーゼル条約はプラスチック廃棄物に特別に対処する唯一の法的拘束力のある手段として強化された。 技術的支援は、プラスチック廃棄物との関係を含め、締約国がその義務を果たすのを支援するために提供される。

バーゼル条約に基づくプラスチック廃棄物への取り組み

 2019年5月、バーゼル条約の締約国会議は、プラスチック廃棄物に関する条約の附属書 II、VIII、及び IX を改正する決議 BC-14/12を採択した。 バーゼル条約のプラスチック廃棄物改正(Basel Convention Plastic Waste Amendments )に関する情報はここから入手できる。(当研究会訳

 さらに、締約国会議は、バーゼル条約に基づくプラスチック廃棄物に対処するためのさらなる行動に関する決議 BC-14/13を採択した。 この決議は、セクションI、II、III、及び VIIに、プラスチック廃棄物の発生の防止及び最小化、環境に配慮した管理、国境を越える移動の管理のための一連の行動;プラスチック廃棄物中の有害成分によるリスクの軽減及び国民の意識向上、教育、情報交換を含める。

 決議 BC-14/13 のセクションIV(附属書 I 及び III のレビュー)では、締約国会議は、附属書 I、III 及び IVのレビュー、並びに附属書 VIII 及び IX の関連する側面に関する専門家作業部会に、その付託の一環として、プラスチック廃棄物に関連する追加の構成要素または特性をそれぞれ条約の附属書 I または III に追加する必要があるかどうか検討するよう要請した。

 同決議のセクションV(技術ガイドライン)で、締約国会議は、プラスチック廃棄物の識別と環境に配慮した管理とその廃棄に関する 2002年の技術ガイドラインを更新することを決定した。

 同決議のセクションVI(プラスチック廃棄物に関するバーゼル条約パートナーシップ)で、締約国会議は、プラスチック廃棄物に関するバーゼル条約パートナーシップを確立する提案を歓迎し、パートナーシップの作業部会を設立することを決定した。 パートナーシップの目標は、地球規模、地域、国レベルで環境に配慮したプラスチック廃棄物の管理を改善及び促進し、その発生を防止及び最小化して、とりわけ、プラスチック廃棄物とマイクロプラスチックの環境、特に海洋環境への排出を大幅に削減し、長期的には排出を廃絶することある。

 同決議のセクションVIII(さらなる検討)で、締約国会議は、2020-2021年のオープンエンドワーキンググループの作業プログラムに海洋プラスチックごみとマイクロプラスチックに寄与するプラスチック廃棄物に対処するために、条約の下で取られた措置の有効性を評価すべきかどうか、もしするなら、どの様に、いつすべきかの検討;及び、土壌汚染、海洋プラスチックごみ、マイクロプラスチックの発生源としてのプラスチック廃棄物に関連する科学的知識と環境情報の進展に対応して、どのような活動が条約に基づいてさらに行われる可能性があるのかを含めることを決定した。

 締約国会議はまた、締約国などに、第15回締約国会議(COP15)で検討するために、ほぼ全てひとつの硬化樹脂または縮合生成物からなるプラスチック廃棄物、及びリストにあるフッ素化ポリマー廃棄物のほぼひとつから構成されるプラスチック廃棄物に関する情報を提供するよう要請した。

 さらに、締約国会議は、特にプラスチック廃棄物に対処する他の決議を採択した:調和のとれた商品記述とコーディングシステムに関する世界税関組織との協力に関する決議 BC-14/9、国家報告に関する BC-14/10 技術支援に関する BC-14/18、バーゼル条約パートナーシッププログラムに関する BC-14/19、国際協力と調整に関する BC-14/21、情報交換のためのクリアリング・ハウスのメカニズムに関する BC-14/23 である。

プラスチック廃棄物にはさまざまな形がある

 プラスチックは非常に耐久性があり、プラスチック廃棄物のいたる所での国境を越える移動が大きな懸念となっている。 今日製造されるポリマーの大部分は、数千年とまではいかなくても、数十年、そしておそらく数世紀にわたって残留する可能性がある。

 大きなプラスチック片は、たとえば、浜辺に蓄積したり、海底に沈んだりする。 これらは、例えば、がれきのもつれによって、海洋動物に直接害を及ぼす可能性がある。 鳥の多くの種は、小さなプラスチック片を摂取する。 その他のプラスチック廃棄物は海流に乗って運ばれ、環流にたまる可能性がある。 日光と塩水の影響下で、より大きな破片がマイクロプラスチックに分解される可能性がある。 マイクロプラスチックは現在、海洋全体に広く分布しており、汚染物質や病原菌の媒介となり得る。 詳細については、GESAMPレポートを参照ください。

 ポリマーに加えて、難燃剤や可塑剤などの添加剤が合成材料に混合されると、それらの柔軟性、透明性、耐久性、および寿命が向上する。 これらの物質のあるものは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約にリストされている残留性有機汚染物質(POP)である。

 生物多様性を保護し、有害な化学物質と廃棄物を管理し、海洋及び陸上の汚染源による海洋環境の汚染を防止するために、さまざまな国際的および地域的な手段とアプローチが存在する。 これらのイニシアチブと活動の連携は、この地球規模の環境問題に効果的に対処するための鍵である。

廃棄物管理システムの強化と発生源でのプラスチック廃棄物への取り組み

プラスチック汚染は、生産から使用、最終処分までのライフサイクルのすべての段階で発生する可能性がある。海に入るプラスチック廃棄物の最大の負担は、廃棄物の収集と管理システムが効果的でない場合に発生する可能性がある。海に入るプラスチック廃棄物の最大の負担は、廃棄物の収集と管理システムが効果的でない場合に発生する可能性がある。特に発展途上国は、例えば環境に配慮した方法で処分することが不可能な場合、急速に増大するプラスチック廃棄物の管理において困難に直面する可能性がある。このことがプラスチック廃棄物の陸上又は水域への投棄を、さらには他の国のリサイクルや処理能力への継続的な利用可能性に依存する必要性をもたらすことになる。

 一方、プラスチック廃棄物への取り組みも、発生源で行う必要がある。プラスチック廃棄物の発生の防止と最小化を促進するステップは、技術的および経済的に実現可能な場合、重要である。

 いくつかのガイダンス、ガイドライン、マニュアル、方法論、戦略が、バーゼル条約の実施のために締約国やその他の人々を支援するために、バーゼル条約の下で開発されている。

 条約第16条の第 1項に定められた権限と技術援助に関する決議 BC-14/18 に基づき、プラスチック廃棄物を含むバーゼル条約を実施するための技術援助と能力開発活動が実施される。


訳注:参考資料


化学物質問題市民研究会
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