バーゼル条約 COP14 / BAN, CIEL, EIA, IPEN, 2019年4月
バーゼル条約の付属書を修正するためのノルウェーの提案

情報源:BAN, CIEL, EIA, IPEN, April 2019
Norwegian Proposal to Amend the Annexes to the Basel Convention
https://ipen.org/sites/default/files/documents/
eia-ciel-ban_norwegian_proposal_to_amend_the_basel_convention_2019.04.30_en.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年5月11日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP14/Basel_COP14_
Norwegian_Proposal_to_Amend_the_Annexes_to_the_Basel_Convention.html

■背景
 2014年、国連環境総会(UNEA)は海洋プラスチック汚染に関する調査を開始し、その 2年後に様々なガバナンス戦略及びアプローチの効果に関する評価作業を実施した1。 とりわけ、その評価はそれらに対応するためのギャップとオプションを特定したが、それらはバーゼル条約の文脈で行うことができるであろう取り組みを含んでいた2。 2017年、 UNEA は”海洋ゴミ及びマイクロプラスチック並びにそれらの有害な影響を防止し削減するための彼らの行動を拡大するために”バーゼル条約を招聘し、BRS (バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約)事務局も参加するアドホック公開専門家グループを設立し、BRS 事務局も参加した3。 そこで、BRS 事務局は、”海洋プラスチックゴミとマイクロ・プラスチックへのさらなる対応のためのバーゼル条約下における可能性あるオプション”という題名の報告書を発表したが、それはバーゼル条約の下におけるオプションをレビューしたものであった4。このような背景の下、2018年6月に、ノルウェーは、問題あるプラスチック廃棄物の流れをもっとはっきりバーゼル条約(訳注1)の範囲と管理とするためのバーゼル条約付属書に対する修正を提案した5

■ノルウェーの修正案
 本質的にノルウェーの修正案はプラスチック廃棄物の国際取引を浄化するよう設計されている。これはプラスチックの海洋環境への流出を低減するためだけではなく、地域社会にも密接な関係がある。これはプラスチック廃棄物を 3つの一般的なカテゴリーに分けることにより達成されるであろう。

▼”クリーン”なプラスチック廃棄物
 このカテゴリーは、輸出に先立ち分別されている(すなわち他の廃棄物や汚染物が混じっていない)リサイクル可能なプラスチックをカバーしており、仕様に従い、たとえあったとしても最小限の更なる機械的事前処理プロセスのみで、直ちにリサイクル可能な状態にあるプラスチック廃棄物である。このようなプラスチック廃棄物の輸出は事前に分別済みであり、管理リスクと輸入国の負担を低減するので、問題がないと考えられる。もし事前に分別されていなければ、リサイクル可能ではない物質(例えばオムツ)、あるいは標的としない物質(例えばプラスチック・ボトルに付随しているプラスチック包装)、あるいは汚染物質(例えば、泥、石、食品汚染段ボール)と混合しているかもしれない。この分別された”クリーン”なプラスチック廃棄物はバーゼル条約の管理対象ではない。

▼”その他”のプラスチック廃棄物
 このカテゴリーは、プラスチックがお互いに、あるいは他の廃棄物と混合しているか、又は汚染されているプラスチック廃棄物をカバーしている。このタイプのプラスチック廃棄物はバーゼル条約の管理対象である。

▼ ”有害”なププラスチッ廃棄物
 このカテゴリーは、有害、すなわち(付属書I)(訳注2)構成要素により汚染されており、ある程度(付属書III)(訳注3)の有害特性を示すプラスチック廃棄物をカバーする。このこのタイプのプラスチック廃棄物はバーゼル条約の管理対象である。

ノルウェーの付属書修正案: 提案される分類

カテゴリーバ−ゼル条約での取り扱い
”クリーン”な
プラスチック廃棄物
管理なし
”その他”の
プラスチック廃棄物
・事前通報・同意手続 6
・環境的に適切な管理を確実にする義務 7
・再輸入義務 8
・不法取引に対抗するための必須の措置 9
・南極での処分の禁止 10
・貿易業者に求められる認可 11
・包装及び表示要求 12
・情報報告 13
”有害”な
プラスチック廃棄物 14

 ノルウェーの修正は、上記の分類を付属書II、VII、及び IX の修正で達成する 15

■ノルウェーの修正案への勧告
 かなりのプラスチック廃棄物の国境を超える移動と、それに関連する発展途上国への負担があるのだから、ノルウェーの修正案は歓迎すべき展開である。それらをさらに改善するという利益のために、締約国による検討のための下記二つの勧告がなされた。
  • ”クリーン”であると考えられるプラスチック廃棄物のカテゴリーからフッ素化ポリマー廃棄物を除外すること
     ノルウェーによって提案されたように、プラスチック廃棄物の定義は下記をカバーする。
     (i) 非ハロゲン系ポリマー廃棄物;
     (ii) 硬化樹脂及び縮合物廃棄物;
     (iii) フッ素化ポリマー廃棄物;

     非ハロゲン系ポリマー、硬化脂樹脂、及び縮合物は有害性がない(もちろん汚染されていなければ)と考えられるが、ケーブル絶縁体、パイプ内面加工、電子配線、及び航空機内装のような様々な用途で使用されるフッ素化ポリマーの廃棄物については、同じこと(安全であるということ)を常に言えるわけではない。フッ素化ポリマーは、開放燃焼やその他の燃焼プロセスを含んで、パー・及びポリ・フルオロアルキル化合物(PFAS)を放出することができる。 PFAS 化合物の残留性と有害性は、クラスとしてそれらの懸念が提起されており、これらの廃棄物が”クリーン”であるとする資格はない。

  • ”クリーン”なプラスチック廃棄物は付属書 IV の R3 (有機物の再生、回収)の下にリサイクルされること
     ノルウェーによって提案されたように、”クリーン”なプラスチック廃棄物は、仕様に従って準備され、たとえ必要があったとしても最小限の更なる機械的事前処理プロセスのみで、直ちにリサイクル可能な状態にあるプラスチック廃棄物である。しかし、輸出されるプラスチック廃棄物はリサイクルにとって適切であることだけでなく、これを付属書 IV の R3 (廃棄物の再生、回収)への参照による要求として含め、リサイクルに向けていることを明確にすることにより、その提案は強化されるであろう。
■プラスチック廃棄物に関するパートナーシップ
 締約国はまた、国家レベルでプラスチック廃棄物の環境的に適切な管理を改善し推進するための方法を探すための作業グループを創設するプラスチック廃棄物に関するパートナーシップの構築を検討するであろう16。2019年、第4回会合で UNEA は 2021年2月の第5回会合からアドホック公開専門家グループへの権限を拡大する決議を採択したが、それは、”海洋ゴミの防止に関連する協力の増強とともに、汚染源の目録の開発、廃棄物管理の改善、意識向上、及び革新の推進のような行動を起こすパートナーシップを奨励すること”を、その権限の中に含めた17。重要なことに、アドホック公開専門家グループはまた、プラスチックとプラスチック汚染に対応するために、プラスチック汚染危機に対する唯一の実行可能な長期的解決として多くが受け入れる、新たな法的拘束力のある国際的法律文書を含んで、新たな世界的な基本設計概念のためのガバナンスを検討するであろう18

 結論として、プラスチック廃棄物に関する付託条項は UNEA 決議に照らして修正されるべきである。特に、プラスチック廃棄物に関するパートナーシップは、以下の3つの方法で修正されるべきである。

 第一に、プラスチック廃棄物に関するパートナーシップは、アドホック公開専門家グループによって実施されている作業を補完するものであり、それを置き換えるものではなく、新たな法的に拘束力のある国際的法律文書に関する議論に対して、先入観なく協力すべきである。

 第二に、ワーキング・グループ会合のタイミングとその結果がアドホック公開専門家グループの審議に提供され、2021年2月に開催される第5回 UNEA 会合における次の段階の検討を知らせることを確実にすること。

 第三に、プラスチック及びプラスチック汚染に対応するための新たな世界的な構造の一部として提出された”国家行動計画”に含まれ得る国家の措置に関する勧告をすること。

さらなる情報のため連絡先
Tim Grabiel
Senior Lawyer
Environmental Investigation Agency
timgrabiel@eia-international.org
+33 6 32 76 77 04

David Azoulay
Senior Attorney
Center for International Environmental Law
dazoulay@ciel.org
+41 78 75 78 756

参照
1 UN Environment Assembly, Resolution 1/6: Marine Plastic Debris and Microplastics, paras. 14-15; UN Environment Assembly, Resolution 2/11: Marine Plastic Litter and Microplastics, para. 21; see also UN Environment, Combating Marine Plastic Litter and Microplastics: An Assessment of the Effectiveness of Relevant International, Regional and Subregional Governance Strategies and Approaches (15 February 2018), UNEP/AHEG/2018/INF/3.

2 See generally UN Environment, Combating Marine Plastic Litter and Microplastics: An Assessment of the Effectiveness of Relevant International, Regional and Subregional Governance Strategies and Approaches (15 February 2018), UNEP/AHEG/2018/INF/3.

3 UN Environment Assembly, Resolution 3/7: Marine Litter and Microplastics, paras. 8 and 10; see also UN Environment Assembly, Resolution 4/7: Marine Plastic Litter and Microplastics, para. 7.

4 UN Environment, Possible Options under the Basel Convention to Further Address Marine Plastic Litter and Microplastics (Nairobi, 2931 May 2018), UNEP/AHEG/2018/1/INF/5.

5 See Basel Convention, Eleventh Meeting of the Open-Ended Working Group of the Basel Convention (OEWG.11), available at
http://www.basel.int/TheConvention/OpenendedWorkingGroup(OEWG)/Meetings/OEWG11/
Overview/tabid/6258/Default.aspx


6 Basel Convention, Articles 4(1)(c) and 6.

7 Basel Convention, Articles 4(2) and (8)-(10).

8 Basel Convention, Article 8.

9 Basel Convention, Articles 4(3)-(4) and 9.

10 Basel Convention, Article 4(6).

11 Basel Convention, Article 4(7)(a)

12 Basel Convention, Article 4(7)(b)

13 Basel Convention, Article 13.

14 Note: Once in legal force, the “Ban Amendment” also provides for the prohibition by each Party included in the proposed new Annex VII (Parties and other States which are members of the OECD, EC, Liechtenstein) of all transboundary movements to States not included in Annex VII of hazardous substances covered by the Basel Convention that are intended for final disposal, and of all transboundary movements to States not included in Annex VII of hazardous wastes covered by paragraph 1(a) of Article 1 of the Basel Convention that are destined for reuse, recycling or recovery operations.

15 See Proposals to Amend Annexes II, VIII and IX to the Basel Convention, UNEP/CHW.14/27 (17 December 2018).

16 Draft Terms of Reference for the Basel Convention Partnership on Plastic Wastes and Draft Workplan for the Working Group of the Partnership on Plastic Wastes for the Biennium 2020-2021, UNEP/CHW.14/INF/16.

17 UN Environment Assembly, Resolution 4/7: Marine Plastic Litter and Microplastics, para. 7.

18 UN Environment Assembly, Resolution 4/7: Marine Plastic Litter and Microplastics, para. 7; see also UN Environment Assembly, Resolution 3/7: Marine Litter and Microplastics, para. 10(d).


訳注1:バーゼル条約
有害廃棄物の国境を越える移動及びそ の処分の規制に関するバーゼル条約(本文及び付属書)
 (環境省(2)Basel法関係 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約和文 [PDF 1.23MB])からアクセスできる。)
 ・バーゼル条約・バーゼル法の概要等/付属書

訳注2バーゼル条約 附属書T及び附属書U
訳注3バーゼル条約 附属書III
訳注:関連情報

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