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オーケストラ楽器別人間学

(96/6/18掲載)


表紙の写真

  
 好評の「オーケストラは素敵だ」、「続・オーケストラは素敵だ」に続く茂木さんの最新の単行本です。前2作同様、杉原書店の「パイパーズ」に連載されたエッセーを集めたものですが、本書ではテーマを「どんな人がどんな楽器を選ぶのか」と「いかなる楽器がいかなる性格をつくるのか」という2点に絞り込んで、いつもながらの的確なバカ話が進行します。その分、前作に豊富に盛り込まれていた苦労話や、タメになる体験談といった、著者の「マジメな」一面は希薄になっていますが、それはそれで次作に期待しましょう。
 何よりも、清水義範ファンの私としては、全編女性雑誌の文体模写になっている「特別付録」の「楽器別適正判別クイズ」というのには、大いに笑えました。
実は、雑誌に掲載された時に各方面にバカウケで、1冊目の単行本が出た後で、ひそかに次の本には収録して欲しいと切望していた大傑作「正しいフルーティストのプロフィール」が、この度めでたく収録の運びとなったので、ちょっとご紹介してみましょうね。
あるフルート奏者
北国出身、どことなくクリスタル


 クールな楽器であるフルート奏者の出身は、暑いところではないはずだ。むしろ北国であろう。北欧出身のフルート奏者が多いのもうなずける。
 しかし、一方では洗練されたイメージ、というのも欠かせないので、東北の寒村で「かんじき」を履いて1メートルの雪を踏み、木造校舎の学校に通い(生徒数合計8)、大根のみそ汁で育った、赤いホッペの「わらしこ」、というのわけにはいかない。北国、洗練の両方をみたす土地となれば、これはどうしても北海道。それも札幌出身以外にはフルート奏者はありえないことになってしまう。
 親の職業は弁護士、医者といったインテリ系が浮上するが、本当の工クゼクティブは、やっぱりピアノ、弦楽器方面に進むと思われるので、ここは銀行員か公認会計士あたりが適当ではないか。
 楽器との出会いは早く、9歳にして英才教育の教室で、当地教育大学の先生についてレッスンをはじめている。私立の有名中学校、高校では吹奏楽部こは入らず、テニス、またはスキーなどをたしなんだが、そのころには楽器もかなり上達して、子どものコンクールなとで入賞するようになり、親の意向もあって楽器の道をこころざす。毎週未には飛行機で東京の先生にレッスンに通い(リッチなようだが、じつはスカイメイトだったりして、管楽器はどこかピンポー)、音大にはめでたく現役で合格。毎年のように各地のコンクールに入賞をはたす。大学3年のときには親の意向もあって、地元リサイタルを開催、客席は父親の関係者で埋まる。来日する海外演奏家の講習には親の意向もあって、カネに糸日をつけずに参加。卒業演奏会にも、もちろん出演する。
 そのあとは東京に残り、ときおりフリーの仕事もしたが、ギャラの安さ(あくまでも、彼の基準においてなのだが)に我慢できず、いまでは30人の生徒を抱えるレッスン・プロとなっている。
 住まいは親の意向もあって、住宅地の一戸建て。車は親の意向もあって、国産高級車。趣味は時計の分解修理と原書の翻訳。天秤座、B型、酉年。(p1517より転載)

 こんな具合に、オーケストラの全ての楽器(もちろん弦楽器も)についての「仮想履歴書」がデッチあげられています。皆さんが今選ばれている楽器は、本当はどういう人が弾く(吹く・叩く)べきなのか、興味がある方はぜひ実物をご覧になってみて下さい。

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