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読書記録2003年9月
『考える力がつく「論文」の書き方』
小阪修平(大和書房)2003.1/★★★★
−要約ノート−
−感想−
これを読んで、著者の小阪修平さんに対して僕が持っていたイメージが
若干変わった。今までのそれは、ひとつは書籍を通じてできた、西洋哲学、
現代思想に精通した、優れた物書きとしてのイメージ。あるいは
『討論 三島由紀夫vs東大全共闘−《美と共同体と東大闘争》』(新潮社)や
『徹底討論「自己」から「世界」へ』(春秋社)での、原理的に深く練られた
発言をする、非の打ち所のない強い論客としてのイメージ。教育者というより
も思想家というイメージが強かったのだが、これでは予備校教師としての日常
の彼の姿、論文教師の小阪修平像が垣間見ることができた。受験における出題
の無理難題さなどから発する論文教師としてのアポリアやジレンマに苦悩の
言葉をこぼす箇所などでは、ずば抜けて理知的という印象がある方ゆえに、
なにやら微笑ましくもあった。
さて、本書で再三強調され、特に印象に残ったのは「論文とは、言葉によって
自己と他者、自己と世界をつなぐことである。」という論文の定義である。
他の多くの教えも言われてみれば当たり前だができていないことばかり、
特にこれは至極ごもっともでまったくそのとおりだなあと感心したが、
これまで改めて考えたこともなかった。
僕は下手の横好きでこうして雑文を書いているが、それにおいて今まで
伝えるべき他者のことや、そのことによって世界とつながるということなど、
ほとんど意識しなかった。だからどんなことでも自分のイメージばかりを
優先させ膨らませ、失敗論文の類型の一つ「自分の世界へ引き込み型」の、
極めてつまらない文章になってしまっているわけだ。独自の発想を持つ者
ほど往々にしてそれに固執し他の考え方を省みられないって、
いやはやまったくそのとおり。
これらの雑文は論文ではないし自分自身のために書いているわけだが、
それを読む未来の僕は今現在の僕にとって他者であるのだし、何かを語ると
いう行為自体が言葉で世界とつながる行為なのだから、それをより効果的に
こなすためにも、また思考の幅を広げるためにも、これはよくよく意識して
おいたほうがよさそうだ。
下手の横好きとはいえやはり何か書くからにはよりよいものを作りたいわけで、
その基本的な手順が、小論めいたものを書くときには特に、本書はとても勉強
になった。
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