ありがとう!JR武豊線気動車の想い出

 JR東海・武豊線は平成27年(2015年)春に電化開業の運びで工事は着々と進捗し、ほぼ当初の予定通りの平成27年(2015年)3月1日に電化開業を果たした。
 武豊線沿線からは少し離れた愛知県東海市内に勤務していた筆者は、少しでも気動車と出逢える可能性を求めて結婚を気に大府市内に引越した。平成14年(2002年)のことであるが、既にキハ75形が主役の座に就いており、人気の高かったキハ58系やキハ65形あるいはキハ40系の姿が過去のものとなっていた同線は地味な存在だった。
 それでも、真綿で首を絞められるように少しずつ電柱が建植され架線が張られていった状況の中にありながらも黙々と走り続けた新形気動車の姿には、複雑な感情移入をしてしまっていた…。
 すでに武豊線を追われてしまったキハ75形そしてキハ25形気動車の活躍を記録に残すべく、ここに特集記事としてお届けしたい。


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JR武豊線気動車の変遷

キハ40 5059
写真1.キハ40 5059(武豊線 武豊)
〜平成11年(1999年)4月3日
キハ75-502
写真2.キハ75-502+キハ75-402(武豊線 尾張森岡)
〜平成11年(1999年)5月10日
キハ58 3001
写真3.キハ58 3001ほか4連(武豊線 尾張森岡−大府)
〜平成13年(2001年)4月24日
キハ25-102
写真4.キハ25-102以下4連(東海道本線 幸田)
〜平成22年(2010年)11月10日

 まずは、JR武豊線の気動車が現在のキハ75形ならびにキハ25形のJR発足後に新製された車輌に統一されるまでの軌跡についておさらいしてみたい。

 平成ひと桁の頃の1990年代末期、いわゆる国鉄形の気動車がまだ健在だった頃の武豊線では、日中の閑散時間帯を中心にキハ48形の2連などが主力として活躍し、朝夕のラッシュ時にキハ40形・キハ47形さらにはキハ58形・キハ65形といったところが応援に入る形を採っていた(写真1)。
 平成11年(1999年)に、名古屋車両区のキハ58形・キハ65形などの国鉄形気動車を置換えるべく新製されたキハ75形200・300番台(計16輌)ならびに400・500番台(計12輌)は、まず400・500番台ワンマン対応車を中心に同年5月9日から武豊線の運用に投入され(写真2)、同じく12月4日には同線関連の運用は全面的にキハ75形に置換えられている。
 なお、置換えられたキハ58形・キハ65形はしばらく波動輸送に活躍するが、平成13年(2001年)9月11日には多くの人に惜しまれながらも浜松工場へ廃車回送されている。武豊線への最後の入線は平成13年(2001年)4月のことであった(写真3)。

 キハ75形という単一形式による武豊線全定期旅客列車の運用は、なんと11年以上も続く。長かった“ナナゴ時代”…終わりの始まりは平成22年(2010年)にやって来る。
 同年3月18日にJR東海は武豊線の電化を発表、313系電車の新製投入を含め平成27年(2015年)春の電化開業とされ、新形気動車たちの武豊線での活躍にやがて終止符が打たれることが明らかになったのである。さらに、次世代を担うキハ25形が同年11月10日に落成(写真4)、すぐさまJR東海管内の各地で試運転を開始し、同年12月20日には武豊線にも初入線を果たしている。
 10輌が新製されたキハ25形の定期運用への投入は翌平成23年(2011年)の3月1日となる。同形式はわずか4年間での撤退が約束された形ではあるが、以降は日中の閑散時間帯をキハ25形が担い、朝夕のラッシュ時にキハ75形の応援を仰ぐ形を採っている。
 なお、キハ25形の1次車は高山本線・太多線や紀勢本線などに残存するキハ40系の全面置換えをにらんだ先行試作車的な位置付けであると評されており、JR東海管内各地での試運転によるフィードバックを活かし、さらにはJR北海道などの他社で相次いだ推進軸や減速機などの落下事故対策を施したと考えられるキハ25形2次車の概要が平成26年(2014年)5月15日に発表されている。

 なお、キハ25形1次車落成後の動きについては、当研究室に併設のJacobian Futasegawa チャンネル(YouTube)に複数の動画を掲載しているので、参考とされたい。

ナナゴ時代全盛期〜電化工事前の頃〜

 平成22年(2010年)3月の武豊線電化の発表を受け、工事が目に見えて進捗してくる前までの模様を紹介したい。なお、素人の目にも実際の土木工事の進捗が判るようになったのは、平成23年(2011年)11月から12月頃であったと認識している。

キハ75-1
キハ75-1+キハ75-101以下4連(武豊線 大府−尾張森岡)〜平成21年(2009年)12月20日 4542D
【オリンパス E-300(ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8)】
およその撮影地(大府−尾張森岡)へ(Google マップ)
 南方貨物線建設時には武豊線が東海道線をオーバークロスして大府駅に進入するような配線に改められ、第2石ヶ瀬川橋りょうが架けられた。東浦町内から北側の武豊線沿線ではあちこちに鉄塔が並ぶ。

キハ75-403
キハ75-403+キハ75-503+キハ75-208+キハ75-308(武豊線 石浜−東浦)〜平成17年(2005年)2月26日 3510D
【オリンパス E-300(シグマ 18-125mm F3.5-5.6 DC)】
およその撮影地(石浜−東浦)へ(Google マップ)

キハ75-405
キハ75-405+キハ75-505(武豊線 東浦)〜平成18年(2006年)7月22日 3522C
【オリンパス CAMEDIA SP-320】
およその撮影地(東浦)へ(Google マップ)
 いざ電気運転関連設備が建植されてしまうと、当たり前のように接していたスッキリした構内が懐かしく思える。衣浦臨海鉄道碧南線を上ってきた貨物列車・5571レと交換して武豊へ向かう。

キハ75-401
キハ75-401+キハ75-501(武豊線 東浦−亀崎)〜平成17年(2005年)2月11日 3536C
【オリンパス E-300(シグマ 18-125mm F3.5-5.6 DC)】
およその撮影地(東浦−亀崎)へ(Google マップ)
 後には手前側に架線柱が立ってしまった箇所だが、そこそこの見晴らしの良さは維持出来ている。武豊線内では大府付近とここ亀崎前後にしかない勾配を軽々と登る。

キハ75-405
キハ75-405+キハ75-505以下4連(武豊線 亀崎−乙川)〜平成17年(2005年)11月12日 4540D
【富士フイルム FinePix F11】
およその撮影地(亀崎−乙川)へ(Google マップ)
 ごちゃごちゃとした亀崎の街を駈ける。この辺りの狭い路地に電化工事用のクルマを入れることができるのだろうか…などといった期待半分の憂慮をあざ笑うがごとく、比較的早期に架線柱の立った区間であった…。
表紙絵アーカイブ2より再掲)

キハ25-1
キハ25-1+キハ25-101(武豊線 乙川)〜平成23年(2011年)4月10日 3528C
【オリンパス E-500(ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5)】
およその撮影地(乙川)へ(Google マップ)
 “ナナゴ時代”の終わりを告げる使者・キハ25形の定期運用開始からまだ1か月の頃。最新鋭のピカピカ気動車を満開の桜が迎えてくれた。電気運転関連設備がまだ認められないピュアな空だ。

キハ75-403
キハ75-403+キハ75-503(武豊線 乙川−半田)〜平成17年(2005年)2月20日 3530C
【オリンパス E-300(シグマ 18-125mm F3.5-5.6 DC)】
およその撮影地(乙川−半田)へ(Google マップ)
 撮影していた筆者の背後側の大手家電量販店は既にこの頃までにはオープンしていたのだろう、さもなくばこの場所で撮影する動機がない。オリンパス E-300ならではの抜けるような青空の下を快走するキハ75がこの橋を渡ると間もなく旧来の半田市街地だ。

キハ75-404
キハ75-404+キハ75-504(武豊線 東成岩−武豊)〜平成20年(2008年)4月6日 3524C
【オリンパス E-300(ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5)】
およその撮影地(東成岩−武豊)へ(Google マップ)
 ここは武豊線の桜スポットのひとつではあったのだが、年を追うごとに桜の木そのものの元気がなくなっていったのと、電気運転関連設備が画角を支障して建植された関係で、ちょっと今後は撮影にとって厳しい地点であると思う。

改訂履歴

平成27年(2015年)4月12日
ラスト1日半の模様に画像を追加
平成27年(2015年)3月11日
ラスト1日半の模様に画像を追加
平成27年(2015年)3月10日
ラスト1日半の模様に画像を追加
平成27年(2015年)3月5日
ラスト1日半の模様に画像を追加
平成27年(2015年)3月4日
ラスト1日半の模様を追加公開
平成27年(2015年)2月26日
電化工事中の模様に画像を追加
平成27年(2015年)2月23日
ラスト1年の模様に画像を追加
平成27年(2015年)2月20日
電化工事前の模様に画像を追加
平成27年(2015年)2月16日
ラスト1年の模様に画像を追加
平成27年(2015年)2月12日
番外篇・貨物列車に画像を追加
平成27年(2015年)2月9日
電化工事前の模様に画像を追加
平成27年(2015年)2月4日
電化工事中の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月28日
電化工事中の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月26日
ラスト1年の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月17日
電化工事前・電化工事中・ラスト1年の各模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月9日
ラスト1年の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月8日
電化工事前の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月6日
電化工事中の模様に画像を追加
平成27年(2015年)1月2日
ラスト1年の模様に画像を追加
平成26年(2014年)12月21日
ラスト1年の模様を追加公開
平成26年(2014年)6月26日
電化工事中の模様に画像を追加
平成26年(2014年)6月17日
番外篇・貨物列車に画像を追加
平成26年(2014年)6月2日
番外篇・貨物列車を追加公開
平成26年(2014年)5月27日
電化工事中の模様を追加公開
平成26年(2014年)5月22日
公開

参考文献

JR東海 ニュースリリース(2010年3月18日) 武豊線の電化について
JR東海 ニュースリリース(2013年10月17日) 【社長会見】武豊線電化工事の進捗について
JR東海 ニュースリリース(2014年5月15日) 【社長会見】在来線気動車の安全性向上策等について
JR東海 ニュースリリース(2014年7月16日) 【社長会見】武豊線電化に向けた取り組みについて
JR東海 ニュースリリース(2014年12月10日) 【社長会見】武豊線の電化開業について
JR東海 ニュースリリース(2015年2月4日) 【社長会見】武豊線電化開業出発式について
JR東海 ニュースリリース(2015年3月27日) 【社長会見】ミャンマー鉄道省への車両譲渡について

mediasエリアニュース(2015年3月2日) 3月1日 JR武豊線 電化
愛知県東浦町防災交通課 武豊線の電化
半田市 「祝武豊線電化記念写真展」開催中!

ウィキペディア 武豊線
ウィキペディア 衣浦臨海鉄道
ウィキペディア 名電築港駅

アレコレコレクション 名古屋近辺工事見物 武豊線電化工事見物
→ WEBで調べものをすると必ず上位におられます。筆者の記録を補完するにあたって大いに参考とさせていただきました(勝手リンク)。

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